戦いの疲弊と助っ人
「あと一つだね」
そう言って海王の仕事部屋で会議を始める。
「だからなぜ私の部屋でやるのだ…」
「え?だってここだと近いし治療もできるし会議もできるし落ち着くし一石四鳥くらいありそうだから」
「いやしかし…はぁ、もういい」
そう言って海王はあきらめた。
「いずれにせよ余は今動けぬぞ」
リリスは寝ころんでシレーヌの治療を受けている。
「よぉこんななるまで戦ったわ。リリスちゃん強いねんな」
「とうぜんじゃ!この程度かすり傷じゃからな。今は無理でも明日には動けるようになる」
リリスはにやりと笑いながら言う。
「自分も今は魔力の回復に努めたいです。この有様では役に立てる気がしません」
「わたくしも少々心もとないですな」
ミドリとリッチーも声を揃える。
「まぁそうだよね。これからすぐってわけにはいかないよ」
「でも…時間…早い方がいい…」
「葵さん。私の状態、そんなに切羽詰まってる感じかな?」
葵はこくりと頷く。
「た、多分、安静にして…あと数日」
「そう」
狼にかまれた箇所をさする。
間に合うかな?いや、間に合わせるしかないね。
「わかった、じゃあ出発は明日にする」
「なに?それでは万全では動けぬぞ」
「万全でなくてもそれ以上は待てない。動ける人だけついてきて、多分これ以上伸ばすと間に合わない」
「ぐぬぅ…」
リリスがうなだれる。
「我はもちろん行くぞ」
「私もです」
「自分ももとより」
「少ない魔力ですが助力します」
四天王が目を合わせて頷く。
「リリスは今回はよく頑張ってくれたよ。ゆっくり休んで…」
「それ以上は言うでない。この程度余裕じゃ、行くに決まっておろうが」
そう言ってリリスはにやりと笑う。
この傷だからできれば置いて行きたかったけど…。
これは意地でもついてくるね。
「えっと…海王さんとシレーヌさんはどうする?一緒に戦ってわかったと思うけど本当に危ないよ?次は本当に死んでしまうかも…」
おずおずと切り出す。
「む、そうだな…。ついていきたいのはやまやまだが…」
「何言ってんねん!ついていくに決まってるやろ?」
シレーヌが海王に割って入ってくる。
「待て、シレーヌ。魔王よ、私達は次の戦いについていけない」
「え…?」
「何怖気づいてんねん!これからって時に…」
「そうではない。マザーシステムとやらが本命なのであろう?私はそれに向けて準備を整えたい」
「準備?」
「ああ、マザーシステムの戦いが一番熾烈となるのだろう?であれば私はその準備をするのが一番いいと判断した」
「次の戦いの後じゃダメなの?」
「…先ほどの戦い、セーブをかけただろう」
「え?」
そんなつもりはなかったけど…。
っていうか何が何だかわからないままシールドでガードしただけだったし…。
「ふむ、やはり気づいていないか。だからこのように中途半端に消耗する」
「消耗?」
「ああ。おそらく貴様が本気で戦っていればもっと簡単に勝てていたと私は見ている」
「でも私は本気で戦って…」
「いるつもりだったのだろうな。しかし頭の中でまだ次の戦いが控えているとどこかで思ってはいなかったのか?だからセーブをかけたと言っている」
「う…」
確かにリスクを避けて守って時間を稼ぐことしか考えていなかったかもしれない。
魔法での攻撃とか罠の設置とか本物のリリスに効くであろう攻撃を私は何一つ行っていなかった。
「お前たちが怪我をして戦えなくなったとしても私たちがいる。だから次は全力で戦ってこい。あの程度であれば絶対に負けぬ」
「海王さん…」
「エルクルちゃんが心配やって言えばいいだけやのにな」
「うるさいぞシレーヌ」
「ふふっ」
私たちを信じてくれているんだね。
「あぁ、それとそのざまでは心もとないからな。助っ人を呼んでおいた」
「助っ人?」
「あぁ、戦力にはなるだろう。というよりなぜメンバーに入っていないのか謎ではあったが…」
そうして海王はふいに部屋の入口の扉を見る。
「魔王氏!拙者を呼んでいないとはどういうことでござるか!?」
バンと扉を開けて入って来たのはロンギだった。
「ああ!ロンギさん!」
確かに戦力になりそうな人が来た!
素で忘れてたとか言えないよ。




