崩壊
天上や壁がどんどん崩れていく。
あちこちに伸びた影はしてやったりというようにゆっくりと消えていった。
まずい!今一番守らなきゃいけないのは…!
「葵さん!」
「…!」
ワールドシステムで作業をしている葵に向かって走り出す。
「うっ…!」
ドゴォン!と目の前に天井から岩が落ちてくる。
最後の最後になんてことをしてくれたんだ。
ここは海底でそのさらに下の地下だ。
天井が崩れて落ちてきたらひとたまりもない。
「葵さん!今すぐそこから逃げて!できれば奥に!」
奥に行けば通路があるはずだ。
試練の部屋に行けばまだ希望はある。
「ま、まだ時間かかる!逃げること…できない!」
岩の向こうから声が聞こえる。
「時間がかかるって言ったって…」
もう言っている間にこの部屋は崩壊する。
「今そっちに…!」
「ダメです魔王様!ご自分の身を!」
リッチーが止めにかかる。
「でも!」
そうこうしているうちにガコン!と天井がずれたのが見えた。
「あ…」
海水がドバっと流れ込んできた。
それと同時に部屋を潰す大きな影が落ちてくる。
「魔王様!」
リッチーが私に覆いかぶさってくる。
こんなところで…!
…
「う…?」
衝撃が来ない。
代わりにちょろちょろとと水のようなものが落ちている音が聞こえる。
「これは…」
部屋を見渡すと緑の壁。
植物が部屋中を覆いつくして全てを支えている。
「危ないところでした」
ミドリが倒れているのが見えた。
「ミドリさん!これ、あなたが?」
駆けていくと脱力したように笑う。
「はい、もう自分は一歩も動けませんよ…」
「大丈夫なの!?」
「もちろんです。ただの魔力切れなので。それよりほかのみんなは…」
「…!」
私はキョロキョロとあたりを見渡した。
リッチーは私と一緒にいて今も後ろにいる。
「我はここだ!」
見るとリリスのそばで守っているズメイがいた。
「ズメイさん、リリス!よかった」
お互いに頷きあい、リリスもこちらを力強く見返した。
「魔王様!」
上から声が降って来たので見上げるとハルが飛んでいて降りてきた。
「ハルさん!」
「葵を守っていました。共々無事です。作業ももうすぐ終わるそうです」
「よかった…」
全員無事だ。
それぞれが自分の仕事を全うしてくれた。
「ミドリさん!」
「ええ、聞きました。しかしいつまで持つかわかりません。作業が終わったらすぐに…」
その時、どこからか大きな音が聞こえる。
「なに!?まだあるの!?」
地震のようにも感じられる揺れが部屋に響き渡る。
いい加減に…!
「魔王!!無事か!?」
ドゴオォン!!と植物の隙間から巨大なイカが姿を現す。
「海王さん!?」
「なんだこれは!!敵の攻撃か!?私は屈しないぞ!」
意図しない植物が道を阻んで困惑している。
「この部屋を支えている自分の植物です。あまり動かないでください。さすがに暴れられると持ちません」
「ん?四天王の…。なんだ、戦いは終わったのか?」
「うん!なんとか全員無事だよ。ただワールドシステムの作業がまだあるから出ることはできないの」
「そうか、安心したぞ。こちらも問題ない。シレーヌも外で待たせている」
よかった!シレーヌさんも無事だったんだ。
「うむ、では私も…」
ググ…グ…。
「ん?何か聞こえなかったか?」
「え?やめてよ海王さん。もう何かする元気とかないんだけど」
そして次の瞬間、
バキッ!!
そんな音が聞こえて一番太い植物が折れているのが見えた。
「折れたぁぁ!!」
「なにぃ!?」
「すみません、強度が限界でした…」
限界じゃないよぉ!これ天井がもう…。
「私が支える!!」
海王は触手を伸ばし、部屋が崩れないようどうにか支える。
「ぐおぉ!!」
ドゴォン!と本体や触手に落ちてくるはずだった瓦礫がのしかかった。
「葵さん!!急いで!今度こそほんとに死ぬ!」
「わ、わかってる…。う…で、できた!もう脱出できる!!」
「よし、とにかく逃げるよ!」
そうしてあたりを見渡すが一面岩まみれ。
どこから出ればなんて…!
「こっちや!みんな!」
ドゴォン!と音が鳴り入口方面からシレーヌの声が聞こえた。
「これに捕まり!」
シュルっと岩の隙間から触手が伸びてくるのが見えた。
「ミドリさんとリリスと葵さんを!」
全員で動けない人を触手へと運んでいく。
「し、シレーヌ!私は…!」
海王が限界そうだ。
「あんたは気合入れて防いでろ!そんで自力で返ってこい!」
「なにぃ!?今でさえギリギリだぞ!」
「うわぁ!岩が落ちてきたぁ!」
「入口が塞がる!」
「リリスが落ちた!」
「うおおぉぉぉ!!」
……
海底、地下の入口にて
「あー、何とかなったね」
そう私はつぶやく。
「私ももうこりごりだな…」
海王も座り込んでいる。
何にせよ、全員無事。
任務完了だ。




