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ガドネア歴 九九八年 八月一日 ダイレス・バース
俺は、つい三週間前にこの地に戻ってきた。生まれ育ったバース王国、その中心たるバース王城だ。魔族に捕らえられ、妻たちとは別々に軟禁されつつも、比較的自由な生活は送ることができていた。
王城に一歩踏み入れると、中の様子はすっかり様変わりしていた。あれほど壮観で白亜の城とまで謳われた王城は、汚れ、蔦が生い茂り、当時の面影はない。内部には地下迷宮などが構築され、致死性のトラップが至る所に設置されていると聞く。またそれ以外にも魔物が多数配置され、侵入者を誘い入れて排除するなど、防御態勢は徹底していた。
魔物が占領するこの一三年間。我らを生きながらえさせた食糧などはどこから調達していたのだろうか――かつてそう悩んだこともあったが、ここに来て色々知ることができた。
中庭は、昔は芝生で覆われ、花壇には季節毎の花が咲いていた。中央付近にある東屋からそれらを眺めながらお茶をすすり、妻と共に公務中の小休憩で心を癒やしたものだ。それが今はどうだ。芝生は剥ぎ取られ、花壇もない。あるのは様々な野菜が植えられ、これはもう立派な畑だ。
あのとき、城には大勢の市民が避難していた。魔軍の突入時には沢山の犠牲者は出たが、それでも過半数は生き残っていた。捕らわれた彼らも軟禁状態で、場外に出なければ自由が約束されていたという。魔物が食糧を持ってくることは殆ど無かったため、こうして自給自足のため開墾したとか。
我々はそのおこぼれをもらっていた、というわけである。
逞しいなあ、我が国民は。
―――手記・「とらわれの王」より抜粋




