ギルド長とお話し
一際空気感が違う部屋の前に辿り着きました。こ、ここがギルド長の部屋なのでしょうか…雰囲気ありますね。
受付のお姉さんが部屋をノックします。
「どうぞ」
「失礼します。お連れしました」
「ありがとうございます」
重厚な机の上に置かれた資料と向き合っている男性のエルフ。金の腰まである紙がサラリと揺れ、紺碧の瞳がこちらを見やります。と、とてつもない美形です。年も私と同じくらいに見えますね。まぁエルフなので実際はどうなのか分かりませんが。
「業務に戻って大丈夫ですよ」
「はい。失礼いたしました」
「ーーさて。どうぞ、お座りください」
「は、はい」
応接用のソファに腰かけると、エルフさんも対面のソファに移動してきました。い、威圧感はないのに緊張感が半端ないですね…。ずっと笑顔でこちらを見ていますが、それすらどこか恐ろしく感じてしまいます。
「ここ、ドウの街冒険者ギルドのギルド長を務めております、ヴィオメルトと申します。どうぞ気軽にメルと呼んでくださいね」
「あ、私はステラと言います。この子たちはルノー、フォスです」
「ふふっ、よろしくお願いいたします。ーーそれで早速ではありますが、お聞きしたいことがありまして」
はい、なんでもお答えします。改めて背筋を伸ばしメルさんを見やると、そんなに硬くならなくても大丈夫です、と宥められました。
「お聞きしたいのは、あなたがお会いしたという精霊についてです。確かクエストの最中に会った、とのことでしたが…」
「はい。教会の図書室…から行くことができる隠し部屋のような場所で。知恵の精霊ビビさんとお会いしました」
「知恵の精霊…。古くから存在する方ですね。人類に知恵を与えたとも言われておりますが、まさか教会におられたなんて…」
メルさんによると、精霊は本来オリヴィエ・ルトーー別名楽園の地に住んでいると伝えられています。精霊の姿を見ることができたら一生の幸せが約束されるとの言い伝えも。つまりは簡単に言ってしまえば、人の前には滅多に姿を見せることはないということです。前回精霊の姿が確認できたのは、ゆうに100年も前のことだそうで。しかも場所は畑のど真ん中。
「精霊は、世界の理を司る存在。それゆえに慎重に交流することが推奨されています。まずはドウの街に精霊がいることを国に報告し、その後専門の方々が面会するかと」
「そうなんですね」
…そんなに重要な存在だったんですか?ビビさん。私、何も知らないままお話ししたり、相談を持ち掛けたりしていたのですが…。
「ステラさんは知恵の精霊とお話しされたのですか?」
「はい。まぁそれなりに…」
「もし差し支えなければ、どのような会話をされたのかお聞きしてもよろしいですか?」
ここで嫌です、と言えるわけもなく…。全部お話ししました。出会ってから光る謎の本について知恵をお借りしたことや、祝福と加護をいただいたことまでそれはもう事細かに。…勢いのまま喋ってしまいました。
「知恵の精霊から祝福と加護を授かるなんて…。ステラさんは素晴らしい方なんですね」
「いえ、私はそんなんじゃ…」
「ふふっ、お世辞なんかじゃありませんよ。人の本質を見抜くと言われている精霊から、祝福と加護を頂いた。それだけでも十分、あなたの人となりが分かりますよ」
そ、そこまで言われると恥ずかしいですね…。なぜか同じく照れているルノーと一緒に、顔の熱が取れるまで待ってもらいます。メルさんは相変わらずニコニコ笑っていました。
「失礼しました…」
「大丈夫ですよ。そろそろお開きにしましょうか。色々とお話を聞くこともできましたし」
「分かりました」
「また何かあったらよろしくお願いしますね。…ステラさんとは、そう遠くないうちに会うことになる予感がしますけど」
私はそうそうギルド長にお呼び出しされたくないです、と心の中でお返事します。その予感、外れていることを願いますよ。
受付に戻り、改めてクエストの処理をしてもらいます。依頼は達成ということで、報酬の1000Gをしっかりと受け取りました。お金は大事ですからね。
「続けてクエストを受けられますか?」
「いえ、一度アンの街に戻ります。色々とやることがあるので」
「分かりました。お気を付けて」
「ありがとうございます」
冒険者ギルドを出ると、早速アンの街に転移してみます。マップからアンの街を選択してーー。
「ーーびっっっくりしました」
「ホー…」
「シュー…」
何のアナウンスもなく、急に景色が変わりました。何の心構えもしていなかったので、ダメージが…。と、ここはどうやらアンの街の中央広場のようですね。
「まずはペルルさんの宿屋から行きましょうか」
「ホホー」
ドナお爺さんがちゃんと戻ってきたのか、確認しないといけませんからね。あとは少しだけ謎の報酬が気になっているのもあります。広場には誘惑が多いですがそれを振り切って宿屋に向かいました。
次の更新は4月17日です。




