7話
『〈義侠衆〉の殲滅でごさいます!どうぞ、あの前時代の遺物共を一人残らずぶっ殺しちゃってください!』
〈道具屋〉の声が携帯を通じて部屋に響く。
〈義侠衆〉の殲滅。
その依頼の内容に三人の間に短い沈黙が流れる。
各々が思考を纏めるなか、最初に口を開いたのはモリアだった。
「〈義侠衆〉の殲滅、ねえ。〈道具屋〉?」
『なんでしょう?』
「君はその名の通り、依頼主に様々な道具を売るのが仕事だ。物然り、人然りね。今回、私達を道具として使う君の依頼主は誰かな?」
〈道具屋〉。その名はスラム街では良く知られた名だ。彼、或いは彼女の売る道具屋は多岐に渡り、人、物、情報。ありとあらゆる道具が非常に高品質で売られている。
しかし、〈道具屋〉の客になるには道具としての高い品質を示す必要があり、認められた場合のみ、〈道具屋〉に繋がる専用の携帯が与えられる。
客は同時に他の客の道具でもあり、使う側も使われる側も常に変動する。
「それを伝えるなら今回の依頼を受けてもらわなければなりません。既に報酬は受け取っておりますので、道具として主人は裏切ることはできません。」
先程のどこか適当さを感じさせる声とは違い、非常に落ち着いた、しかし固い意志を感じさせる声だった。
道具としての誇り、或いは職業としての義務。
それが深く根付いた声だった。
「ふむ……。ミルリック?」
「別に良いだろ。〈道具屋〉が俺達を選んだ以上、俺達に出来る仕事ってことだろ。そこまで手間かかるものじゃないだろうしな。」
『おお!ありがとうございます!お二人とも受けてもらえるようで。』
「ああ、すまない。二人じゃくて──」
モリアがメリアを見る。
「三人にしたいんだけど、良いかな?」
『…………ま、良いでしょう。さて、依頼主ですが、〈義侠衆〉の頭領……ああ、今頃は前頭領ですかね。』
「〈義侠衆〉の前頭領?なんで自分の組織の殲滅なんか依頼すんだ?」
『〈義侠衆〉が人の道を、踏み外すことがあれば止めろ。というのが依頼の内容でした。前頭領の一人娘が反乱を企てて、〈義侠衆〉を乗っ取ったのでご依頼通りにお止めしようかと。』
「色々と、複雑な事情がありそうだね。詳しく聞かせてもらえるよね。」
『いえいえ、そう複雑な話ではごさいません。思春期特有の暴走ですよ。要は、義だの人の道だのに拘って弱くなった組織を立て直そうと、名前が売れてる奴らを片っ端から倒そうとしただけです。義も人の道もかなぐり捨ててね。』
「ああ、そういや、俺も〈義侠衆〉の奴に襲われたな。」
ミルリックは、散歩道、メリアと出会った場所でルルベという青年が襲ってきたことを思い出す。
思えば、〈義侠衆〉にしては少し異常な行動だった。
『ああ、それは僕が〈義侠衆〉にミルリックさんの居場所を教えたからですね。』
再び三人を沈黙が包む。しかし先程とは違い驚愕というより絶句に近いものだ。
「お前……。いや、ホント……お前さぁ!」
『仕方ないじゃないですか!正式に依頼されて報酬もちゃんとしてたんですから!』
「どおりで色々詳しいわけだよ。まさか手伝ってるとは……。」
『ま、まあともかく!〈義侠衆〉の拠点の場所を伝えますので、一人残らずでよろしくお願いします。』




