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雇われ魔物ハンター、元大学二年生

 ……さて、これで大学生という肩書きを捨てて、晴れて年下女の子に雇われるという実績を得たわけだけど。


 久しぶりに両親に連絡を取ったら、すでに都心のほうで生活しているらしくいつまでも地方に居て連絡のつかない安人のことを心配していたらしい。

 散々と電話ごしで怒られたあと、どうしたらあんたみたいな世間を舐め腐ってる奴が雇われるのかと世界のバグを疑われて、やるせなくなった。


 とはいえ、これからは魔物を狩るだけの楽な仕事をするだけで生活の面倒と金が保障される生活を送れるのだから、甘んじて受け入れよう。


 それもすべては楽に生きるために!


 と意気込むけれども。


「引っ越しってクソだるいんだよな……」


 荷物をまとめながら、そう愚痴をこぼす。

 本やキーボード、ヘッドホンなど気になったものを買ってしまうことが多いせいかまとめるものが多くて辟易していた。

 もともとこっちに一人暮らしするときに実家から、結構な荷物を持ってきていて……最近、ようやく片付いたばかりだったのだ。


 とはいえ、処分したりするのも嫌なので渋々段ボールにまとめていく。


 その中で、机の引き出しにしまってあるものを見つける。


「? スマホ?」


 そういえば、昔使っていたスマホを捨てられずに持っていたことを思い出す。

 ……この際、断捨離として処分しようか少しだけ迷う。


 だけど、なんだかしてはいけないような気がするので後回しにしようと段ボールのなかに放り込む。





 ――引っ越し作業も終わり、とうとうこの町ともお別れになる。

 すでに荷物は手配済みで、あとは安人がこの町から去るだけ。


 とくになんの思い入れもないけれど、一年も暮らしていたところを離れるのだからそれなりに感傷に浸ってみる。


「……うん、魔物狩ってる記憶しかねえわ」


 面白みのない灰色の大学生活。

 友人もおらず、何事もなく過ぎていく日々。

 退屈で始めた魔物狩りが巧を奏し、ついに理想の生活への第一歩を踏み出した。





 電車に揺られ、地方から首都へ。


 パイプなどが剥き出しの無骨な防壁を何度か超えて、乗り継ぎをする。

 徐々に立派な防壁になっていき、段々と都市らしくなってくる街並みを眺めながら……ようやく『新東京都』に着いた。


 壊滅状態だった首都を立て直し、強固な防壁に守られた新たな人の都市。



 ――魔物が現れたあの日。

 人は殺され、建物や技術などは少しだけ衰退した。


 人の密集する首都は特にひどく、壊滅的だったらしい。


 だが、関東はまだ変化が少ないほうだとか。


 東北地方は極寒の世界に。

 関西地方は地盤が崩落し、地下生活を余儀なくされている。

 中国・四国地方は雨が降り続け、水没寸前。

 九州地方は火山地帯となり、灼熱地獄。


 そして、最も被害を受けたのが北海道。

 今や魔境とさえ呼ばれるその地方は、そのほとんどの町が海に沈んだ。

 島がいくつも連なったような形となり、日本最大の大地を失った。


 見たこともないような魔物が蔓延り、雷雨や台風など天変地異が頻繁に起きており、海から魔物が押し寄せてくるため、支援するのにも精一杯だとか。



 だから、今ある文明の最前線であるこの新東京都は最後の砦……らしい。


「終わってんなぁ……日本」


 そんな過酷な世界で、防壁のない地方での暮らしはほぼ死とイコール。

 だけど、収容できる人数にも限界はある。


 もちろん、魔物を倒し、陣地を広げてはいるが……それでも足りない。


 現在の新東京都の範囲は、千葉県や埼玉県にまで届いたのだとか。


 大半は魔物に殺されてもしぶとく生きている人間たちを全員収容できるほどの広さじゃない。

 空を飛ぶ魔物だっているから、縦に広がることも憚られる。


 だから地方に住む人は結構いるから、安人も普通に生活できていたのだ。


「うわっ、都会だ」


 人が通ることのない寂れた道路とは違い、どこもかしも人だらけ。

 何か大きな生き物にでも流されているかのように、隊列を組んで歩いているように見える。


「お待ちしておりました。ようこそ『新東京都』へ」

「あ、ども」


 そんな中でもルイエという少女の存在は目立っていた。

 太陽に輝く淡い金髪はよく映え、少女らしさを残した顔立ちは通りがかる人の目を惹く。

 そんな彼女に相対する安人はパっとしない存在なのが余計に際立っていた。


 さすがに出会ったときのようにスウェットではないが、パーカーにジーンズという地味な恰好なことには変わりない。


「無事について何よりです。交通機関はよく魔物に狙わられますからね」

「ああ、そういえば……何回か電車が止まっていたような」


 電車が止まるなんて早々ないことだから驚いた。

 周りが当たり前のように落ち着いていたから特に気にしていなかったけれど。



 なんて話もそこそこに、ルイエはこほんと咳払いをして表情を引き締める。


「さて、着いたばかりでなんですが……早速、魔物ハンターとして仕事をしていただきます」


 当然、うへぇと少しだけ嫌そうな顔をする安人であった。

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