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そして少女は希望と出会う

 そうして、四月。

 新入生が大学に増えて、浮かれる季節。

 世界に魔物が現れて、人々に不思議な力が宿った日から二か月が経過した。


 人間、慣れるもので政府は魔物は人々が集まるところを集中的に狙うことを突き止め、主要都市に人口を密集させ狙いを絞るという政策に出た。

 地方からも人を呼び、都市の範囲を広げ、防衛しているらしい。


 けれども、そんなことは露知らず、大学二年に進級してからというもの、まともに授業に参加せずひたすらに魔物を狩ったりして日々の退屈しのぎをしている安人。


 魔物を倒すと体の調子がいいというか、力がみなぎるのだ。

 コツコツと日課をこなすのは好きなので、それに没頭していた。


 ここ最近はネットやニュースどころか、家族からの連絡でさえ確認していない。


 いかにして、日々の魔物狩りで効率よく動くかを考えていた。


 今日も、一狩り終えて、コンビニでカップ焼きそばを購入し家に帰ろうとする最中――


「? 交通規制?」


 人が少なくなったこの地域で珍しく警察が総動員で、通行止めをしていた。

 けれど、ここを通らなければ家には帰れない。


 なので、警察の目をかいくぐるようにそっと移動する。


 日々の魔物狩りで会得した技術を、警察の目を誤魔化すために使うとなんだか犯罪集がすごい。


 道路は魔物でも暴れたかのようにひどい有り様だった。

 地方のこの町でもこんな被害を出せるほどの魔物が現れるのか……とか呑気に思いながら、歩いていると。


「お、魔物だ」


 三メートルはある、大きな人型の蜥蜴。

 個体によっては火とか毒を吐いたりする厄介な魔物。


 だけどこいつは、


「あ、なんだこれ。ひっでー」

「――――どう――て――」


 周りを砂塵のように変えてしまう。

 それなりに脅威な個体らしい。

 建物とか道路が砂みたいになっていく。

 このまま放置しておくと、家まで粉々になってしまう。


 あと、なにか聞こえたような気がするけど、すぐに建物が崩れる音で気にしていられなくなった。


「……クソだりぃ」


 こんなことで宿なしは勘弁。

 ということで、とっととこいつを仕留めよう。


 安人は胸に手を当てて、体から自分の能力である刀――『易々事為イージー剣』を取り出す。

 戦闘をイージーにしてしまうから、イージー剣……ちなみに名前は安人が五分で思いついたものである。


 刀を抜けば、どれだけ脅威な敵でもイージーモード。

 目で追えない速度から、すごく鈍間なものへ。

 鉄すら砕く怪力もへなちょこに。

 周囲を砂塵に変える力も激減する。


 そこで、割となんでも切れるこの刀で滑らかに人型蜥蜴の体を切り裂く。


 まず四肢を切断し、倒れるところへ胴体と首を横に一太刀。


 最後に下から切り上げて、終了。


「ふぅ……」


 決まった。

 強敵だからかっこよく決めたかったから、上手くいってよかった。

 某 原作とジャンルが違う外伝ゲームみたいに高速で切り刻むなんてことはできないけど、いつかはしてみたいものだ。


「あ、ま、待って……!」


 と、刀を仕舞い、家に帰ろうとする。……そんな安人を呼び止める声がした。


「うぉ、人がいたのか……」

「あ、えと、その……わ、わたしは」


 安人を呼び止めた少女は怪我をしているらしく、白を基調とした服は赤く滲んでおり破れた衣服から覗く肌はとても痛々しいものだった。

 綺麗であろう金色の髪も土やら血やらで汚れてしまっている。

 座り込んで、動くこともままならない様子。


 ……普通、そっちのことを気にするのだけど、この時の安人は久々に人から話しかけられるという状況に脳が追いついていなかった!


「あー、えー……お嬢ちゃん、迷子?」

「へ?」


 何を血迷ったのか、そんなことを問いかけてしまう。


「あー、いや違う。ごめん、その怪我大丈夫?」

「あ、はい。これくらいならわたしの力ですぐに治るので」

「そっかー……あー……んー……えーっと」


 会話が続かない。

 というかまともに会話した記憶がほとんどなかった。

 高校のときはそれなりに人と会話していたようないないような気がするけど、大学に入ってからはそもそもまともに通ってすらいない状況なわけで。


 ――人から離れて魔物ばかりを狩る生活で、コミュニケーション能力が衰えてしまったようだ。


 というかよくよく見れば、少女は中学生くらいに見えるし……傍から見て、ボロボロで衣服も破けた少女に話しかけるスウェット姿の大学生なわけで。


 普段、人の目なんて気にしない安人だが、世間体というものは一応気にかけていた。

 ……大学をサボりまくっておいて今更だが、それでも事案めいたこの状況は焦る。


「……あの」

「な、なにかな?」

「その、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「ああ、そうだね、自己紹介からか……俺は日森安人。君は?」

「わたしは、ルイエ・フェアウェルンです。『魔物討伐協会』日本支部所属です」


 外国人なのか、日本語上手だなとか思っていたら、未知の単語が出現した。


 安人は脳がさらに混乱した!


「? まものとうばつきょうかい?」

「はい……日森さんも所属していますよね?」

「え?」

「え?」


 そんな怪しげな組織に所属した覚えはないです。

 当方、野良で魔物を狩るソロプレイヤーです……。


「あ、えっと……政府や国連が認めた魔物を討伐するための組織なんですけど」

「あー、そうなんだ。ごめん、ここ最近ニュースとか全く見てなくて」

「そ、そうなんですか」


 なんか若干、引かれたような気もするけど、落ち着いた脳みそがようやく本題に入れとささやいてくる。


「それで、俺を呼び止めたのはなんで?」

「え? あっ……それは、えと……」


 一呼吸おいて、ルイエは口を開く。


「日森さんが居なかったら、わたしは死んでいました。そのことでお礼が言いたくて」

「ああ、なんだ。別にいいよ。大したことじゃないし」

「そんなことありません。あの魔物は、放置すれば都市一つを簡単に滅ぼせるくらい強大な魔物でした」

「そ、そう……」


 と、そうこうしていると魔物を討伐したことに気付いた警察がこちらにやってくるのを感じた。

 そういえば、立ち入り禁止を無視してここに居るので、鉢合わせたら面倒なことになる。


「じゃあ、俺はこれで。お大事に!」

「あっ――」


 というわけで、安人はその場から迅速に立ち去るのだった。

 警察が駆けつけるよりも早く、現場から遠ざかり家のあるほうへと目指す。


「…………」


 その後ろ姿をルイエはじっと見つめていた。

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