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楽に生きたいのであって楽に戦いたいわけじゃない

 そんな事件があった翌日。

 大学サボって、いつもの公園で自分の能力の確認をしていた。


 いつもより人通りが少ないおかげで、集中できる。


「なるほど……つまり、俺の能力は刀を自在に出せる力……」


 といっても、分かることなんて大したことはなく刀を出したり仕舞ったりを繰り返すだけ。

 コンクリを砕いたり、壁を走ったりとかできるわけじゃなく、高校二年から地道に続けた筋トレの成果しか感じない。

 というか、刀自体も無骨でカッコいいんだけで、重さも軽く持てるくらいでこう、名刀とか伝説の武器みたいな〝圧〟を感じることができない。


 これ、見かけ倒しじゃね?


 そう思った安人は、公園のブランコの周りにあるよく分からない鉄の柵を切ろうと構える。


「あ……」


 なんとなく、切れずに終わるだろうと高を括っていた安人はあまりの手応えのなさを感じ……綺麗な断面の鉄柵を見て青ざめる。


「やっべ、壊しちゃった」


 自分でやったくせに、慌てふためく様はなんとも滑稽で……誰にも見られていないことを確認すると、バレてないならなかったことにしようと見ないふりをした。


「でも、これ本物……というより、よく切れる刀だな」


 公園にある木の枝とかサクサク切れる。

 力なんていらない。

 ただそこに当てるだけ……なんて達人の真似事みたいなことを思いながら、その性能を試していく。


 さすがに、切って目立つようなものを的にすることはなく、切っても問題ないもの狙う。





 もうそろそろやめて家に帰ろうかなと、昼下がりに思い始めたころ……公園の周りに妙なものが集まりはじめた。


 ギョロギョロと目玉の飛び出したワニみたいな生物。

 よだれを垂らしながらあほ面でこちらを見つめてくる。


 これが魔物なんだと、直感的に悟った。


「おぉっ……!」


 なんだか感動を覚えるくらいに都合のいい展開。

 そこらへんの木の枝で試し切りするのにも飽きてきたころあいに表れる魔物。

 これは挑まなきゃいけない。


 未知の生物に対する恐怖とか、死ぬんじゃないかという感情は不思議と湧いてこなかった。


 多分、脅威に感じていないからだ。


「こいつら、動きが鈍いし……」


 のっそのっそと近づいてくるその魔物に、こっちから近づいて一撃で仕留めようと適当に刀を振るった。


「え?」


 すると血がブシャーっと噴き出て、体中に浴びてしまう。

 魔物は絶命していた。


「あ、あぁー……なるほど」


 そこで安人は不思議と自分の能力について、唐突に理解した。

 『戦闘においてのパフォーマンスを無差別に激減させる』……これが安人の能力。

 当たり前のように、その力が自分にあった。

 なんの前触れも、兆候もなく、手足があることに疑問を抱かないように。


 その力が発揮していなかったのは、周りに敵がいなかったからだ。


 なんてこった、すごい能力だ。

 でも、


「つっかえねー……これでどうやって楽に生きるんだよ」


 要は敵が全員、イージーモードなわけで――こっちの身体能力とかが上がるわけじゃない。

 ただ、敵が楽に倒せるだけ。

 面倒くさいことは嫌いだから、それはそれでありがたいのだけど……それで? ただ簡単に敵を倒せますで、これから先、働かずに生きていけるのかと聞かれれば……


「無理。……でも今は」


 とりあえず目の前に魔物を倒して、それから、町にいるであろう魔物を狩りに行こう。





 ――そうして、安人は魔物をひたすらに狩り続け、大学なんてものも忘れ、家に帰り、魔物を求めて歩き回る生活を送る。

 ギリギリのところで進級のことを思い出し、滑り込みで二年に上がることはできた。

要は周囲にあらゆるデバフを無差別に垂れ流すというクソだるい能力。

ちなみに安人はRPGではイージーモードでひたすらにレベリングをして「たたかう」だけを選択するタイプ。

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