↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
94/126

取り敢えずノアに冷たいらしいです

 


 想像より早く、アレクから連絡が来た。


 その早さに「流石、時期公爵!」と手を叩きたくなったが、流石にそこまでは貴族令嬢らしからぬ行動のため自重した。



 そしてそのまま空間魔法に入れていた冒険者用の服に着替え、そのまま転移で屋敷から去る。


 流石に挨拶も無しに居なくなった妹に対して、文句のひとつでも言いたくなったのは仕方が無いとアレクは思う。

 本当に誰にも気付かれずに部屋から忽然と消えたのには、幾ら何とかすると伝えはしたものの、まさか本気で誰一人姿の確認も出来ないまま居なくなるなんてと唸る。

 本当に気付かれずに居なくなる事が出来るという事を、証明されてしまった。安易に拒否しなくて良かったと思う。


 何とかすると言ったからには、何とかするのが時期公爵であるアレクの実力である。



 ーーーーーーーー



 屋敷を転移で人気の無い場所に出て、いつものローブを被り歩きながら、休みの間にしなければいけない事を頭の中で羅列する。


 一先ずはギルドへと依頼達成報告をしようと、ギルドへと向かう。



 ギルドマスターの執務机の上は、相変わらず書類が多く積み上がっている。見た目や雰囲気からは考えれないくらい真面目なこのギルドマスターであっても、書類量は全て熟るものではないらしい。


 大変そうだな、と他人事のように思う。


「こんな時間に来るなんて、珍しいな。」

 暗に大丈夫なのか、と心配されているのがわかるのが少し笑える。

「学園が長期休みに入りまして。」

 その台詞で、ギルドマスターがピクリと反応する。


「長期休みだと言っても、お前の立場上こんな場所にこんな真っ昼間から来れるもんじゃないだろ?」

「普通ならそうですわね。」

 でも私、普通じゃありませんので。と笑う。


「なら、これを。」

 結局のところ、依頼を渡したいが為の確認だったようだ。


 珍しく、緊急性の高い物ばかりである。

「随分と働かせる気満々ですわね。」

「いや、そんなつもりは無かったんだが。

 そもそもいつ来るかわからんお前を当てにできないのは、承知の上だし。」

 そう話しながらも、目の前の書類を捌いていく。


「けど、来たならやってもらう方が被害も少なくて済むだろ?」

 ギルドマスターがギルドマスターたる所以は、公爵令嬢を顎で使ってでも、魔物による被害を減らそうとする点であると思う。


「ギルドの依頼ばかりをやる訳にもいかないのですが。」

 そう言いながらもマグリットも、依頼書の束を受け取る。

「お前もなんだかんだと、お人好しだよな。」

 ギルドマスターもマグリットが受けない選択をするとは、考えてもいない。


「・・・・・・貸しですからね。」

「ゾッとしないこと言うなよ。」




 ギルドから出て、パッとだけ見た依頼書を思い返す。

 元々ギルドに寄った後はノクトの所へと行こうと思っていたのだが、渡された依頼は緊急性の高い依頼だけあって、直ぐにでも向かわなければならない物ばかりであった。つまりは、予定の変更は余儀なくされる。


 流石にやってもやっても無くならない。普段渡される依頼書とは別で、数は多くはない。

 数日掛かるかもしれないが、許容範囲かなと思う。


 長期休みはまだまだ始まったばかりだ。




 人気の無い場所まで歩き、転移で移動する。



 最初の依頼は内容的にはSランク宛への依頼でなくても、という物であった。だが、かなりの緊急性の高い依頼なのは間違い無く、そう言う点からSランク依頼となったのだと推測する。


 今回の魔物は二体。

 ヴォジャノーイとルサールカ。



 ヴォジャノーイはサイズは人よりも少し大きいくらいであるが、蛙に似ており緑の髭を生やしている。

 しかも肉食で、人間が好物である。


 ルサールカはヴォジャノーイと違い、人の姿をとっている。

 薄着の服を纏っており、魔物ではあるがかなりの美人である。


 この二体は恐らく番であり、他の事例でもこの二体での組み合わせの報告は多く有る。


 今回緊急性が高かった理由としては、近くに町がある。

 この二体の魔物。沼や川に住むのだが、今回住処が町近くの川であった。川の流れが変わるようなものを嫌うため水車や水門が壊されたようである。


 人も水場も害するとあっては、放っては置けないと判断されたようであった。






 倒すのにそこそこ時間が掛かってしまった。

 周りに被害が及ばないようにするために、手間取ってしまった為だ。


 町も近い事もあり、騒ぎを大きくしたくなかったというのも要因の一つではあるが。


 魔物を解体していると、後ろに気配を感じる。


 マグリットの背後にいきなり現れる気配など、一人しかいない。

 が、マグリットから話す理由も無いためスルーする。


「お嬢。無視しないでよ。」

「貴方が私に用があるのでしょう?早く言えば?」

「お嬢って俺に冷たいっすよね。」

 思わずノアの顔を見る。


「冷たいつもりはないのだけれど。」

 無いけれど、ノアに対して自分を取り繕うつもりもないのだ。だからこその態度なのかもしれない。

「俺だけにっていうのも、それはそれでそそられるっすねー。」

 ノアはニヤニヤしているが、マグリットは反対に興が削がれた顔を向ける。


「そんなつもり無いくせに、そんな事言わないでくれる?」

「いやいや、お嬢なら俺アリっすよ?」

「タチの悪い冗談はおよしなさい。」

 マグリットの言葉に肩をすくめる。


「はいはい。俺が悪かったっすよ。」

「それで?何の用?」

 ノアから視線を外して、魔物の解体を再開させる。


「旬殿が会いたいそうっすよ?」

 旬の方から会いに行きたいのは山々なのだが、マグリットは転移で転々と移動してしまう為、転移の無い旬では追い付けないのだ。


「・・・・・・・・・わかったわ。

 顔を出すと伝えてくれる?」


 これが決別となるのか、そうでは無いのかマグリットにはわからない。


 旬との気安い関係性はマグリットとて気に入っていたのだ。だからこそ、今の今までは旬に物騒な気配を隠してきたし、進んで見せるつもりも無かった。

 ノアの所為、と言えない事もないが、ノアを責める気にはなれない。どうせいずれは気付かれるのだ。それが早いか遅いかの違いだと割り切ることにした。


「お嬢には俺がいるじゃないっすか。」

 少しばかり拗ねたような雰囲気を感じる。

「あら、ヤキモチ?」

「お嬢の信頼があるのは、俺だけで良いっす。」


「ヤキモチ焼く相手も私じゃないでしょ。」

「俺は我儘なんっすよ。」

「・・・・・・知っているわ。」



 でなければ、あんな事しないだろうからーーーーーー






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。