取り敢えず二日目が終わります
少し気になる事が出来てしまったマグリットは、建国祭の間大人しくしているつもりであったが、このままにするのも頂けない、と戦闘用の服に着替える。
監視は魔力で付けている。
距離もあったし、ハッキリとした敵意があった訳では無かった。それでも捨て置けないと判断する。
まだ、影達でさえ気付いて居なかった。旬にでも知らせればそれで良いのかもしれない。が、確証も、無い。
確認してからでも遅くはなかろうと、その場まで転移で移動する。
夜会後と言う事もあり、かなり夜遅い。
しかしマグリットとフレデリックを監視して居た人物も、それを報告する人物も起きているようだ。
現状では敵意がある訳では無さそうだが、何の目的なのかは気になる。
皇族を監視した割りには、警備がザルだなと思える程しかない。
殺害目的では無さそうだが。
距離もあり敵意が無かったけれど、旬達影に気付かれていないのは純粋に凄い事だと思う。あれでも皇族を守っているのだ。それに気付かれない時点でなかなかの実力者では、と思うのだが。
思う、のだが・・・・・・・・・
「フレデリック殿下とカンバーラント公爵令嬢との関係性はどうだった?」
雇い主であろう初老の男が、監視をしてきた男に問い掛ける。
「あ〜あれは、何っすかね。
体が痒くなりそうでした。」
「・・・・・・・・・・・・」
雇い主はその言葉に絶句する。
それを窓の外から聞いていたマグリットも言葉を無くす。
聞くんじゃなかった、と思えどそうはいかない。
「つまりはあの二人はできてるのか?」
「できてるって、もうちょっと言い方ってもんがあるでしょ。」
間違ってませんが。とケラケラ笑っている。
できてないわ!と叫ぶことが出来ないのが悔やまれる。
「それで実際はどうなんだ?」
「いや、あれは恐らくですが・・・」
「恐らく?」
「フレデリック殿下の片想い、的な?」
「殿下の、片想い、だと?」
あの殿下が?と雇い主が驚愕を露わにしているのを、やはりケラケラと笑って見ている。
「そうっすね。
でも、実はそれ以上に気になる事があるんすよね。」
「気になる事?」
「いや、これはまだ確証がある訳じゃないんで。報告段階では無いっすね。」
想像以上にこの男、出来るのかもしれない。
マグリットがこの男の監視に気付いたように、この男もマグリットが気付いたかもしれない事に気付いているのだ。
余り此処に長居する訳にはいかなさそうだと、その場を離れる。
転移では魔法の残留で気付かれる恐れがある為、音を立てずに走って離れる。
監視をしていた目的はハッキリとは言っていなかったが、雇い主の正体は判明しているし、これ以上深入りしてあの男に捕まるのは得策では無い。
ある程度、離れた所で転移で自室へと戻る。
雇い主の方は第二皇子派の下っ端であった。
上からの指示か独断かの判断は付かなかったが、今回は何故マグリットのパートナーがフレデリックだったのかを確認したかったのでは無いかと思われる。
雇い主の方は放っておいても問題無いであろうが、あの雇われている方は違う。暗躍を生業にしている影が気付かなかったくらいである。あの男が悪意を持って此方側に接触してきたとしたら、かなりマズイかもしれない。
少し調べたいが中途半端な実力だと、間違いなく気取られる。
しかしマグリット本人が動くとなると、時間が無い。
「学園、休むのは駄目かしら?」
ポツリと一人呟く。
数日くらいなら何とかなりそうだがどうだろう、と悩むも直ぐにダメだと思い直す。
建国祭が終われば試験が待っている。
流石に一年通わずに、二年になり最初の試験をスルーは出来ない。
ずっと魔力を使っての監視をするのにも、魔力量、集中力等、様々な問題点がある。
しかし、監視を外すのはまだ不安で。
(持つ、かしら?)
試験は然程問題では無い。根を詰める程では無いし、試験内容の勉強をしなくても解ける。
問題は魔力を使い続けての体調だ。
減り続ける魔力にそれを維持する集中力は並大抵では無い。が、仕方無いだろう。
暫くは依頼も熟せないな、と溜息を吐く。
建国祭の間だけだと決めていたのに。
マクシミリアンやジェシカに付随する面倒ごとは仕方無いと思えるものの、こういった直接関係の無さそうなものは普通に面倒臭い。
特にこんな末端貴族にまで監視される謂れは、無いのだけれど。
(もう、今日休む時間は無いわね。)
既に監視を始めている。あの聡そうな人物に見つからないよう慎重に。
今まで以上に寝れなくなるのは必須。なのにまだ建国祭の最中。
また朝早くからドレスを纏うための準備だ。
伸びをして体を解す。
貴族令嬢生活は運動不足になりがちだ。
暫く依頼を受けれない事を考えると体が鈍らないように出来る事はないかと思案する。鈍ると依頼にも支障が出てしまう。
取り敢えずは建国祭を終わらせて、試験が始まってから臨機応変がベストかな、と思う。
今はもう直ぐにでも部屋に入って来そうなソフィー達侍女を待つ。




