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取り敢えず整理します

 


 自室へと入ると机の上に山積みになっている手紙が目に入る。


 これの処理もあるのか、と手紙を見るだけで疲れる。


 お茶会に園遊会、遊園会に社交パーティーへの招待状たち。


 今までは行方不明であったこともあり、様子見されていたのか余り量は届かなかった。


 流石にそろそろ全てを断る事も出来ないし、情報収集の場としては最適な分出ない訳にもいかない。

 自身ばかりがそういった事をすることに少し不満が残る。情報収集の場にフレデリックも出るべきだと思う。それは依頼の際にでも直談判しようと決心する。


 しかし全ての招待に出る訳にもいかない。

 先ずは手紙を派閥別に仕分けする。


 やはり一番多いのはカンバーラント公爵家が所属する、中立派からの招待である。ここからの情報が一番公平である。しかし派閥内に居ない為、細かい噂などは余り入ってこない。


 次に多いのは第二皇子派から。

 他から見ればマグリットはマクシミリアンに嫁ぐのだから、第二皇子派だと思っている者は多く居る。


 しかし実際にはマグリットとマクシミリアンの不仲は有名であり、取り込むなら今だと思っている者が第一皇子派側に多く居る事も確かである。


 マグリット的にはどちらに付く等と公言するつもりはないが、間違っても第二皇子派になる事は無いし、そもそもマクシミリアンと結婚するつもりは元より無い。


 さて、どれを出るべきかと精査する。


 それぞれの筆頭からの招待状を並べる。


 第一皇子派筆頭である、ローゼンベルク公爵主催の園遊会と社交パーティーの招待状。


 第二皇子派筆頭である、ダグラス公爵主催のお茶会と社交パーティーの招待状。


 中立を担う筆頭はマグリットの家のカンバーラント公爵となるので、次席となる立ち位置のハーレー家からのお茶会と遊園会の招待状。


 社交パーティーは今回は取り敢えずは行くつもりは無い。

 学生であるうちは必ずしも参加しなくても良いとされている。夜が遅くなる為だ。

 必要とあれば行くが、今回は見送る。


 全てを行く必要も今の所は無いかと思う。


 そうなればどれにしようか、と悩む。


 第一皇子派は今回は無しかな、と思う。あそこの派閥系列へと行くと実は毎回情報収集というよりかは第二皇子ではなく第一皇子と婚約しろと言われ続けるばかりで、辟易する事も多い。


 相手が両皇子どちらであろうとも、皇帝陛下が次期皇后をマグリットと決めているからこそ、マグリットと結婚した方が時期皇帝陛下となれる、と既に第二皇子が皇太子となっている今でも言われている。


 第二皇子派でも悪くないかもしれないが、今回は平均的に全体の情報が入りそうな中立がいいかもしれない。社交界復帰の一番目としても悪くない。

 皇子派閥のどちらかを選ぶ方が角が立つであろう。




 次は依頼書の選別。


 受ける受けないで先ず分ける。


 その後はどれ程の時間が掛かるかで選別して、ファイルに仕舞い直す。

 それだけであっという間に時間が過ぎてしまう。


 食事後入浴を済まして、屋敷中が寝静まった頃に依頼をこなしていくのがベストか。その時間であればマグリットの気配を感じなくても気にはされないだろう。


 どうせ余り寝れやしないのだ。魔道具作りも壁にぶち当たっているのだし、良い気晴らしになるかもしれない。



(そういえば・・・)

 フレデリックからの依頼書を確認する。


 日にち指定があるのかどうかを見ていなかったと再度目を通すも、特に書いてはいない。転移魔法があるとはいえいきなり目の前に現れる訳にもいかない訳で、いつが良いのであろうかと疑問に思う。


 これは直接聞けという事であろうか?


 仕方ない。余りマグリットから連絡はしたくはないのだが。


『帝国の若き太陽、フレデリック殿下。

 今お時間大丈夫でしょうか?』

『ん?あぁ、大丈夫だ。』

『依頼書を確認したのですが、ご都合のよろしい日をお伺い致したく。』

 そう言いつつフレデリックからの依頼書を仕舞う。


 屋敷内の者に見られて困る物は、すぐに直すに限る。


『逆にマグリットはいつなら良いんだ?』

 まさか殿下の方から予定を聞かれるとは思ってもみなかった。

 相手は皇族であるが故に、予定を合わすのはマグリット側であるのは当たり前なのだから。


『時間帯に寄っては、殿下に皇宮での用事でそちらに行く事になった事の偽装工作はして頂けると助かりますが・・・』

『まぁ出来ん事は無いだろうが、バレた時不味いな。それにそうなると面倒では無いか?』

 皇宮に用があるとなると確かに面倒だ。


 皇宮へと制服で行く訳にもいかず、ドレスも簡単な物では駄目だろう。むしろ何時間も掛けて支度をしなければならない。

 確かにそうなると面倒どころか、別の厄介毎にまでなりかねない。


 そういえば社交界に顔を出すということは、ドレスを着なければならないという事を今更ながら思い出す。


 正直、高価なドレスは公爵家に戻ってきてから一度も着ていない。

 今は制服と、簡素なドレスでやり過ごしてきたのだ。


『確かにそれは避けたいですね。時間の無駄ですし、何より気飾る必要性がありませんので。』

 しかし公的に皇宮へ行くとなると、着飾る事は避けれない。


 つまりは。

『いつなら問題無く動けるのだ?』

『・・・・・・・・・深夜帯でしょうか。

 殿下も授業後すぐ、という訳にもいかないですよね?』

 学生と違って教師は授業が終わっても、すぐ終業とはならない。


『確かに流石にその時間は俺が時間を作れないな。』

 フレデリックの終業を待つとマグリットが帰らなければ行けない時間となってしまう為、マグリットの身動きが取れなくなる。


『貴族って一人で動けないのが不便ですね。』

 貴族としての矜持はあるが、自由に動き回れないのはやはり不便だと感じている。


『下位貴族ならそこまででは無いだろが、公爵令嬢ではな。』

 市井で暮らしていた時間もやり直しを含めると長い為、その辺りの窮屈さはやはり好きでは無い。


 何処へ行くのにも、護衛やら侍女やらが付いてくるのは当たり前。むしろ移動さえも、どれだけ近かろうが馬車。

 わかっていた事だが、暗躍するには動きづらい。


『仕方ないのはわかってるんですけどね。心配も掛けてしまいましたし。』

 思わず肩をすくむも、現状でさえ破格の対応をされている。

 普通に考えて行方不明になった令嬢にずっとお目付役が付いている訳でも無く、多少は動き回れて比較的自由にさせてもらえている。

 縛り付けて又家出されるのも困るから、というのはある様だが。


『ならやはり深夜帯がベストだな。』

 仕方無いかもしれないが、マグリットはコッソリと眉間に皺を寄せてしまう。


『私は構いませんが、殿下の睡眠時間を削る訳には・・・・・・・・』

『問題無い。毎日起きている。』

 そうだろうと思っていた。だからこそ、不機嫌が顔に出てしまったのだから。


『殿下。そのままではいずれ倒れてしまいます。』

 そうは言っても、どうしようもない事も知っている。それでも言わずにはいられなかった。政務という激務を出来る者が少な過ぎるのだ?


『仕方あるまい。皇帝陛下も忙しくしていらっしゃる。

 皇后皇妃両殿下はどちらも多少の外交はしていらっしゃるが、政務にはノータッチだ。マクシミリアンも同様。


 正直、皇族の婚約者ということでマグリット助けてもらえれば、と思った事がない訳ではないが・・・・・・』

 マクシミリアンがやらない物を、その婚約者にお願いなど出来る訳も無く。そもそもまだ婚約者。願ったところで出来る立場では無いのだが。


『そうですね。学園に入る前までの私も今の殿下に負けないくらい忙しかったので、恐らくは頼まれたとしても、手は回らなかったでしょう。』


 学園に入る前。


 マグリットからしてみればもう何十年も前の様な感覚。


 その頃はかなり厳しい妃教育を施されていた頃。覚えれないなら暴力は当たり前。他の事に目を向けたとあっては、どんな目に遭うかわからない頃だ。



 誰もマグリットが教師たるメンバー達に、そのような扱いをされているのに気付かなかった。



 教師陣の選別は皇帝陛下の指揮下に無かった。だからこそ皇帝陛下は知らなかったし、知られない努力さえあった。


 教師の選別は皇后皇妃殿下の両殿下が担ったのだが、この二人はお互いを嫌っているにも関わらず、マグリットの事さえも嫌いだったようで、こういった教師陣となってしまった。


 当然の様にマクシミリアンはその事を知っている訳もないし、知っていたところで何かをしたとも思えない。


 フレデリックはマグリットと関わりは無かったが、もしかしたらそういう事があるのでは、とは疑っていた。疑っては居たが確証も無く、両殿下に阻まれてどんな状態であったかの確認は取れなかった。



『こんな事になるなら、どうにかして介入すれば良かった。』

 謝るなど、今更出来やしない。

 それにフレデリックの母である皇妃殿下も一緒にやった事だ。関わっていないと突っ撥ねる事さえ出来やしない。


 後悔ばかりが残る。


『何故自分ばかりが、と思わなかった訳ではありません。

 特にマクシミリアン皇太子殿下との扱いの差に、泣いた事は無いとは言いません。


 それでも。

 知識を与えてくれた事に感謝しています。』

 念話だから見えはしないものの、大丈夫だと微笑む。




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