取り敢えず考えます
念話での話し合いは、これ以上の会話はお互い余計な事を言ってしまうかも、とお開きになった。
取り敢えずはマクシミリアンとジェシカが会わないようにする事は決まったが、この広い学園で偶然会うのも難しいかもしれないが、会おうとしているのを会わさない事も又難しかった。
しかもマクシミリアンは腐っても皇族。かなり目立つ。
念話後、数日は問題無かった。
それでもマグリットは何度も何度もジェシカが近くに居る事には気付いていた。
近寄るでも無く、観察している様な視線に、何がしたいのかと思ったが、それもすぐに理解する。
恐らくは偶然を装って出会う為に、マクシミリアンの行動範囲を確認していたのだろう。
しかしそれも少しずつ少しずつ距離が近づいて来る。これはそろそろ出会いイベント的なものを起こそうとしているのは明らかだ。
それを違和感無く毎回止める、なんて出来るものなのだろうか?マクシミリアンとマグリットが婚約者同士、というのは知らない者が居ない程、有名な話である。ジェシカも辺境の地から帝都に出て来た身であるが、知ってはいるであろう事は想像に固く無い。
それを気にせずに寄ってくるのを、毎回婚約者であるマグリットが止める。
(それは・・・・・・・・・ちょっと、嫌かもしれないわね。)
仕方ない。仕方ないかもしれないが、まるで嫉妬に狂った女のようではないか。
偶にならそんな事もあるかもしれない、と思われるかもしれない。しかし毎回の様に出会うのを止めに来る婚約者となると気持ち悪く無いだろうか。常に監視をしているストーカーの様では無いか。
確かに二人が出会わないようにするのが、ベストなのかもしれない。しかしそれはいつまで?学園卒業までで、済む話なのだろうか?
婚約解消、破棄にならなければ卒業後、マクシミリアンとマグリットの結婚式となってしまう。
しかし本当に、そこで終わるのだろうか?
結婚してようが、相手は皇族。
第二夫人である皇妃殿下の地位もあれば、それこそ何人でも側室を持つ事だって出来はする。
そこにさえ潜り込めれば問題無いのでは?そうなれば一生、出会わない様にしなければならない。
幾らなんでもそこまでずっと、監視する事は出来やしない。
確かにジェシカは男爵家。気軽に皇族には会えやしないだろう。
しかしそこは男を手玉に取るジェシカ。何とかして近付く方法を模索するのは間違い無い。
そうなると、どうあっても目は届かない。
誰を使ってどのようにして近付くかわからないのだから。
こちらにはマグリットとフレデリックしかいない。
しかもフレデリックに、監視など出来るのかも不明だ。
やはり人手が居る。
しかしそこまで信用の出来る者は、今世では余り居ない。
ソフィーやノクトは信用しているが、ソフィーにはそんな事頼めるわけも無い。ノクトはちょっとお願いしたい事がある為、監視などしてもらっても困る。
フレデリックには手駒となる者は居ないのだろうか。しかしここは学園という特殊な場所。恐らくは過度な妨害などは、出来る者も居ないだろうことは予測出来る。
マグリットに護衛が付いているのと同様、当然マクシミリアンにも付いている。しかしそれはやはりマクシミリアン派の人間である。そこにフレデリック派の人間を付ける事は、絶対に出来やしない。
仮に監視を別に付けたとして、それが見つかれば、やはりそれはそれで不味い事になる。
事情を知らない者からすれば、第一皇子が第二皇子を後継者の立場から下そうと監視している、と捉えられても文句は言えないのだから。
つまりは出会わないようにはしてみるが、その後出会った後どうしていくかを考えなくてはいけないかもしれない。
先日のフレデリックとの念話は、あくまで報告であった。
つまりはこれからどう対処していくかの相談が、圧倒的に足りない。
相談する時間はどうあったって余り取れはしない。フレデリックは念話しながら他の事も出来るようだが、マグリットはそうはいかない。
それにフレデリックも出来はするだろうが、仕事の効率は落ちているのでは、とも思う。
相談したい事は山あれど、最低限だけでも確認しなければいけない事を頭の中で羅列していく。
考える事が多くて、少し面倒臭い。
そもそも皇帝陛下になられる様なお方が、事情があれど簡単にハニートラップなんかに引っ掛かるとは情け無い。その周りの側近達含めて。
恐らく近いうちも何も、今日明日には更にジェシカはマクシミリアンに近付いてくるであろう。それを変に思われない様に、止めなければならない。
この学園は、一応は平等を謳ってはいる。
だからこそ皇太子殿下に男爵令嬢が話し掛けても、然程問題にはされない。けれど実際には教師だって貴族。平等になどなってはいない。それ故にマクシミリアンは学園内であっても、不遜であり人を顎で扱う様な事をしているし、それを止められる者も居ない。
だからこそ社交の場であれば問題になるような事は、学園内と言えど誰だってやりはしない。
しかしジェシカはそれを歯牙にも掛けず、恐らくは突進してくるのだろう。そして結果。皇太子殿下と男爵令嬢との恋愛関係なんてものが、成り立ってしまった。
例えば、マグリットがフレデリックと婚約者同士となると政治的バランスが崩れるのと同様、マクシミリアンが下位貴族との婚姻も問題だらけである。
それを何故わからないのか、いや、わかっている。そんなものは今更な事くらい。わかっているのであれば何度も何度もこの帝国は滅亡などしてはしない。
せめて一代限りの男爵でなければ良かったのか。せめて伯爵程は欲しいところだ。しかしそれでさえギリギリだ。
いや、そうなると令嬢としての教育が施されてしまい、今の性格とは程遠くなり、結局は見向きもされなくなるのであろう。
いっその事全く悪意の無い平民であった方が、余程マシだったかもしれない。
(あ、そういえば・・・・・・・・・)
皇帝陛下から呼び出しがないのは忙しいのか、フレデリックが上手い事言ってくれたのか。
グダグダと色んな事を考えてみるも、ただ監視するだけも暇で。
魔力を使っての監視はやはりかなり消耗する。だからこそ出来る時は気配を消し、自身の護衛を撒いてからこっそりマクシミリアンを見ている。
しかし何日も護衛を撒いていることがバレると、どうなるのだろうか?
そもそもマグリットに付いている護衛はフレデリックが用意している者では無い。マクシミリアン側から、というよりかはマクシミリアンの母である皇后陛下が用意した者である。
つまりはどうあってもマグリットが邪魔になれば、庇いもしない役に立ちもしない護衛である。
現皇后陛下はマグリットを嫌っている。溺愛している息子がマグリットを袖にしているのだから当たり前であろうか。
それでも皇帝陛下の命には逆らえず、婚約者である事を容認するしかないのであろう。
そもそも護衛が撒かれる時点で問題だらけなのだが、この役に立ちもしていない護衛は処罰を恐れてか、恐らくは撒かれている事を上に報告さえしていない。
ただ監視されるだけの護衛など要らないのだが、どうにかならないだろうか。今はその護衛、見当違いの場所をマグリットを探し回っている気配がする。護衛としての実力は、まぁ無いな。というか、何故こんな実力で皇宮で働けているのか不思議なくらい。
(あらあら、そろそろだと思ったようね。)
マクシミリアンを監視しているが、視界の隅にジェシカもずっと居た。二人がどうやって出会ったかもいつ出会ったかかもわからなかったからこそずっと監視する羽目になったが、確かに今であればマクシミリアンの周りには特に目立った人気は無い。




