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〜sideフレデリック ギルドからの報告

 


 マグリットとの約束の時間まではまだあるだろうと、やはり溜まりに溜まっている政務を片付ける。


 ひとつひとつ確認するも、無駄な物も多い。


 全部署から書類が上がってくるのだ。少ない訳が無い。


 皇帝陛下もこういった書類仕事はするが、フレデリックが前段階で殆ど処理してしまう。

 皇帝陛下までいくものはどうしても、と言う物だけである。

 その分外交や上層部での話し合いなどといったものをこなしているので、皇帝陛下も暇では無い。

 むしろこの皇宮で暇そうなのは、弟であるマクシミリアンだけである。




 淡々と政務をこなしていっていると、トントンとノックの音がする。

 入室を促すと、そこにはアレクセイが立っていた。

「殿下。ギルドから報告書が上がってきています。」

「ギルドから報告書?」

 何度もやり直しをしている中で、ギルドからの報告書がこのタイミングで来ることは無かったと記憶している。


「はい。どうやら新たなSランク冒険者が誕生されたようで。」

「新たなSランク冒険者?」

 封筒に入ったままのギルドからの書類を受け取り!ペーパーナイフで開ける。


(過去全てに置いて、Sランク冒険者になった者の話など聞いたことは無かった。一体誰だ?)

 書類を確認すると同時に、ビシッと固まってしまう。

 叫ばなかったのは奇跡!と言っても良い程驚愕する。


「どうかなさいましたか?殿下。」

 アレクセイの言葉が聞こえないかのように、隅から隅まで真剣に書類を確認する。

「・・・・・いや、何でもない。

 今日はもう上がってくれ。後は一人でやる。」

 仕事の後はマグリットの報告もある。一人の方が都合が良い。

 違和感があるものの、自身の主の命である。アレクセイは礼をして執務室を出て行く。




「マグリットと言う名前の女性がSランク冒険者??

 一体どういう事だ?」


 素性も顔も明かせないものの実力は折り紙付き。

 ダンジョンをたった一人で地下五十階層攻略。その際にアラクネを倒すし、秘宝もかつて無いほど大きい。

 しかも踏破に掛かった時間はたったの二日。


 書類を読めば読む程、信じられない功績である。

 別人ではないのかと疑うも、ギルドマスターから素性に関してはどうしても教えてはもらえなかったものの、フレデリック殿下とは知り合いではないか、との記述がある。


 これ程の強者を放置するのは不安要素にも成り得る事と、ここまでの逸材を手放すのは得策では無い、とも書いてある。


 フレデリックの知り合いに、マグリットという名の者など一人しかいない。

 しかもこの書類を送ってきたギルドマスターは、マグリットが書類を送ってきた時のギルドマスターなのも間違い無い。


 つまりはやはりフレデリックが知る、あのマグリットなのだろう。


 フレデリックがどう思おうとも、あくまでこの書類は報告書なのである。危ないから辞めさせろと簡単に言える物では無い。

 しかもすでにこうなっているという事は、マグリットも了承済みなのであろう。


 皇族の権威を使えば止める事も出来るだろうが、止める権利はフレデリックには無い。

 マグリットとの関係はどうあっても、弟の婚約者と婚約者の兄でしかないのだ。

 協力関係は持っているが、マグリットのしたい事を止めるのは何だか違う。


 グダグダと色んな事を考えるも、マグリットが死ぬ事を回避して帝国が滅びないようにする、と決めてはいるが他の落とし所を考えている訳では無い。


 つまりはマグリットが滅びを回避後、冒険者としてやって行きたいと言たところでフレデリック的には問題が無い、というか止める権利が無いのだ。

 ただそれをマグリットの周りに居る公爵家の者達が良しとするかはわからないが。


「皇后陛下になるつもりは、やはり無いんだろうか。」

 広い執務室に、フレデリックの声が小さく響く。


 皇帝陛下がマグリットを皇后にと望まれているのは当然知っている。ただあそこまで、まるで執着でもするかのようにマグリットのみを押している理由は知らない。

 理由を知るのは、皇帝陛下だけ。


 理由がハッキリしていないからこそ、マクシミリアンを嫌っているマグリットは反発する。

 帝国のためと支える事の出来る聡明な淑女は、決してマグリットだけではないのだ。

 他の公爵家にだって年頃の令嬢はいるし、むしろそれどころかどの貴族も家の為、自身の娘を皇后陛下にしたいと虎視眈々と狙っている。


 なのに皇帝陛下は、マグリットに固執する。

 あの二人が結婚するなんて、想像上でさえ上手くいく気がしない。

 皇帝陛下だって二人の不仲を知っている筈なのだ。



 しかし皇帝陛下の命は絶対。

 覆せるような手札も無い。

 それでもマグリットが、もし、皇后陛下以外の道を歩めるとしたら。

 それをフレデリックが此処で危険だからと、Sランク昇格を却下してしまったら冒険者というひとつの道を閉ざしてしまいかねない。それはフレデリックとて吝かでは無いのだ。


 つまりこの案件は、皇帝陛下まで上げる事は出来ない。

 実際、ギルドからの報告はフレデリックまでで大体は処理される。


 フレデリックはマグリットへの負い目からか、余り強くものは言えないし、マグリットはそれに勘づいているのではないかと思う。

 だからこそこうしてSランクなんてものに、なってしまったのだろう。


 本当のところは皇宮に報告が行く事を黙っていた、ギルドマスターに騙されただけなのだが。




「ってかそもそも公爵令嬢がSランクって。」

 苦笑が漏れる。

 ギルドマスターの言う通り素性の保証はしてやれるし、これからする事に支障がなければ問題はないかと、決済印を押しサインする。


 しかし新たなSランクとしてマグリットの名が広がるのは困る。幸い二つ名というものもある。

 広めるのならそちらにしてもらうよう要望は出さないとマズイ。名前から推測されても困るのだ。




「二つ名ねぇ・・・・・・」





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