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〜sideフレデリック 残り半年

 

 毎日毎日やる事が多い。

 何度もやり直しをしてるからこそ仕事の効率は良くなった。それでもしないといけない事、しなければならない事は変わらない。

 むしろ効率が良くなった分、手が回らなかった事までやるせいか、むしろどんどんと忙しくなる。


 そしてやり直しを繰り返してはいるが、何故か毎回毎回同じ時期、同じ日、同じ時間に、同じ出来事が起こるとは限らない。


 つまりその度に対処さえも変わってくるから、益々時間が足りなくなる。


 しかも今回はマグリットの断罪を回避すべく、学園の教師としての仕事さえある。


 適当な仕事は出来ない。皇族だからと誰も彼もが受け入れてくれる訳では無いのだ。


 貴族を教える教師も又貴族。しかも偏屈な者も多い。


 少しのミスでも「これだから皇子が教師などやるべきでは無い。」と聞こえるように陰口を叩かれる。

 それを回避するにはやはりミスなど出来ないと言う訳で。むしろそれ以上に皇子としての矜持が俺にだってある。誰にも付け入る隙は与えるつもりもない。


 つまりは毎日、自身の政務に弟のマクシミリアンの政務、そして皇宮の管理、教師としての仕事。

 場合によっては父である皇帝陛下の政務までこなし、帝都の管理もする。

 自分がもう一人居れば、と思う事も少なくない。


 マクシミリアン自身がやる事をやってさえくれれば、もう少し手が空くのだが、それさえも期待出来ない。

 むしろマクシミリアンが政務に手を出したら、それはそれで仕事が増えそうだ。

 あいつは本当に何も出来ない。


 というか、やり直しの時を顧みても政務をやり始めたら、恐らく自身の為だけに金を使い続けるのは火を見るよりも明らかで。

 そんな奴に政務を任せる訳にはいかない。


 だからこそ、あのマグリットに協力を願ったのだから。



 正直、マグリットに対して何も思わない訳ではない。


 皇帝陛下である父も、皇妃殿下である母も親としての愛情は俺にはくれなかった。マクシミリアンも同じ様な感じではあったが、それでもマクシミリアンはまだ母である皇后陛下に甘やかされて育てられたのは間違いない。


 自分達兄弟には与えられなかった皇帝陛下からの親としての愛を、一身に受けた他人の子。


 もう自分は幼い子供ではないとは言え、複雑な感情を持っていたのは否めない。子供の頃は何故マグリットだけが甘やかされるのかと恨んだ事もある。

 それをいまだに引き摺り続けているのがマクシミリアンだ。


 まぁ、それ以外にも理由はあるだろうが。


 自分以上に目立つ人間は好きでは無いようだし。だからこそ俺自身もマクシミリアンには嫌われている自覚もある。


 俺は俺で何年分もやり直しをしているのもあってか、自分が額面通りの年齢とは言えないのもあり、親に対しての恋慕やマグリットに対しての嫉妬は風化したのか、何度も父が死ぬのを看取って何の感情も抱かなくなったのかなんなのか、いつからかマグリットに対して負の感情は無くなった。


 それでも何度も死ぬのを知ってて止めなかったのは、幼い頃の自分がやはり心の中にでも残っているのか・・・

 マグリットが死ぬ事が悪手だとはわかっていたのに、本気でマクシミリアンと敵対する気はなかった。

 マクシミリアンと表立って争うとなると、皇位継承が揺らいでしまう。

 実際貴族も一枚岩では無い。第一皇子派というのも俺の意思関係無しに居るのだ。

 やはり俺は自分勝手だな、と自覚する。俺は皇帝陛下にはなりたくない。


 それにマグリットが死ぬ時は、父である皇帝陛下が死の淵にある為、政務が劇的に忙しくなる時期でもある。

 つまりは純粋に忙しいのも、理由の一つなのかもしれない。




 それにしたってマグリットのやつ、全然連絡を寄越さないんだが定期報告をするつもりは無いのか。


 気になるなら自分から連絡しても良い筈なんだが、俺から伝えなければいけない事が特に無くて連絡を躊躇してしまう。

 用事さえあれば気にはしないんだが・・・


 マグリットが出て行った初日に書類が届いた以降、全く連絡が無い。それはもう本当にやるべき事をやってるのか疑う位に連絡が無い。

 連絡を取り合う様な仲では無いのはわかっているが、今回に関しては違うだろと思っているのは俺だけなのか。


 マグリットが淡白すぎてイライラ、いやモヤモヤする。


 生きているのはわかる。居場所までは特定出来ないがこの俺とマグリットだけが持っている念話魔導具はお互いを繋げる役目があるだけあって、生きているか死んでいるかくらいは把握出来ようになっている。

 だからこそ生きているのはわかる。


 でも逆をいえばそれだけしかわからない。大怪我をしてようとも、病気で倒れていようとも、それこそ息はあれどという状態でも生きている、という事だけしかわからない。


 心配・・・なのだろうか。

 マグリットを恨む気持ちは無くなったが、正直マグリットに向ける感情はどの様なものが適切なのか図りかねている。


 今回より前は関わりが必要最低限で極少数であった為、悩む必要さえもなかったが、弟の婚約者という立場のマグリットとの接し方がわからない。教師と生徒としての距離感もマグリットが相手となると難しくなる。協力者とは言ったが今現状それに対して行動しているのはマグリットだけ。

 俺はただ毎日マクシミリアンに遠回しな小言を言うくらいしか出来ていない。


 正直言うとやるせない。やはり俺一人では同じ事を繰り返すのだろうと言う事がよくわかる。

 マグリットの様な行動力があれば何か違ったのだろうか。

 俺には政務を、今ある全てを投げ出して行動する事は結局は出来やしないのだ。

 だからこそ行動を起こしてくれそうな、事情の知っているマグリットが俺には必要だった。



 グダグダ考えたって仕方無いのもわかっているが、何故マグリットから連絡は無いんだ。

 公爵家の事とか、気になることはないんだろうか?


 もしかしたらこのまま戻っては来ないのではないか、と思わない事も無い。マグリットにとってはもしかするとその方が良いのかもしれない。


 俺が何とかマクシミリアンを何とかして止めて、このままマグリットが死ななければ、マグリットはそのまま幸せになれるのではないのかとも考える。


 何度も何度も死んでは生き返ってを繰り返しているマグリットには皇后陛下にならないといけない未来からも、貴族社会からも逃げる資格も俺はあると思う。

 当然幸せになる権利もある。



 何故あそこまでマクシミリアンがマグリットを、目の敵にする様な事になったのか、マクシミリアンの意思なのか、それともあの男爵令嬢が関わっているのか。


 今はまだ考えてもわからない。





 ジェシカ=ウェルズリー男爵令嬢が入学してくるまで後約半年ーーーー





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