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取り敢えず戦います

 


 誰も居ない森の中を迷いも無く歩き続ける。


 周りを警戒しながらも冒険者として、周りの薬草を積んだり食糧になりそうな獲物を狩ったりする。


 行動が転移ばかりになってしまうと、こう言う事が出来なくなるので歩く時には必ずやる様にしている。

 なので初めに帝都からメリアの街へは走って向かったのだ。


 基本的には転移魔法は行った事がある場所にしか行けない。

 しかし何度もやり直しをしている為に比較的色んなところに行ける様になっているので少し遠くても問題は無い。


 今回のこの依頼も近くまでは来た事があったので、そこからこうして歩いて向かっているのだ。


 探索魔法で目的は何処かは分かっているが、採取もしながらなので直接は向かわない。

 しかしそろそろ向こうがこちらに気付くかもしれない。


(さて、これ程の大物は本当久しぶりね。)

 腰に差している刀に無意識に触れる。


 まだまだ距離はあるが相手も大物。


 ーーーーーこちらに気付いた!!!



 バサリと大きな羽音が聞こえたと思ったら視界が青で塗り潰される。


「ぎゃおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 先手必勝とばかりに叫ぶとそのまま口を開きブリザード並みの冷気のブレスを吐き出す。


(速いわね。)

 しかしそこはマグリット。

 即座に発動まで時間が掛かる筈の転移魔法でブレスから逃れる。



 此処は帝都どころか人さえも中々こない秘境、と言うほどでも無いがわざわざくるは必要の無い辺境の森である。

 普通ならわざわざこんな所に居るドラゴンを刺激してまで退治する事はしないが、お偉いさんの貴族からの依頼なんだそうだ。


 流石のギルドも高貴族からの依頼を断るにはそれ相応の理由がいる。


 ただ依頼を受けただけのマグリットには理由はわからない。

 が、ドラゴンの素材を出来るだけ持ち帰って欲しいと聞けば、理由は想像もつく。


 ドラゴンは強い。


 だからこそ乱獲は基本的には起こらない。



 しかしながらそこは大人の事情という奴だ。

 毎回毎回は貴族様からの依頼は断れはしないので、そこは妥協案としてギルドの方からもいずれは害になりそうなドラゴンや、他の害ある高級素材になりそうな高ランカーが戦わなければならない魔物等の情報を流していたりする。


 今回のこのドラゴンもそういった類いだろう事は予想出来る。




(素材、素材ねぇ・・・)

 面倒だな、と思った。


 ただ倒すだけなら気にしない。

 でも素材となると話は変わる。やはり魔物によって必要である素材の場所は変わる為、さてどこが必要だったかな、と考える。




「ドラゴンは何処もかしこも使い道あるからなー。」

 ーーーーーそう言って笑ったのは誰だったか。




 薬草採取や食料としての魔物や動物退治は然程嫌では無いのだが、こういう素材集めとなると何だかやる気が出ない。

 本当に必要な人物に渡る事が少ないからだろうか。


 ドラゴン素材の装備品はそれはもう馬鹿みたいに高い。

 そんな物を一塊の冒険者に買える訳もなく、難敵と戦う様な高ランカーや騎士等に行き渡る事さえも殆ど無い。

 結局は高位貴族の見栄として、本当に必要な戦うための防具として使われる事は無く、戦ったりする訳では無い装備品を必要としない筈の貴族の家を飾るオブジェと化のだ。


 まぁ必ずしもそうでは無い事も知っているのだが。


(何だかなぁ。)

 そう思ってしまうのも致し方ないのかもしれない。




 流石に真面目にしないと、とドラゴンを見上げる。


 考え事をしていてもドラゴンからの攻撃は難なくかわしてはいた。

 かわしていたからこそ森の中、周りの木々達はドラゴンが吐くブリザードで凍りつき白くなっている。


 気温調整が出来るコートを着ているが流石にコートから出ている手足が冷たくなってきている。


(やっぱり部分部分切るのが良いかしら?)

 そう思うと同時に飛び上がる。

 そしてそのまま魔力付与している刀で、ドラゴンの片方の翼をスパッと音と共に一閃。

 まるで豆腐を切るかの様に綺麗な切り口で翼が取れる。


 普通なら有り得ない。ドラゴンはそれこそ装備にする程丈夫なのである。

 だこらこそ加工にも時間もお金も掛かるのだが。


 ドラゴンは怒って「ギャオギャオ」騒いでいるがマグリットは無視し、そのまま反対の翼も切り落とす。


(やっぱり素材がいるとなると、魔法では駄目よね。)

 マグリットは魔法も多才で様々な魔法を使うが、やはり基本は剣士でありたいと思っている。その為こうして戦うのは楽しいのである。


 ドラゴンはといえば、両方の翼を切られて痛そうにのたうち回っている。その上、ブレスも方向性を無視して当たり散らす様に吐き続けている。

 その為、辺りの気温はどんどんと低くなる。


 しかしマグリットはそれを見てフフフと笑う。

 ドラゴンは再生能力もある為、翼を切ったとしても時間が経てば元通りとなる。

 しかも現状痛みもあり、当たり構わずブレスを吐き続けるドラゴンに近付く術もない筈。

 早めに倒さなければならないというのに、マグリットは笑う。

 それはもう新しいオモチャを貰った子供の様に。


 刀を構え直す。


 刀に魔力付与しているが、更にはそこに属性付与も付け加える。

 やはりここは氷系ドラゴン。

 炎で焼き切る。


 刀身が紅くなった瞬間、マグリットは飛び上がる。

 ドラゴンは未だにブリザードを吐き続けるも、マグリットには当たらない。

 刀を一振りするだけでブレスは四散する。

 そしてそのままドラゴンの首元に近付く。


(あそこだけは切ってはダメね。)

 ドラゴンには顎の下、一枚だけ逆に生えている鱗がある。

 そこは逆鱗と呼ばれ、ドラゴン一体に対して一枚だけの為希少も希少部位。


 この逆鱗を素材として出来る武器は最高級の物となる。


 出来うる限りの素材、という話であったが逆鱗を持っていかないとなると、場合によっては何だかんだと理由を付けて依頼不達成を突きつけられる可能性すらある。


 顎よりも下の首元を狙って斬り付ける。

 翼部分よりも抵抗を感じるも属性付与までしたお陰か、比較的楽に切れる。


 再生能力の高いドラゴンも流石に首を落とされては生きてはいけない。

 そのまま事切れる。




 マグリットは絶息したドラゴンを何とはなしに眺める。








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