取り敢えずCランクになりました
お詫びのつもりが何なのか、依頼完了が確認出来るまではランクは上がらない筈が、いざ依頼を受けてみるとCランクまでの依頼が受けれる様になっていた。
それに対して受付嬢から不審な視線を貰ったが、あちらも仕事。
突っ込んで聞いてくる事はなかった。
そして二日後。
受付嬢からギルドマスターが待っています、と再度階段を登る様に言われる。
が、登りたくない。
目線で抗議するも受付嬢はどうしようも出来ないのか、オロオロするばかりである。
でもだからって自分の気持ちを押さえつけてまで、わざわざギルドマスターに会う理由さえもない。
どうしようかと悩むも誰も解決してくれない現状に、溜息が出てしまうのは止められない。
「ギルドマスターに伝えてもらえる?
会いたかったら貴方が来たら?と」
周りの人達には聞こえない様に、小さな声で受付嬢にだけ聞こえる様に伝える。
周りに聞こえたりなんかすると、不評を買うのは目に見える。
これは依頼は受けれないな、とギルドから出て行く。
受付嬢が止めるのを背中に聞きながら。
さて、思わぬポッカリと空いた時間をどうしようかと街をブラブラするもさしてやりたい事はない。
むしろもうこの街から出たい。
一分一秒急いでいる訳ではないが暇でもない。
もしかしたらやりたい事をやるのに、時間が足りなくなるかもしれない。なので、基本的には急いでいるのだ。
それでも今回こんな事になる事は予想出来た事ではあったが、チマチマと依頼を受けてCランクまで上げる方が手間だと思ったからである。
あぁ、素直にギルドマスターに会えばそのまま街を出れたな、とも思うがそれでも素直にホイホイと会うには抵抗もあった。
単に嫌がらせの様なものかもしれない、と独り言つ。
お腹も空いてないしな、と露店を見るも矢張り何かを食べたいという欲求は湧かない。
他にする事は、と考えても旅支度は一番最初にギルドに寄る前には済ましてしまったので本当にやる事が無い。
やっぱり素直に話を聞くべきかと、ギルドに足を向けようとした所でその必要はない事に気付く。
「よぉ!」
こちらに向かってくるギルドマスターの気配がしたからだ。
「遅いお着きですこと。」
取り敢えずと、話を聞かれるべきではないので人気の無い町外れへと足を向ける。
「確認は取れた。
結局どうしたかはハッキリわからなかったがな。
確かにフレデリック皇子殿下の元に書類は届いていたし、こちらと向こうでの意思疎通も問題無かった。」
人気のない緑に囲まれた椅子も無いその場所でそのまま芝生の上に座ると、マグリットにも隣に座る様に促す。
貴族と言えど冒険者もしてた為、地面に座り込む事に抵抗は無い。
無いが、ギルドマスターの真横に座るには抵抗はあるので少し離れた場所に同じように座り込む。
それに対しギルドマスターは異論は無いようで、特に突っ込んではこなかった。
「それは良かったです。
ではこれで依頼完了ですね。」
「空間魔法だけでなくフレデリック皇子殿下との意思疎通、そして書類の移送等の想像だにしない事ばかりで、正直お前の扱いに困ってるんだが。」
そうは言っても意思疎通に関してはフレデリックの魔道具のお陰なので、マグリットの魔法は関係ない。
「特にどうもしなくて結構ですわ。
冒険者としてやっていくのがやりたい事ではありませんので。
私にはするべき事が別であります。むしろ私のことはどうぞ捨て置いて下さいませ。」
そうは言ってもギルドとしてはこんな逸材を捨て置くなんて事が出来るわけもなく、それ以上にこのどこまで実力があるかも悟らせもさせない人物を野に放っては大丈夫なのかという疑問さえ湧く。
しかしながらこのギルドマスター。勘が働くのかなんなのか、それとも実は面倒くさいのか。
一応考える素振りを見せてはいるが、関わらないのが一番なのかとそう感じている。
(まぁフレデリック皇子殿下と繋がっている様な方に監視の目を付けるのもな。)
所作や言葉遣い、フレデリックから聞いたマグリットへの信頼等で、確実にマグリットが貴族だろうと当然のように気付いている。
マクシミリアンなら兎も角、フレデリックと繋がりがあるような人物が、悪意あると思えないのが一番かもしれない。
「仕方ないな。
お前の言う通りにしてやる。
ただし!」
なかなかに大きい声で叫ぶ。
「ただし?」
煩いな、と思いつつも答えを促す。
「俺の手伝いをする事!!」
えっ?面倒くさ!と顔に出てしまう。
「そこまで嫌そうな顔をするもんじゃない!
あくまでもお願いの様な物だと思ってくれていい。
お前の都合でいいし、暇なら、って感じでいいから。」
怪しい人物であれフレデリックとの縁もあり、その上実力もあるであろう人物との邂逅をこれっきりにしては勿体ない。
「そんなに私を手放したくないのですか?」
冗談まじりにクスクス笑ってギルドマスターを見やる。
「そりゃそうだろ。
お前は特別良い女だからな。」




