取り敢えずギルドマスターに会います
依頼用の掲示板の前に立ち、今受けれる採取依頼全て見繕う。
(想像より採取依頼があって良かったわ。)
その依頼書を持ち先程ギルドの説明を受けた受付まで持って行く。
「早速ご依頼を受けるんでね!
あら?こんなに受けて大丈夫ですか?」
受付嬢がそう言うくらいには量がある。
「はい。大丈夫です。」
そう言いながらマグリットは空間魔法で依頼書全ての薬草を全て取り出す。
「これで依頼完了ですので。」
受付嬢はマグリットと出された薬草を交互に見て目をパチクリさせる。
「え?」
ポツリと言葉が溢れたようだ。
しかしながらマグリットはこれを敢えて狙ってやった。
魔物の素材はナイフが無かった為どうしようもなかったが、薬草は帝都からこのメリアの街に来るまでに、必要そうなのを適度に取りながら来たのだ。
あまり長々とランク上げをしている時間は無い。
生活費を稼ぐ為Cランク程で良いかとは思っているが、EやFランクとなると冒険者ではなくても出来る依頼もあり、あまり依頼料が高くない。
そうなると早急にランクを上げる必要があるのだ。
「依頼完了の処理をお願いします。」
「あ、はい。」
丁寧にギルドの説明をしてもらったのに、何だか悪い気がする。
「もうEランクになりますね・・・
というかむしろ・・・・・・
すみません、少しお時間よろしいですか?」
まさか採取依頼をこなしただけで、こんな事を言われるとは思わず少し驚く。
「えーと、一応大丈夫です。」
そう答えるも、暇ではない。
一分一秒を争う程は急いではいないが。
何となくは伝わったのか、あまりお待たせしません、とそそくさと受付側にある階段を登っていく。
(あの場所にある階段と言う事は・・・・・・)
言葉通り受付嬢はパタパタとすぐ戻ってきた。
「あまりお時間を取らせるつもりはございません。
ですが、少しご相談があるのでこちらへ来てもらえませんか?」
これはきっと断れないやつだな、と感じる。
そのまま促される様に先程受付嬢が登って行った階段を、今度は二人で登る。
(だってここは・・・・・・)
「おう!待ってたぞ!!」
ギルドマスターの部屋だからだ。
「それでお話とは?」
連れてこられてそのまま席に座らされた。
受付嬢は受付の仕事があるからとすぐに戻って行ったが、次に別の女性がお茶を淹れたカップをマグリットとギルドマスターの前に置いてそのまま出て行く。
まさかのギルドマスターとの二人っきり。
流石に如何なものかと、とも思うがそこは何も言えない。
それ程ギルド員とギルドマスターとは格差がある。
「空間魔法が使えると聞いたが?」
マグリットの問いに答える前に逆に問い掛けられる。
(しまった。そっちで引っかかってしまったのね。)
空間魔法はこの世界で使える人物は、実はかなり少ない。
しかしながら過去のやり直しではギルドで普通に使っていた事もあり、何の気無しに使ってしまった。
過去ではランクが上がる事に抵抗があった訳でもないし、しがらみなんかも無かった。
だからこそ空間魔法が使えると気付かれたところで、然程不利益は無かった。
しかしながら今回は違う。
ギルドに登録して適度な生活費は稼ぐが、ギルド員として所属したい訳では無いのだ。
そうなってしまうと身動きが取れなくなってしまう。
(見られたからには隠すのは逆に失策かしら。
流石に誤魔化す事は出来ないでしょうし。)
実際ギルドマスターからは誤魔化しの効かない圧を感じる。
「使えるとして?何か?」
「やってもらいたい仕事がある。」
正直空間魔法を使えるからと言ってそこまででは無いと感じていた。
攻撃魔法とかでは無いので、魔力が多いとかの判断材料にはなり得るが、イコール強いでは無いからだ。
「仕事?
こんなギルドに登録したばかりの私に?」
ギルドマスター直々の依頼だが、流石に信用問題的にそれはどうかと思う。
「他に居ないんだ。
急ぎなんだが他の空間魔法を使える者が捕まらない。」
確かにそれはあるかもしれない。
空間魔法を使える人間は少ない上に、必ずしもギルドに登録している訳ではない。
又、空間魔法を使える人物は総じて魔力が多く魔力の扱いに長けており、登録している者達はだいたいが高ランカーとなるので依頼が立て込んでいるのだろう事は想像に固く無い。
「・・・・・・気は進みませんが、一応お話だけでもお伺いします。」
溜息を飲み込むもギルドマスターにはバレている様だった。
「普通は俺が直接こんな話をすればギルド員なら大体が喜んでくれるんだけどな。」
「そうでしょうね。」
特に興味も無く、出されたお茶を飲む。
「随分と気品のある奴だな。」
観察されている様で落ち着かない。
「あら、それはありがとうございます。」
しかしながら、ここで焦ってしまうと疾しい事があると言っている様なものだ。
平静を装う。
「まぁ、素性を明かしたい訳ではないからな。
本題に入ろう。」
お互いにとってそれが良い。
マグリットが貴族だとバレたところで双方に得など無いのだから。




