取り敢えずメリアに着きました
比較的大きな街に着いた。
帝都を出て馬車であれば、二日程かかる距離にあるメリアの街である。
つまりはたった一晩でマグリットはその距離を走ってしまった事になる。
此処は帝都に近いこともあり、様々な物が揃っており豊かな街である。
マグリットが求めている宝石を売る場所も服や武器を手に入れる場所、そして生活の糧となるギルドもある。
(この街は久しぶりね。
ウェルズリー男爵領がこっち方面で良かったわ。
この街には良い武器屋があるのよね。)
むしろ違う方面にあったとしても寄り道して此方に来るくらいには、この街にある武器が欲しかったりする。
実際手に馴染む武器と言うのは重要である。
この街までは魔物や魔獣に出会っても魔法で撃退してきたが、やはり一人で旅をするとなると武器が欲しい。
魔法となると後衛職となる為、近付かれると対応できなくなる場合がある。
それに魔力も多いとは言え、無くならない訳では無い。
そして倒した魔物を解体するにもナイフ等は要る訳で、まだ武器らしい武器を持っていないマグリットは泣く泣く倒した魔物達を跡形もなく焼いてきた。
流石に他の魔物を呼び寄せてしまう為、倒しっぱなしでそのまま放置する訳にもいかない。
冒険者としてのマナーである。
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持っていた宝石も売り、服も冒険者が御用達の場所で調達した。
魔力もあり魔法学者をしてた事もあり魔法は得意ではあるが、基本的には魔法使いというよりはマグリットは剣士である。
補助的に魔法を使うので、どちらかと言うと魔法剣士になるのかもしれない。
なので服装は剣士の物である。
利き腕とは逆の肩の左だけに肩当てがあり、そこから濃紺色のマント。
胸にも大きくは無いが肩当てと同色の胸当て。
短パンスタイルにタイツ。
腰あたりには剣を下げる事ができる様に帯刀ベルトを巻いている。
足元はしっかりとしたロングブーツであまり人数は居ないが、スピードを主体とする女性剣士にありがちな格好である。
「こう言う格好も久しぶりね。」
貴族としての義務が嫌では無いし逃げ出したいと思っている訳でも無いが、それでも権力のある立場から離れてこうして自由になるのもそれはそれで気兼ねなく居れるので楽しい。
「さて、今回はどんな武器を持とうかしら?
やっぱり使い慣れた剣の方が安全かしら?
でも別の時に使った銃でも良いかしら?
それとも今までに使った事のない武器も捨て難いわね。」
側から見ても楽しそうに、ホクホク顔で武器屋への道を歩く。
カランと来客を告げる鐘がなる。
中に入ると奥に居るのか、カウンターには人は居なかった。
店内を見渡し、大きく息を吸う。
武器屋独特の金属の匂いがする。
公爵家から持ってきた宝石は想像よりも高く売れたので、予算には余裕がある。
なので先ずは必ずは必要となる大振りのナイフを見る。
そして迷いもせず一つのナイフを手に取る。
(これは・・・・・・)
何度やり直しをしても何度同じ様に行動しても全く同じ事が起こるとは限らなかった。
数時間いや、数十分でさえ違えば結果は変わる事も多かった。
これもその一つ。
このナイフは今まで何度やり直しても、もう一度手にする事は出来なかった。
実を言うと名剣と言われる程の物ではないし、然程高い物ではない。
それでも初めて冒険者となった時に手にした物であった。
現実を見れば他の物が良いのはわかっているが、それでもここでこれを買わない選択をするには惜しかった。
明日にでもこの店に来たとして、このナイフがあるとは限らないのだから。
(余裕もあるし験担ぎ的に持ってても良いかもしれない。)
そう思う程には愛着がある。
そうなると普段使いとして別のナイフ、それにメインとなる武器が要る事になる。
正直なところ剣はやり直しの世界では何度か使った。
だからこそ手にも馴染む、が違う武器も使ってみたい。
でも今回はずっと戦いに身を置く訳では無い。
そして新しく使い慣れてもいない物を、実践で使える様にするには些か時間が勿体無い。
ナイフと武器の手入れ道具等の必要な物を見繕ってから、再度店内を見渡す。
すると奥から店の店員の様な人物が出てくる。
「あら?お客様なんて珍しいわね。」
(あぁ、なんだか懐かしい。)
マグリットは込み上げる涙を堪える。
実は此処の店主は女性である。
この帝国は他の国以上に、男尊女卑の風習が強く、女というだけで卑下される事は日常茶飯である。
つまりはこの店は本当に良い物も多いのだが、女が経営してると言うだけで客が居ないのだ。
それでも名高い冒険者達にも顧客がいるらしいので、こうしてやっていけるらしいのだが。
「冒険者かしら?
今日はどのようなご用事で?」
たおやかな女性で武器屋にいなければどこかの御令嬢と見まごうばかりであるが、彼女武器屋の経営だけでなく此処の武器を全て自分で作る武器職人でもある。
「はい。武器が欲しくて。
これから冒険者としてギルドに登録する前なんです。」
この店の女店主に対し懐かしさが自身にあろうとも、相手は全く覚えてはいない。
そんな寂しさにいつからか慣れてしまった。




