〜sideフレデリック 朝の時間
何とかフレデリックは納得し、再度マグリットは街へと歩き出した様だった。
フレデリックに言わしてみれば納得している訳ではないが、今更公爵家に戻る事など出来はしないし、もしそうしてしまうと監視の目が強くなり抜け出す事が困難になるのは想像に固くない。
マグリットは要らないとは言ったが、金策に奔走しないといけないというのも協力者としては不満だが、今更届けに行くことも出来ないため不満を呑み込みざるを得なかった。
今後は相談をする様にとマグリットに約束させるも、信用ならないと感じている。
(あんなに自由奔放な女だったか?)
そう思うが、マグリットの事を然程知らない事に気付く。
溜息を吐き学園の教師としての職務を全うするための用意を進める。
本音を言えば毎日やる事で追われ、寝る時間を削っているのだ。
早朝からマグリット失踪の報が入り、いつもより睡眠時間が少なくなっているが、それでも手を抜く事は出来はしない。
(ったく!マグリットと連携を取りやすくするために教師になったと言うのに当の本人が居ないとはやってられん!)
それでも今更教師辞めるなど、言えやしない。
どちらにしろ来年からは教師として居なければいけないのだから、と諦める。
「この予算案ではこのまま通す事は出来ないと大臣に伝えておけ。
こちらは却下だ。
それと言っていた橋の修繕の件は一度視察してくる。」
皇族としての政務を朝一から指示を出し、その間にも服を着替え髪を整える。
教師は皇族としての仕事では無いとは言え、殿下としてだらしない身嗜みは出来はしない。
見られるのも仕事の一つである。
忙しいからと機密事項が載ってる書類を学園に持って行き処理する事は出来やしない。
その為朝早くから夜遅くまで、政務に追われる。
学園で出来る事はやるが、全く時間が足りない。
(マクシミリアンが自分の分の政務をしてくれれば少しは寝れるんだが・・・)
期待は出来ないが、愚痴は言いたい。
本人に文句を言えれば少しは楽になれるかと考えるも、暖簾に腕押し。
そもそも貴族としての義務を放棄している様な人物なので、何故俺がそんなものをしなければならないのだと、文句が返ってくるだろう事は想像しうる事象である。
(皇帝陛下にも会いに行かないといけないな。)
マグリットにお願いされた訳では無いが、マグリット捜索をしてもらってはフレデリックとしても困るのだ。
何だかんだと見つからずにいるだろうとは思うが念の為。
恐らくは何を言ったところで、皇帝陛下がマグリットを探さないなんて事は無いだろうが。
「陛下へ謁見の先触れを出しておいてくれ。
早めに話したい事がある。」
フレデリックは自身の専属秘書の様な役割も担ってくれる側近のアレクセイに様々な指示を出しながら、皇宮の中を歩き回りながら仕事を片付けて行く。
フレデリック自身で書類を届かないといけない場合もある為、ずっと執務室に居る訳では無い。毎日広い皇宮の中を行ったり来たりしながら仕事を片付けていく。
マクシミリアンは本当に何もしない。
過去何度もやり直している中で、当然マクシミリアンを更生の道を示した事は一度や二度では無い。
しかしどれだけ言ったところで何も変わらない。
二人の関係性もあるのかマクシミリアンはフレデリックの話を全くもって聞きはしない。
確かに仲良し兄弟とは言えないフレデリックの言葉を、素直に聞く程出来た人間では無いのだが。
ジェシカ=ウェルズリー男爵令嬢が唆した事でそういう人間になってしまったのであれば変わる余地もあったのかもしれないが、マクシミリアンと言う人間はとことん自分勝手で、かつ人の話を聞かない我儘で甘ったれな人物なのである。
その為皇族としても貴族としても身に付けなければいけない物全て等閑で、どの過去においても学園での成績さえも振るわなかったと聞かされている。
それでも本人にやる気があればフォローする人物は居るにも関わらず、それさえも気に入らないのだ。
長子であるフレデリックは皇妃の子と言うだけで厳しく躾けられた。
未来の皇帝陛下になるべく皇后との子であるマクシミリアンは国を治めていく人物としての教育を行わなければいけない事は誰しもがわかっていたが、マクシミリアンの母である皇后陛下がとことん甘やかしてしまった。
流石に皇后陛下に表立って苦言を言える人物はそうは居らず、マクシミリアンはそのまま育ってしまったのだ。
そういう立場に同情もするが、本人に本気でやる気があればどうとでもなった事だと思う。
誰もが甘やかしていた訳ではないのだから。
にも関わらず、フレデリックと比べられる事に、そしてマグリットが居ないと皇帝陛下になれないと思われている現状にいつも憤り、二人を邪険に扱う。
自業自得だというのに。
皇宮を見て回りながらも、部署毎に指示を出して行く。
「時間切れだ。
学園へと行く時間になってしまったな。
馬車は?」
教師をしているとは言え、皇族を一人で出勤させる訳にはいかないと説得されて馬車で通う事となった。
フレデリックは市井の視察も出来るからと、ギリギリまで他の教師の様に一人で通うと粘ったが受け入れられなかった。
「ご用意出来ております。
しかし何故教師などと・・・」
アレクセイは不満そうに顔を顰める。
「まだ言うか。
辞める気は無いんだ。もう言うな。」
フレデリックが教師をするに当たり、周りを説得して納得してもらうにはそこそこ面倒な事だった。
皇帝陛下もさることながら、この側近のアレクセイはどれだけフレデリックが忙しいのかをよく知った人物であるのだから。
「カンバーラント公爵家の御令嬢にお会いになられてから、殿下が何を考えているのかわかりかねます。」
それもそうであろう。
マグリットに会った日がやり直しの初日だったのだから。
事情の知らない者からしたら、いきなり今まで関わり合いにならなかったマグリットに会いに行き、そしてそのまま教師になると皇帝陛下にも学園側にもあっという間に許可を貰い、本当に教師になってしまうのだから、不自然極まりない。
ただアレクセイ以外にはフレデリックがマグリットに会いに行った事は知らない。
その為フレデリックが教師になった事、マグリットの失踪がフレデリックと関わりがある事、等を推測出来る者はアレクセイしか居ない。
「お前の事は信用してる。
時が来れば話そう。」
そんな風に言われればアレクセイは何も言えなくなってしまう。
「主人の御心のままに。」




