取り敢えず武器です
「ふーん?
何となくだけど、剣を使うのでは?」
やはり武器を作り、売るを全て自身で行うだけあってどう言う武器を使うのか判断する事が出来るらしい。
「そうなんですが、少し変わった物も使ってもみたくて。」
マグリットは再度キョロキョロと店内を見る。
「否定はしないけれど、冒険者となるなら使い慣れた物が生存率を上げるのよ?」
客だからと高い物を無理に売ったりしないのも、この女店主の良いところだ。
「それは、そうなんですが・・・
それでも違う物を使ってみたいと言うのも捨てきれなくて。」
剣は散々使ってきたし、何度も言うようにマグリットは生き続けたいと思っている訳ではないのだ。
つまり、やりたい事は我慢したく無いのが本音である。
貴族社会で過ごすとなると話は別だが。
「まぁ、それぞれ事情もあるものね。
あまりブチブチ言わないわ。
それでも前職の近距離武器を使う貴方が、いきなり槍のような中距離武器や、斧の様な重さが武器になるような物は流石に向いてはいないのではなくて?」
手短に置いてあるハルバードに触れながらも、困った様な顔を向けてくる。
「そうですね。
流石に身の丈に合わない物を使うつもりは御座いません。」
マグリットがそう言うと女主人はホッと安堵の表情で笑う。
「良かったわ。
私の武器を持って死んでしまうなんてやっぱり嫌だもの。
でもね、居るのよ。
小柄なのに斧のような重量のある武器を持ちたがったり、身長は無いのに凄く長い槍を使いたがったり。
突っぱねた所で相手はお客様だもの。
あまり強く言えなくて。
私のところで買わなかったとしても、他所で買えるしね。」
何人もそう言う人を見てきたのだろうか。もしかしたら死んでは欲しくなかった人が居たのかもしれない。
何だか寂しそうに微笑む。
「ごめんなさい。
普段はこんな事話したりしないのに。
貴方なら遠距離武器の銃や弓なんかは、扱えそうではあるけれど・・・」
チラリと全体の体格を見る。
「実は銃は使ってた事があるのです。」
「あぁ、やっぱりそうなのね。
何となくそんな気がしたのよ。」
女主人はお客様の武器を当てるのが得意なのだと笑う。
「なら銃ではなく弓にしてみる?
でも近距離武器をずっと使ってた貴女が弓って言うのは少し違うわよね?
銃もただ銃として使ってたのでは無いんじゃない?」
魔力は多そうだけど、そう女主人は呟く。
「はい。銃も使う剣士をしておりました。」
「・・・・・・・・・剣士ねぇ?」
胡乱げな顔をされる。
嘘では無いんです。とは思うも口にはしない。
「騎士を、していたんではなくて?」
まさかそこまで当てられるとは思わず、少し驚愕を顔に出してしまう。
「動きがただの冒険者の剣士とは違うわ。」
クスクスと笑われて、背を向けられる。
何かを取りに行ったようで、その様子を目で追いかける。
「正直そんなに若いのにそんな色んな職業を経験してるのを問い詰めてみたい気持ちもあるけど・・・」
そう言いながら手に一つの武器を持ってきて、それをマグリットに渡す。
「これは?」
剣・・・ではないのはわかる。
「刀、と言うものよ。
この辺りの物ではないのよ。
遠い異国の武器。」
近距離武器でありながらも、今までとは違う武器ではなくて?とそう言いながら抜いてみて、と促される。
剣士としてそして騎士として使ってきたロングソードとは又違った形状である。
ロングソードよりも細く、少し歪曲しているのがわかる。
でもそれ以上に違うのは刀身である。
「この辺りでよく使われるタイプの剣は、叩き斬るような物なんだけど。
その刀はね、斬る事に特化した物なの。」
そう言いながらマグリットが持っている鞘から抜いた刀の刀身に触れる。
「だから今までとは戦い方はガラッと変わってしまうと思う。
でも・・・」
女主人が言いかけている事がわかるような気がする。
「そうですね。
きっと私には此方の方が向いている様な気がします。」
剣士として騎士として、なかなかに強くなったと自負するが、この刀を使えば今まで以上に強くなれそうな気がする。
それ程、手に馴染む。
「良かったわ。
貴女に合いそうな物があって。」
その後必要な物全て買ってからその場で装備していく。
こうなるとより一層気が引き締まる。
「ありがとうございます。
また来ます。
フローラ子爵夫人。」
貴族の礼ではなく騎士としての礼をして女主人、いやフローラ子爵令嬢に挨拶をして店を出て行く。
「!!!???」
マグリットが出て行った扉を驚愕を露わにした表情で見るしかなかった。




