↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/126

取り敢えず家出します

 

 マグリットが提案した案をフレデリックは渋々ながらも、ジェシカ=ウェルズリー男爵令嬢が入学してくる迄の1年を無為に過ごすよりも、と納得してもらった。


 一旦話し合いを止めてマグリットは家へと戻り、もうすでに夜も深まった時分。

 マグリットは寝間着を着ずに、自分1人で着れる動き易く地味目のドレスを身に纏っている。

(さて、これからどうしましょうか。)

 どうしようと考えながらも、概ねの方向性は決まっているのでそれに向かってどう動くかが問題だ。


(いきなり居なくなって大捜索なんて事になったとしたら、目にも当てられない。

 出来れば居なくなった事が公になって欲しくはないんですが、流石に長くなればそうもいかないかしら。)



 家を出るにあたり公爵家から持ち出せる物となると、意外と無かったりする。


 市井でドレスなど着る機会も無いし、むしろそれを持ち出したところで邪魔なだけ。

 宝石類も多くなれば成る程、売った時に足がつく可能性が出てくる。

 やはり公爵令嬢が身に付ける物だけあり、この世に2つとない物ばかり。


 少しであればバレない可能性もあるだろうが、今回は1つだけ怪しまれずに売れる物を持って行く事にする。

 流石に何も持たずに出て行くとなると、生活を安定させるだけで時間が掛かってしまう。

 それは本意では無い。

 服をひとつとっても、市井に出れる様な物は持ってはいないのだから。


(フレデリック殿下が何とかして皇帝陛下を引き止めて捜索を遅らせてくれれば良いのですが。)

 そうは思うも、きっとそれは無理だと知っている。

 やり直しの世界で何度も何度も一人で生活して来た。今でこそ大体の事は出来るようになったが、普通の貴族令嬢が何の荷物も持たずに居なくなれば大騒ぎになるのは目に見えている。

 それが例えマグリットでなくても。

 どちらにせよ公爵家から居なくなったとしても運命なのか何なのか、必ずマクシミリアンが皇帝陛下となってから見つかる。

 逆を言えば大騒ぎになったとて、すぐには見つからないと言う事。

 恐らくは絶対ではないだろうが。


(ウェルズリー男爵の事と言えば、当たり障りの事しかわからないわね。)

 ウェルズリー男爵領はさほど広く無く、爵位の方も一代貴族。世襲無しの筈である。

(この公爵家で調べた所でさして変わった事は見つかるとも思えないわね。)

 それ程ウェルズリー男爵は末端の末端なのである。



(なら善は急げ。

 取り敢えず公爵家に居る必要は無い。)

 小さく笑い自室に付いているバルコニーに出る。


 ただ1つ。適当に売れそうな宝石だけ持って空を見上げる。


(このまま何も考えずに逃げれたら楽だろうけれど。)

 出来はしないが、考えずにはいられない。


 後ろを振り返り屋敷に向かって目礼する。




 そして3階のバルコニーから飛び降りる。


 マグリットは足に魔力を集め、音も無く静かに着地する。

 気配は抑えているが、ノクトの事だ。

 すぐに気づいてしまう。


 少し名残惜しい気もするが、追いつかれてしまう前に少しでも遠くに行かないといけない。

 屋敷に在住している護衛達の目をも掻い潜り、マグリットはそのまま駆け抜ける。



 過去何度もやり直しの世界で、身体を鍛えた事は何度もある。

 そして何故か、やり直したとしても鍛えた身体はそのまま維持されている。

 年齢はちゃんと戻っているにも関わらず、だ。

 その為、マグリットはもうすでにただの貴族令嬢とは言い難い身体能力を持っている。

 それを本気で駆使して走ると、あっという間に貴族街から出る。


 持ってきた宝石はネックレスにした。

 これなら色んな物に紛れて売る事も出来るし、それ以上に持ち歩きに不便ではないからだ。

 貴族のドレスはやはり実用性に欠けている為、装飾品ひとつ入れるところもない。

 その為売りはするが、今はちゃんとネックレスとして首にかけてある。

 ドレスとは言え地味な装いをしているにも関わらず、ネックレスだけがキラキラと存在を主張するように輝く。


(取り敢えずこのまま夜通し走り続けて、夜が明けてからネックレスを売る場所を探してから身支度を整える、かしら?)

 いつまでもこの格好では貴族のお忍びである。



 もう既に帝都は出ている。

 帝都を出る際の関門も自身の魔力を使い、バレない様にして出てきた。


 なので、すでに帝都の外にある街道に居るのだが、深夜という事もあり誰も居ない。

 それも当然。

 野党も居れば魔物や野獣もいる。

 普通なら外に出るのに深夜を選ぶ人は居ない。

 それどころか1人で出歩いたりも普通はしない。



 それでもマグリットは楽しげに走り続ける。

(さて、何処まで行けるかしら?)






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。