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取り敢えず連絡が来ます

 



 フレデリックと念話で話してから一週間は過ぎたが、あれから連絡が無い。

 今はお昼ご飯を食べた後で、マグリットはお昼休みにはあの見つけた四阿で過ごしている。


(このまま連絡が無いなら、このまま逃亡するのはアリなのかしら?)



 必要とは思えない学園に通い続けたくは無いのだ。

 確かにこの十回目にして久しぶりに家族と同じ時間を過ごしている。


 楽しくもあるし幸せだとも思うのだが、マグリットが公爵家で過ごす事によって、処刑後に公爵家が取り潰しになるのは嫌なのである。

 だからこそ死ぬ以外の道が見えない限り、基本的には黙って姿を消すしかなかった。


 だが実際はマグリットは処刑後、カンバーラント公爵家がどうなるかは知りはしない。

 溺愛している娘が、仕えている皇族に謂れのない罪で処刑されているのだ。

 カンバーラント公爵家が取り潰しにならなかったとしても、誠心誠意仕える事は恐らくは無かったに違いない。



 マグリットは机の上に一冊の本を広げている。

 当然今勉強中の魔道具に関する本である。


(魔法学者してた分、魔道具作るのは難しく無いかと思ってたんだけど・・・

 魔法への理解は出来るけど、想像以上に魔力コントロールが必要みたいで魔石に上手く魔法術式を刻めないわね。

 その上普通に魔法を使う時と魔道具を作る時では、使う魔法術式も変わるみたい。

 これじゃ、魔法を一から作る位の難易度だわ。)


 魔道具は人生で何個も何個も新しく作れる人は居ない。

 人生でニ、三個作れれば歴史に名を残せるレベルである。


(本当フレデリック殿下は規格外の天才なのね。)


 まだ若くして念話魔道具を作った事もそうだが、実はフレデリックが作ったのはそれだけでは無い。

 マグリットも詳しくは知らないが、片手以上の数を作っているのは間違いない。


 思わずフレデリック殿下からの貰い物の念話魔道具のブレスレットに触れる。

 いつ連絡が来るかわからない為、寝る時以外は付けるようにしているのだ。



『マグリット、聞こえるな?』

 フレデリックの事を考えながらブレスレットを触っていただけに大層驚いてしまう。


『帝国の若き太陽、フレデリック殿下。

 聞こえておりますわ。』

 しかし驚いているのは悟られない様にはするが。


『連絡が遅くなってすまない。』

『大丈夫ですわ。

 それで今回はどの様な御用件でしょうか?』



『・・・・・・・・・まだ殺して欲しいとか考えているか?』

 どうやらフレデリックは答えが出せていない様で困惑が伝わってくる。


『本音を言えば殺して欲しいですが・・・

 今の所私が必ず死なない未来など考えられません。

 私が死んだ事によってカンバーラント公爵家に迷惑が掛からない様にしたいのです。』

 どこまでいっても家族の為に、そしてカンバーラント公爵家の為にと願う。


『マクシミリアンの言葉が皇族の言葉だからと誰も反論出来ないのであれば、俺がいる。

 あんな飾りだけの皇太子には発言権では負けはしない。』

『・・・間違えてはおりませんが、仮にも弟になかなか酷い言いようですわね。』

 マグリットは自分がマクシミリアンを貶してる発言は棚に上げる。


『当たり前だ。

 あんなやつに負けてたまるか!!


 問題はあいつの周りにいる奴等だ。


 恐らくはマグリットを処刑するにあたって、過去に出す機会は無かったとしても嘘の証拠を作っているはずだ。

 それを崩して行って手も足も出ない様にしてやろう。


 その為に俺も学園内に居れるように教師になったんだからな。』

 顔は見えないが自信のほどが窺える。


『殿下の側に居れば処刑は免れると?』

 何処へ行こうと逃げれなかったのに?と暗に含ませる。


『マグリットは死にたく無いのではないのだろう?

 カンバーラント公爵家の無事が確保出来るのであれば、協力する価値はある筈だ。

 俺がその後ろ盾となろう。』

 その言葉はマグリットにはかなり魅力的であった。


 公爵家とそれに含まれる公爵領の領民全てが、自分と切り離して対処してもらえると確定しているのだから。


 今まではマグリット一人ではどうしようもなかった。

 カンバーラント公爵家から逃げ出した事は何度もあるが、毎回追放扱いにはされていない。


 かと言って追放して貰いたいと直談判も聞いてはもらえなかった。


 だからこそ逃げ出すしか出来なかった。

 自分が処刑される罪とカンバーラント公爵家が関係ない事を伝えるにはマグリット自ら、何も言わずに姿を消す事以外には考え付かなかった。


 処刑後、カンバーラント公爵家がどうなったかは推測すれど、本当の所はわからない。

 誰も覚えていない為、聞く事も出来なかった。


『公爵家は・・・・・・』

 本当はどうなったかなんて分かりきってる。

 それでも聞くのは少し、怖い。


『全てにおいて公爵家は爵位、領地共に没収される。

 その後の流れも然程変わらない。


 没収されども公爵家。

 公爵の派閥も多い。


 反旗を翻し、内乱へと向かう。

 マクシミリアンが皇族の権力を笠に、自分に少しでも反発する人物をマグリットを皮切りに処刑を繰り返すんだ。


 そしてそのまま内乱の最中、他国がこれ見よがしに攻め入ってくる。

 そしてそのまま滅亡の一途を辿る。』


 マグリットが想像した以上の事が起こるのはよくわかった。愛情どころか情でさえも無い自身の婚約者に対して益々幻滅する。


『何度やり直してもマグリットが死ぬのがキッカケの一つであるのは間違い無い。』

 それはそうだ。

 だって内乱のキッカケがカンバーラント公爵家なのだから。


『俺は何度もマグリットを殺すな、とは言ってきたんだ。

 でもマクシミリアンは聞いてはくれなかった。


 それにマグリットが死のうが死ぬまいが、きっと同じ事が起こるのも予想出来た。

 だからこそ今まではマグリットと協力しようとは思わなかった。


 ・・・・・・君に記憶がある事を知るまでは。』


 きっとフレデリックも同じ。

 繰り返す世界で誰かに相談した所で、又やり直しになってしまったら相談した事さえも無かったことになる。



 それは存外辛い。



 自分が覚えている事でも相手が覚えていないのだから。




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