第41話 〈不死鳥の息吹〉
「花火……この状況、どうする?」
俺は、花火に問いかけた。
周りには、宙に浮いているグランセリアの4人がいた。
花火が使った魔法――〈リバース・グラビティ・フィールド〉による反転された重力による効果だ。
ただ――あっちが全力を出せば、この程度の重力には抗えるだろうな。
どうやら、あっちも作戦会議をしているようだ。
「あの泥沼はもう食らわないと思うけど……多分だけど、あっちは他にも私の対処法を考えてるよね」
「多分、そうだろうな……」
つまり、いつもと違って花火も十分危険なのだ。
油断は……全くできない。
「……なあ、花火……一旦、俺を信じてくれないか?」
「そんなの言われなくとも!」
花火が当たり前でしょ? と言いたげな表情でそう言う。
そうだな、花火はそういう奴だったな……!
だったら俺は――
「〈転移門〉」
花火の目の前に、俺は〈転移門〉を召喚した。
「この転移先は――だ……花火、頼んだ!」
「了解っ!」
すると、花火は〈転移門〉の中に入っていった。
さて……これで一旦は俺1人だな。
花火がこの場を離れたため、〈リバース・グラビティ・フィールド〉は解除され、グランセリアの4人が落下してくる。
まず、俺がやるべきことは――
「1人でも多く、ぶっ倒すことッ!」
俺はギフト:〈疾風〉を使って全力で駆け出すと、落下途中の剣士の1人に狙いを定め――俺は大きく跳んだ。
「〈断絶〉ッ!」
そして、彼の近くに来た時、首めがけて〈断絶〉を放つ。
動きながら、落下途中の敵の首を狙うのは至難の業。
だけど――
「なっ?!」
あんなに花火に鍛えられた俺であれば、可能であった。
剣士の男のブローチから光が消えた。
「――なら、僕もやり返させてもらおうかなっ!」
「ッ?!」
声が聞こえた方向を振り向くと、桐生がこちらに魔法を放とうとしていた。
不味いッ!
あいつの魔法の威力が馬鹿げてることは知っている。
食らったら一発アウトだろう。
今は空中であるが……この距離であれば、〈短転移〉で回避できるだろう。
……でも、〈短転移〉には距離制限がある。
もしも、範囲魔法を使われたら?
そもそも転移先を読まれていたら?
やはり、ここは――
「〈転移門〉ッ!」
俺は人1人が入れるほどの時空の歪みを目の前に出現させた。
――刹那、そこから銀髪の女性が飛び出した。
そう、さっき〈転移門〉に入っていった花火だ。
花火にはさっき、俺が空間魔法で生み出した亜空間に入ってもらっていたのだ。
これぞ、新たに俺が考えついた奇襲作戦。
「――じゃあね! キザ男君っ!」
花火は、にこやかな笑みで桐生の首めがけて剣を一閃。
魔法を使おうとしている彼に防ぐ術はなかった。
桐生は剣を首に受け、ブローチから光を失わせた。
つまり、これは俺たちの勝利だ。
――否、勝利になるはずだった。
次の瞬間、桐生の体が赤い閃光に包まれた。
「は? な、なんだ?! ――っ?!」
閃光が消えた後、俺の目に映ったのは――桐生の背後で、太陽のように燦々と輝く炎の鳥の姿だった。
炎の鳥はまるで――不死鳥のようだった。
不死鳥は徐々に桐生の体の中に入っていき――
「ははっ、まさかこの魔法を使わせるなんてね」
桐生のブローチは、松明に炎が灯るように……再び光り始めた。
「そ、そんなのアリかよ?!」
俺は、あの魔法を知っていた。
〈不死鳥の息吹〉……一定時間内に限り、1度死んでも蘇ることができる効果をもたらす魔法だ。
使える人間はもうこの世界に居ないはずだったんだけどなぁ……。
「マジでチートすぎだろ……」
しかし、決して諦めたわけではない。
俺は地面に着地すると、グランセリアの別のメンバーである魔法使い目をつけた。
このチート野郎は最後に残しておいてやるよ。
まずは周りからだ。
この技はあまり使いたくはなかったんだけどな。
「〈転移門〉」
俺は転移門で魔法使いの背後と目の前の空間を繋げると、そこに手を入れ――
「――からの、〈断絶〉ッ!」
〈断絶〉を発動した。
「きゃっ?!」
魔法使いのブローチから光が消える。
断絶は実態のない魔法であるため、転移させることは不可能だ。
しかし、断絶を使う俺の手であれば可能だ。
「――この……! よくも他の仲間を!」
すると、背後からフードを被った男が、ナイフを振り下ろしてきた。
こいつ……完全に怒りに支配されてしまっているな。
「〈断絶〉」
俺は左手を後ろに回すと、そこから〈断絶〉を放つ。
この距離なら、 ナイフが届くよりも俺の〈断絶〉が発動する方がはやかった。
男のブローチからも光は消えていった。
「ふふっ、流石は『影の最強』って呼ばれてるだけあるね。まさか、うちの仲間の2人を瞬殺するなんてね」
桐生はなぜか、楽しそうに笑っていた。
「さあ……桐生、お互いに奥の手は晒し合ったぜ……ここからは正々堂々勝負だな」
「2対1の状況でそれ言うかな?」
うるっせぇ、さっきまで4対2でボコボコにしてきやがった奴が何言ってんだか。
「花火、負けるなよ?」
「勿論!」
もう何度目か、わからないこの会話。
俺たちはこんな奴に負けない、負けていいはずがない。
絶対に……勝つ。
「「っ……!」」
俺たちは目配せをすると、一斉に駆け出した。
「ははっ……君たちはまるで夫婦みたいだね」
誰が夫婦じゃボケ。
俺たちは相方であり、親友だ。
でも、心なしか花火の顔が赤く染まっていたような……?
まあいいや。
「花火! 一気に決めるぞ! ……あれを頼む!」
「了解!」
俺は花火より少し前に抜き出る。
花火はそれに合わせて両手を突き出し――
「〈重力波〉」
花火の〈重力波〉を受けて……俺の体はとんでもない速度で加速していく。
俺は、そのままのスピードで桐生に肉薄し、彼が魔法を放つより前に――
「終わりだッ!!!」
首めがけて一閃。
「なっ……!」
桐生は魔法を使おうとしていたため、防ぐことができなかった。
すると――桐生の胸についたブローチは光を失う。
今度は〈不死鳥の息吹〉が発動することはなかった。
『WINNERS ヒバナ』
けたたましい鐘の音と共に、そんな文字がスクリーンには映し出された。
ついに、俺たちはあの最強パーティ……グランセリアに勝利したのだ。




