第40話 すり抜け? 破壊?
「蓮君、どうする?」
試合が始まってからすぐに花火がそう訊いてきた。
そりゃあそうか。
平原などの開けたフィールドならば、各自好き勝手やろうと思っていたのだが……よりにもよって選ばれたのが迷路だからなぁ。
「何があるかわからないから、一旦は一緒に行動しよう……それで、敵を見つけ次第、一緒にそいつを倒す」
「ふふっ、蓮君も私に似て単純な思考になってきてない?」
「ち、違う! そっちの方が俺たちには合ってると思ったからだよ……」
似てきてる……のかなぁ……?
俺は少し心配に思いながらも、迷路に足を踏み出した。
「迷路なんだし……左壁に沿って歩いていくか」
左手の法則ってやつだ。
最悪、これなら奴らと鉢合わせることができなくても相手パーティのスタート地点に行くことはできるからな。
そうすれば、待ち伏せなどの選択肢も生まれる。
そう思って、左壁に沿って歩いていると――
――ドゴォォォンッ!!!
そんな激しい爆発音がどこからか聞こえた。
「……え?」
も、もしかして……この壁を無理矢理、壊そうとしたのか?
ま、まさかな……この壁が絶対に壊れないことくらい誰でも知っていることだ。
「でも……律儀に迷路を進むのも変か」
次の瞬間、俺の脳裏にとある空間魔法が浮かんできた。
もしかしたら、あれならこの迷路を無効化することもできるかも……。
「花火、ちょっと離れててくれ……試したいことがあるんだ」
「おっ? なになに? 気になる!」
花火を遠ざけると、俺だけ壁に近づく。
そして、両手を壁に合わせて――
「〈透過門〉」
そう唱えた。
すると、壁には真っ黒の穴が開いた。
「よし! 成功したぞ!」
「こ、これって……もしかして……」
「ああ、そのもしかしてだ」
俺は試しにその穴をくぐってみると……その先にはさっきとはほぼ似ているが、少し変わった景色が広がっていた。
成功だ。
〈透過門〉……壁をすり抜ける門を作る魔法である。
一度、この魔法について本で読んで知っており、試しに俺でも出来ないかと詠唱してみたのだが……できてしまった。
「慣れてない魔法だからか、消費は激しいけど……これで迷路を律儀に歩く必要は無くなったな」
俺が満足げにそう言うと――
――ドゴォォォンッ!!!
またしても、そんな爆発音が地面を揺らした。
それも、今回はさっきよりも大きい音だった。
「ね、ねえ……蓮君、これって何の音なの?」
花火は恐る恐るといった様子で訊いてきた。
「い、いや……俺が聞きたいくらいだよ。マジでグランセリアは何をしようとしてるんだ?」
少し不気味だと思いながら、俺が壁をすり抜けるために、壁に近づいた瞬間――
――ドゴォォォンッ!!!!!
そんな爆発音と共に――目の前の壁が粉々に砕け散った。
「へ?」
俺の口からはそんな腑抜けた声が漏れた。
砕けた壁の向こうには……灼熱のような赤髪をした1人の男が立っていた。
あいつは――き、桐生?!
もしや、この壁を無理矢理破壊したのか?
壊せないはずじゃないのか?!
その時、桐生と目が合った。
彼は――ニコリと微笑んでいた。
「っ……?!」
全身に悪寒が走った。
何だか、このまま同じ場所に居てはいけないような……そんな気がしたのだ。
俺は急いでバックステップすると――
――ドドドドド
そんな轟音と共に俺が居た筈の場所には、大量の炎の槍が突き刺さる。
あっぶねぇぇぇ!
「――ほう、あの攻撃も避けるなんてね。流石はあのヒバナのカメラマンだ……でも、次も運よく避けられるかな?」
桐生がそう言うと――背後から鋭い殺気を感じた。
俺は急いで振り返り、剣を振り下ろすと
――ガキン
そんな金属音と共に俺の剣は、ナイフに衝突する。
背後から、黒いローブを纏った1人の少年が襲ってきていたのだ。
「くっ……」
なんだこの膂力は……!
俺は思わず押されそうになるものの……何とか彼の攻撃を弾き返す。
このままだと不味い……だって、完全に包囲されてね? これ?!
「だんぜ――」
「――させないよ?」
すると、桐生の手から物凄い速さで炎の槍が放たれた。
俺は、咄嗟に詠唱を止めて、剣でそれを切り裂く。
くそッ……! 迷路を壊して強襲してくるなんてチートだろ!
俺は花火をチラリと一瞥すると――
「この……めんどくさいなぁ! 〈重力波〉ッ!」
花火は剣士と魔術師を相手に剣で応戦していた。
どうやら、あっちも大変そうだな……。
ここは、一旦、体制を整えたいが……そんな隙を与えてくれそうな気配はない。
「花火ッ! ここで全力で畳み掛けるぞ!」
「わかった!」
すると、花火の動きが急に加速した。
ギフトである〈神速〉を使ったのだろう。
〈神速〉を使った花火を止められる者なんて、居ない。
あっちはすぐに決着がつくはず――
「――今だッ! あれを使え!」
「了解! 〈泥沼〉ッ!」
次の瞬間、花火と俺の足元が泥沼と化した。
そのせいで、俺と花火は立ち止まることを余儀なくされる。
くそっ……!
地面を泥沼にすることで、俺たちの速さを封じようという作戦か……ッ!
「今だ! 動けない内に総攻撃だッ!」
「くっ……」
桐生や他のパーティメンバーがこちらに向かって、魔法を唱えたり、剣を振ってきたりする。
何か、手を打たないと……
「〈短転移〉ッ!」
俺は、花火の側まで空間魔法で転移すると――
「花火! あれを頼む!」
「了解! ――〈リバース・グラビティ・フィールド〉ッ!」
次の瞬間、俺たちに向かって放たれた炎の魔法や、今にも俺たちに斬りかかろうとしている剣士が宙に浮いた。
花火が新たに習得した魔法――〈リバース・グラビティ・フィールド〉。
その名の通り、近く物の重力を反転させる魔法だ。
俺たちに当たろうとしていた魔法や、グランセリアの4人は重力に従って、上空に浮かんでいく。
「〈転移門〉」
俺は、この隙に、空間魔法で花火と一緒に泥沼から抜け出した。
よし……これで一旦、体制を整えることはできた。
また、仕切り直しだ。




