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ダンジョン配信者のカメラマンの成り上がり〜事故で実力がバレた俺は『影の最強』と言われてバズってるんだが?!〜  作者: 水葉わいん/わいん。


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第35話 「じゃあ、前回のお礼に食べさせてあげようか?」





「――だって約束したじゃん! 屋台に行くって」


「確かにそうだけど……!」


 俺は、花火に手を引かれながら屋台の立ち並ぶ通りを歩いていた。


「約束は約束だからね? ちゃーんと守ってもらうよ」


 まあいいか……。

 あんなことがあった後で、少し気分が悪かったし、いい気分転換になるだろう。


 花火は、ふんふんと鼻歌を歌い、スキップするように歩いていく。


「まずは甘いものじゃないで、しょっぱいものだよねー! そうだなぁ……あっ、たこ焼き食べたーい!」


 花火はたこ焼き屋さんを見つけると、目を輝かせて走っていく。

 ……勿論、俺の手を引きながら。


「蓮君はどうするの? 食べる?」


「あー、そうだなぁ……」


 その時、前にわたあめを食べた時のことが脳裏をよぎった。

 もしもここで俺が頼まなければ、またああいう事態になるかもしれないな……。


「じゃあ、俺も頼もうかな」


「ふぅん……? ……お兄さん! たこ焼き2つください!」


「あいよ!」


 店員さんは、俺たちからの注文を受け、素早い手つきで、焼かれていたたこ焼きを船皿の上に乗せていく。


「お嬢ちゃんたち、味はどうするんだい?」


 店員さんはそう言いながら、屋台に貼られたメニュー表を指差す。


 そこには、普通のたこ焼きやマヨネーズ入り、ネギ入り、明太マヨチーズなんてものもあった。


 いや、明太マヨチーズって美味しいのか……?

 というか、頼む人っているのか?


「俺はマヨネーズ入りでいいかなぁ……」


「――じゃあ、私は明太マヨチーズで!」


 目の前におったわ、頼む人……。


「あいよ!」


 店員さんは、手慣れた手つきでソースやマヨネーズをかけていき……俺たちに二つのたこ焼きを手渡した。


「代金は600円と650円で1250円だよ!」


「じゃあ、これで」


 俺は1500円を手渡す。


「はいよ、じゃあ250円のお釣りね……いやぁ、兄ちゃん、迷いなく財布出すとか、いい彼氏さんやねぇ! お互いを大事にするんだよ?」


「ふぇ? か、かかか彼氏?!」


 花火は店員さんの言葉を聞き、耳を真っ赤にしていた。


「うん? なんだい? 手を握ったり、奢ったりしてるのに、2人は恋人じゃないのかい?」


「へ? そ、それはぁ……はい! 私たちは恋人です!」


「そうそう、俺たちは違くて――え?」


「ほら!」


 すると、腕に柔らかい感触がした。


 花火が俺の腕に抱きついてきたのだ。


 ど、どういうこと?! 

 は、花火さん? ご乱心していらっしゃる?!


「おー、熱々やねぇー! 彼氏君、ええ彼女さんを持ったなぁ……幸せにするんやでー!」


「いや、だからちが――っむぐ」


 否定しようとした俺の口の中に、突然、たこ焼きがぶち込まれる。


 へ? なんで? てか、熱ッ!!!


「あふっ、あふいって! はなひ?!」


「店員さん、ありがとうございます! じゃあ、私たちはこれで失礼しますね!」


「へ? ちょっと!」


 花火はたこ焼きを両手に抱えると、たこ焼き屋さんから離れていった。


 ちょっと待て、マジで熱いんですけど、このたこ焼き!


「――っんぐ……はぁはぁ、火傷して死ぬかと思った……花火、突然どうしたんだよ!」


「だって、あそこで友達だって言っても面倒なことになるだけでしょ? 恋人って思わせた方が、楽だと思ったの!」


「まあ、それはそうだけど……でも、花火は配信者でもあるんだから、恋仲だと広まるとマズいだろ?」


「別に私は気にしないよ? ……蓮君こそ、嫌なの?」


 花火は瞳の奥に不安のような何かを揺らめかせながら、そう訊いてきた。


「そりゃあ、俺は嫌がるわけがないだろ。一応、俺も男なんだから美少女と恋仲だと思われて悪い思いはしない――っむぐ?!」


 再び、放り込まれるたこ焼き。

 あっつ! 

 ちょっと冷めてきているとはいえ、あちいよ!


ちょっと(ひょっと)!? ほれひま悪いこと(はるいこと)言った(ひった)?!」


「知らない!」


 花火は俺に背を向けながら、ぶっきらぼうにそう言った。


 心なしか、彼女の耳はより一層赤くなっているような……?


「こ、こっち見ないで! またたこ焼き放り込むよ?!」


「は、はひ!」


 なんなんだ……?

 花火は何を考えてるんだか……。


「……な、なんで無自覚なの……! 蓮君、ずるすぎるでしょ……!」


 花火はぶつぶつと何か独り言を言っていた。


 俺がたこ焼きをなんとか、咀嚼し終えると――


「ふぅ……蓮君、たこ焼き美味しかった?」


 花火がそう訊いてきた。


 今度はなんだ……?


「まあメチャクチャ熱かったけど……美味しかったぞ?」


「じゃ、じゃあ……こっちの味も食べてみる?」


 花火は持っていた明太マヨチーズ味のたこ焼きを取り出す。


 もしかして、こいつ……俺にあーんしようとしてるのか?!


「花火、一応言っておくとさっき俺の口にたこ焼きぶち込んだのも、あーんみたいものだぞ?」


「ッ……?! そ、それとこれは違うし! てか、あーんじゃないし!」


 ふぅん……?

 この前は散々、こいつに辱められたからなぁ……。


 こんなオドオドしてる花火も新鮮だし、いっちょ仕掛けてみるか。


 俺は花火が持っていた明太マヨチーズ味のたこ焼きを串で挟み取ると――


「じゃあ、前回のお礼に食べさせてあげようか?」


「へ?! な、ななななな何を言ってるの?! 蓮君?! 変なものでも食べたの?」


「ん? 俺は前回のお礼をしようとしてるだけだぞ? ……ほら」


 俺はぐいっとたこ焼きを彼女の口元に近づける。


 対して、花火は顔を熟れたリンゴのように真っ赤に染めていた。


 なんだか、花火が照れてる姿は新鮮だなぁ……。


「じゃ、 じゃあ……い、いただき……ます」


 花火はパクリとたこ焼きを口に入れる。


 そして、そのままモグモグとたこ焼きを咀嚼していく。


 ……え? 熱くないの?

 これで、『あつっ!』って言う花火を見たかったんだけど……。


「……お、美味しかった……」


 花火は目を逸らしながら、そう言う。


 彼女から、いつものような元気溌剌な雰囲気は感じられなかった。


 そ、そんなに俺にあーんされるのが恥ずかしかったのか……?


 花火の反応が思っていたのと違うせいで、何かやってはいけないことをしてしまったかのような罪悪感に俺は苛まれるのであった。


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