第34話 スレッド:ヒバナVSスピードスターについて
早川は、不思議そうな表情を浮かべると
「クスリってなんだっけ……? てか、オレは誰だ……? なんでこんなところに居るんだ?」
呆然としながら、そう呟いた。
その表情は、演技や嘘には見えなかった。
まるで起きたら見知らぬ部屋にいた時のような、ポカンとした表情をしていたのだ。
記憶……喪失?
副作用だろうか? ……いや、それにしてはタイミングが良すぎるような?
もしかして、遠隔で記憶を操作された?
そんな真似ができるのか……?
「――ってか、な、なんで俺は変な女に首を掴まれてんだよ! い、嫌だァ! 離せ!」
彼は首を掴まれているに気づくと、ジタバタと暴れ始める。
まさか、直近の記憶すらも無くなっているの……?!
「どうしようかな……」
もしかしたら、早川が薬をまだ持っているかもしれないと彼のポケットやカバンをまさぐってみるも、見つかったのは空の瓶だけだった。
せめて、この空き瓶だけは持って帰ろう。
少しは薬の水滴が付着しているはず……。
「な、何をするんだよ、お前……!」
とはいえ、自業自得だ。
全ては、ドーピングという安易な道に進んだ彼の自己責任。
「はあ……」
私はため息をつくと、彼の顔めがけて
「〈ミニブラックホール〉
一思いに重力魔法をぶつける。
すると、彼の小さな悲鳴と共に、彼の胸についたブローチから光が消えていく。
同時に彼はショックで気絶し、地面に倒れ込んでいた。
勝ったのだ。
でも……正直、胸糞の悪い勝ち方だった。
――――――――――――――――――
【スレッド:ヒバナVSスピードスターについて】
1 名無し
何が起きたんや……?
2 名無し
ん? どうした?
3 名無し
>2
今日の探索者バトアリのヒバナVSスピードスターの試合見てないんか?
4 名無し
普通に仕事で見れんかった。録画もし忘れたから何にもわからん
教えてくれんか?
5 名無し
>4
ええで
まず、フィールドは森。
スピードスターは潜伏しつつ、召喚魔法でモンスター召喚したり、不意打ちしたりする作戦。
速さが売りとはいえ、ヒバナに素早さ勝負なんて負けに行くようなもんやからな。
対してヒバナはサーチ&デストロイ。
手分けして、見つけ次第ぶちのめすとかいう頭の悪い作戦。
とはいえ、SSS級モンスターも無傷で倒しちまう2人だから、余裕でスピードスターをボコボコにした。
6 名無し
>5
まあ、そうなるやろうな。
ヒバナが負ける未来なんて見えんわww
7 名無し
お、これって早川のドーピングについてのスレか?
8 名無し
クンクン……!
これはお薬の匂い……!
9 名無し
ドーピング? 薬?
は? どういうこと?
10 名無し
>9
スピードスターの早川って奴が何かの薬を使ってドーピングしたんだよ
花火ちゃん(もう本名バレてるから本名で言うぜ)が煽りプレイの一環で途中で配信し始めたから、ヒバナのアーカイブ見ればわかると思うで
11 名無し
色々カオスで草。
何をどう考えたら、途中で配信し始めるんだよ……
12 名無し
>11
そこは流石のヒバナクオリティやろ
早川めっちゃキレてておもろかったww
13 名無し
煽りといえば、武器・ギフト縛りだよな。
早川、薬も使ってたのに花火ちゃんにぶん殴られてて草生えたわww
14 名無し
話戻そうかww
早川は最終的に持ってた薬を飲みまくって、とんでもない力を手にいれる
→武器とギフトを開放した花火ちゃんにボコボコにされる
→副作用か何かで早川が記憶喪失っぽくなる
こんな感じや
15 名無し
結局、ボコされてて草
16 名無し
昔、SSS級モンスターをソロ討伐してた花火ちゃんに中堅の探索者がちょっとドーピングしただけじゃ勝てんやろww
でも、あの花火ちゃんがギフトを使わされたってことは、早川はS級モンスターやSS級モンスターと同じくらいの実力にはなってたんちゃう?
17 名無し
>16
比較対象はモンスターなんだ……笑
18 名無し
>16
でも、そんなに強くなる薬ってあるんや……
結構、えげつないな
19 名無し
多分、ダンジョンで偶然見つけたのか裏ルートとかで仕入れたんやろな
20 名無し
でも、記憶喪失ってのは気に食わんわ。
自分の罪も恥も全部忘れてるんだろ?
21 名無し
ちょっと早川の使った薬について調べてみるわ
明日には結果報告する
22 名無し
>21 有能か?
23 名無し
ヒバナのファンって有能多いなww
472 名無し
>21
1週間経ったけど、報告ないってマジ?
473 名無し
わ、忘れとるだけやろ……笑
474 名無し
そうであると信じるわ
――――――――――――――
「なるほどな……そんなことがあったのか」
俺は自分の部屋にて、花火から早川の話を聞いていた。
まさか、早川がドーピングなんて方法を使うなんて……。
「それで、これが早川が使った薬の空き瓶だよ」
花火は二つの空き瓶を取り出した。
空き瓶には、ほんの少しだけ水滴が付着していた。
「これは……一旦、唯に渡して調べてもらった方がいいだろうな」
「そうだねぇ……私たちじゃ、どうしようもなさそうだし」
その後、俺は唯に連絡を入れたところ、明後日、クロノテクノ社の人が空き瓶を受け取りに来てくれることになった。
「さてと……じゃあ、今日は一旦休もうか」
「そうだね――じゃあ」
突然、俺の腕は花火にガシッと掴まれ
「――約束通り、屋台、周りにいこ?」
「へ? ちょ、ちょっと?!」
そのまま、外へ連れ出されるのであった。




