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ダンジョン配信者のカメラマンの成り上がり〜事故で実力がバレた俺は『影の最強』と言われてバズってるんだが?!〜  作者: 水葉わいん/わいん。


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第33話 このクスリは、このクスリは……! あれ?




「拳だけで、君の目を覚ましてあげるよ」


 私は、地面を強く蹴り、一瞬で早川に肉薄すると


「は……? へぶしッ!?」


 彼が私を視認するより前に、その顔面をぶん殴った。


 彼の体は大きく吹っ飛び、背中から勢いよく木に衝突した。


 あれ……? ドーピングの力で、これくらいの攻撃は受け止めてくれるかと思ったのにな……。


「な、なんで……そんなに速い……俺はアレを使ってるのに……! まさか……ギフトを……」


「ギフト……? 使ってないに決まってるじゃん? だってギフト縛りだよ?」


「なっ……そ、そんなわけねえ! ギフトを――〈神速〉のギフトを使わずにあんな速さで走れるわけねえだろ!」


 早川はよろよろと立ち上がりながら、語気を荒げ、言葉を続ける。


「だ、だって……あの速さ、いつもの配信でモンスターと戦ってる時の速さと変わんねえじゃねえか!」


「そんなの当たり前でしょ? ――配信でも〈神速〉は使ってないんだから」


「は……?」


 早川は呆然と立ち尽くしていた。


 何かおかしいかな……?

 流石にSS級以上のモンスターと戦う時には〈神速〉を使うけど、それ以外は使ってない。

 だって……そうしないと、蓮君が私に追いつけないじゃん。


「さあ……戦いを続けよ?」


「こ、このアマ……ッ!」


 彼は苦悶の表情を浮かべると、懐から小さな玉を取り出し――


 ――ドカン、という音と共に、玉からは煙が吹き出す。

 なんだ煙幕か……でも、どうして……?


 逃げるつもり? そんなことしても、すぐに追いつかれることなんて、彼もわかっているはず。

 まさか――


 刹那、彼の周りの煙幕が吹き飛んだ。


「こレ……なら、負けねェ……力がみなぎるゼ……!」


 煙幕が晴れた先には、そう呟く真紅の瞳をした男がいた。


 彼の体は二回りほど大きくなり、全身の筋肉は隆起し、上半身の服ははち切れてしまっていた。



「はや……かわ? き、君……ッ! もしかして……」


「あア、そうだよ! 残ってたクスリを全部使ってやったぜ……これで、テメエなんか簡単に捻り潰セル」


 へっへっへ、と彼は涎を垂らしながら笑う。


 その姿は人間からはかけ離れていた。まるで……モンスターのようだ。


「一体、なんの薬を使ったの……? ただのドーピングなんかじゃ、そんなのにならないよね?」


「へっへっへ……知りたいカ? この力が欲しイのか? じゃあ、教えてやるよ……お前が地面に這イつくばって命乞いをした時にな!!!」


 次の瞬間、早川がとんでもない速さでこちらに駆けてくる。


 さ、さっきよりも何倍も速い……?!


 早川は私の正面にやってくると、剣を大振りで振り下ろしてきた。


「ぐッ――!」


 私は紙一重のところで彼の剣を躱した。


 彼が大振りで剣を振り下ろしてこなければ、危なかっただろう。


「流石に……縛りプレイはキツいかな」


 だって、ここで負けてしまったら、蓮君に顔向けできないじゃん。


 エンターテイナー? プライド? 

 ……蓮君のためなら、そんなの幾らでも捨ててあげるよ。


 私は深呼吸すると――ギフト:〈神速〉を発動した。

 刹那、私から重さという概念が消えた。


「オラオラオラァ!!! よくもさっきはオレをコケにしてくれたなァ!」


 そうだなぁ……彼の二倍くらいの速さで動いてみようかな。


 すると、彼の剣が私の首めがけて振り下ろされた。


「残念だね、私にもう、攻撃は当たらないよ」


 首を傾げながら、私はニコリと微笑み、彼に向かってゆっくり歩いていく。


「この……ッ!」


 その言葉にイラついたのか、早川は怒涛の勢いで剣を振り下ろしてくるが、その全ての攻撃を軽々と躱していく。

 バックステップして、しゃがんで、サイドステップして……でも、全て最小限の動きで。


 いつの間にかに、私と早川は目と鼻の先の距離にまで近づいていた。


「どう……シテだッ!!! なんで当たんねえんだよッ! ……うぐッ!」


 私は彼の首を掴むと、そのまま持ち上げる。


 私は自由自在の速さで動くことができる。

 だから、どんな攻撃であっても、それを私が認識さえできれば躱せるのだ。


 つまり、彼は私に不意打ちをしかけなかった時点で負けなのである。


「さあ、聞かせてもらおっか……その薬の正体を」


「クソッ! このクスリは、このクスリは……! ……あれ?」


 早川は、不思議そうな表情を浮かべると


「クスリってなんだっけ……? てか、オレは誰だ……? なんでこんなところに居るんだ?」


 呆然としながら、そう呟いた。





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