第30話 終わったら、屋台だからねー!
『レディィィ……ファイッ!』
そんな合図と共に試合は始まった。
「じゃあ、私は左方面に行くから、蓮君は右よろしくね?」
「へ? ……ま、待った……流石に一緒に戦った方が――」
「だって、索敵が難しいんでしょ? なら、手分けした方が手っ取り早く敵が見つけられていいじゃん!」
「そ、それは……そうだけど」
「じゃっ、よろしくね? ……終わったら、屋台だからねー!」
花火はそう一方的に言って、左方面に駆けて行った。
ええ……本当にサーチアンドデストロイする気なのか?
まあ、花火の実力なら負けることなんてないだろうけど……。
「じゃあ、俺も向かうか……」
花火よりも先に早川を見つけないとな。
俺は右方面へ駆け出す。
地面を蹴って、木の幹を蹴って……縦横無尽に駆けていく。
しかし――
「見つからないな……?」
俺は、スピードスターのスタート位置に立ちながら、そう呟く。
あれ……? 相手のスタート地点まで来たのに、見つからない……?
こりゃあ、本当に潜伏されてるな……。
――ガサガサ
すると、目の前の草むらがそんな音を立てながら揺れた。
なんだなんだ? 花火か……? それとも、スピードスターか?!
俺は剣を構えながら、慎重に草むらに近づいていくと……
「ウォォォン!!!」
草むらから突然、狼のような動物が飛び出してきた。
……え? 狼?!
狼は俺を視界に捉えるや否や、噛み付かんと襲いかかってくる。
「っ……」
俺は咄嗟に剣を振るい、狼を弾き飛ばした。
俺は一旦、狼から距離を取り、よく見てみる。
この真っ黒の毛に、熊のように大きな巨体……B級モンスターのブラッディウルフだ。
どうして、ここにブラッディウルフが……?!
ここは探索者同士の戦いの大会じゃないのか?
まあいい……敵であることには変わりないのだ。
とりあえずは――
「倒すッ」
俺は地面を蹴り、ブラッディウルフとの距離を詰めると、一瞬で首を刎ねた。
所詮、B級モンスターだ。
何体現れたって問題ない。
「――ウォォォンッ!!!」
すると、背後からもそんな吠え声が聞こえた。
振り返ると、そこには3匹のブラッディウルフがこちらに向かって、駆けてきていた。
「何体でも問題ないとは言ったけど……現れて欲しいとは言ってないというか……」
しかし、愚痴を言っていても仕方がない。
俺は次々と向かってくるブラッディウルフめがけて、3回、剣を振った。
すると、全てのブラッディウルフの首が切り落とされ、光の粉になって消えていく。
「ふぅ……これで一旦は、大丈夫そうか?」
何故か、現れたこの4体のブラッディウルフ……もしかして、スピードスターにはテイム系や召喚系のギフトを持っているメンバーがいるのだろうか?
すると、またしてもガサゴソと草むらが揺れた。
当然ながら、そこから現れるのはブラッディウルフ。
それも、さっきよりも断然数が多い。
「これは……ジリ貧そうだな……」
俺は直接戦うことを放棄した。
ここで消耗しすぎるのは、正直、あまり望ましくない。
雑草を無くしたいなら、まずは根っこごと抜かないとね。
「じゃあな! 犬っころども!」
俺は少し助走をつけると、ブラッディウルフを飛び越える。
そして、そのまま駆け出した。
ブラッディウルフが現れた方向に行けば、こいつらの主が見つかるんじゃないかと思ったのだ。
「〈空間認識〉っ!」
俺はしばらく進んだタイミングで〈空間認識〉を発動。
半径30m以内のありとあらゆるものの情報が俺の脳へ送られてくる。
ここで重点的にみるのは、木の上や隠された空間がないかだ。
「――見つけた」
やっぱりね。
俺は、少し移動すると――
「〈断裂〉」
断裂を、鬱蒼と生えている樹木の一つに対して使う。
樹木は綺麗に切断され、地面に倒れていくと……
「――ど、どうしてバレたの……!」
樹木の中には、1人の女性が入っていた。
やっぱりな。
女性の胸元につけられた赤い宝石が入ったブローチが輝きを失う。
一定以上のダメージを受けると、このブローチの輝きがなくなり、脱落になるのだ。
彼女の場合は、俺の〈断裂〉をモロに受けたからだ。
彼女は呆然とした様子で地面に崩れ落ちる。
杖を持っていることから、彼女は召喚術でブラッディウルフを呼び出していたのだろう。
「よし……とりあえず、元凶は断ち切ったぞ」
後は他のメンバーを探し出して、ぶっ倒すだけ……。
俺が再び、駆け出そうとした時、鋭い殺気が俺を襲った。




