第23話 お前らを故郷に返すためだよ
「――影の集団のメンバーの武器に、赤い石と似たようなものが使われている、とのことです」
「ッ――?!」
影の集団とあのロックゴーレムに関係がある……?
「そこから考えるに……蓮さんが言っていた謎の少女のようなモンスター……それにも、あの赤い石が使われている可能性が高いと思います」
そうだ、あの少女のようなナニカはおかしかった。
人間にあそこまで似ているモンスターなんていない。
そう考えると――影の集団……または、それに関係する組織があの少女を《《作っていても》》おかしくない。
「ええっと……つまり、あの女の子はあいつらに改造されたモンスターってことー?」
「あくまで推測ですけどね。でも、可能性は高いと思います」
唯は顎に手を当てながらそう言うと、何かを思い出したように言葉を続けた。
「そうだ! 蓮さんはダンジョン配信していたんですよね? その少女に関する記録はないんですか?」
「あ〜……それね」
俺は苦い顔をする。
そうだな……これに関しては実際に見てもらったほうが速いか。
俺はスマホを取り出すと、とあるアプリを開き、唯に見せた。
「これは……配信のアーカイブですか?」
アーカイブ――ライブ配信された映像を後から見れるように記録したものだ。
俺は少女に襲われた時間のアーカイブを表示した。
「な、なんですかこれ……真っ暗?」
唯は驚愕で目を見開く。
目線の先には真っ黒に塗りつぶされた配信のアーカイブがあった。
そう、俺たちがトラップ部屋に閉じ込められた少し前から、少女が消えるまで――配信の映像は真っ暗になり、音声も無くなっていたのだ。
「多分、ジャミングされたんだろうな。映像も音声も何も残っちゃいない」
これは俺の推測だが――あの少女の体内に電波をジャミングする装置がついていたのではないだろうか。
しかし、悔しいことに少女は倒した後、光の粉になって消えていた。
確かめる手段は、もうこの世には存在しないのである。
「っ?! じゃ、じゃあ……証拠は」
「完全にゼロ……だな。まんまとやられたよ」
「これじゃあ、警察に相談しても何も対処してくれなさそうですね……」
唯は落胆で肩を落とす。
証拠を残さずに、奴らは俺たちから1位を奪い取った。
どうやら、奴らの方が一枚上手だったようだ。
「どうしたもんか……」
俺が頭を抱えていると、突然、花火が立ち上がった。
「――そんなの、本戦でボッコボコにしてやるに決まってるじゃんッ! 私たちに喧嘩を売ってきたんだよ?」
花火の目には強い決意のようなものが見られた。
「俺もそれには同意だ」
俺も証拠が残ってないからって泣き寝入りする気なんて、さらさら無い。
この借りは必ず本戦で返してやる。
しかし――
「あいつら……多分、本戦でも何か卑怯な手段を使ってくるだろうな」
すると、唯は首を縦に振った。
「きっとそうでしょうね……こちらも何か手を打つべきだと思います……幸い、本戦が始まるまで後1週間ありますからね」
「おっ、何か案があるのか?」
「まあ、少しだけですけどね」
唯はしばらく、顎に手を当てて何かを考えると、おもむろに口を開いた。
――――――――――――――
【???視点】
「はぁぁぁ……何とかランキング1位になれたわね……」
地下室でため息をつきながら、ソファーに腰掛ける鈴原。
そんな彼女を見て、御影は口を尖らせる。
「お前ら、もうちょっと時間稼いでくれよ! ……結構危なかったじゃねえか!」
「仕方ないじゃない! あんなにすぐに倒されると思ってなかったのよ!」
すると、いつも通り、部屋の隅でぬいぐるみを抱きしめた少女が申し訳なさそうに口を開く。
「あ、あの2人、予想以上に強かった……」
「本当にそうよ……御影、あんたヒバナの配信見てないでしょ? 前にSSS級モンスターの毒竜を2人で無傷で討伐したらしいのよ?」
「毒竜を……2人でぇ?! そ、そんぐらい俺たちだって出来んだろ! ……やったことないだけで」
「やったことない奴が何言ってんのよ……でも、あいつらが化け物なのは間違いないわ……本戦で当たったらどうなるかしらね……」
すると、御影はそんな鈴原を指差して大笑いする。
「ぷははっ! 鈴原……お前、いつも俺には強気の割にこういう時はビビんのか? 面白すぎだろっ!」
「は、はあ?! これはビビってるわけじゃないわ! ただ単に警戒しているだけよ! そういうあんたこそ、警戒心が足りないのよ!」
「俺は最強だし? 警戒とか必要ねーから」
2人はまたしてもお互いを睨み合う。
そんな時、いつものように地下室の扉が開いた。
「――お前ら、プレゼントだぞ〜……って、また喧嘩してるのか?」
現れたのは白衣を着た30代後半くらいの男性――天王寺だった。
すると、七海は申し訳なさそうに小さく頭を下げる。
「天王寺さん……いつも、2人が、うるさくて……ごめんなさい」
「いやいや、元気そうでなによりだよ……それはそうと、今日はお前らにプレゼントを持ってきたんだ」
「おっ! プレゼント?! マジで?!」
「どうせ、探索者バトアリで1位になった賞品の武器と防具でしょ」
呆れる鈴原に、天王寺はチッチッチと、指を振る。
「それだけじゃあないんだ! 実は、その武器と防具を改造して性能を上げておいたんだよ」
「おお! 流石だな! おっさん!」
「誰がおっさんだよ! 俺はまだ39だわ! ……それはそうと、もう一つ……探索者バトアリの本戦に関しても話があるんだ」
天王寺はそういうと、適当な近くの椅子に腰をかける。
「なんだなんだ? もしかして、あのヒバナを殺してきて欲しいのか?」
すると、天王寺は首を横に振ると――
「ヒバナのカメラマン――日野蓮を捕まえてくれ」
その場にいる皆に対してそう告げた。
「ふぅん……やっぱり、あの『魔変の核』を見られたのが不味かったのね……それなら、あの時の配信者――確か、名前は唯だっけ? あの子も捕まえた方がいいんじゃない?」
「いいや、あれは別にいいさ……俺が捕まえて欲しい理由は、別に魔変の核を見られたからじゃない」
「へえ……じゃあ、どうして?」
「そんなの決まってるだろう?」
まさか、と鈴原が目を見開くと、天王寺はこくりと頷き――
「――お前らを故郷《家》に返すためだよ」
笑みを浮かべてそう言った。




