決意。
倫達は、富士山の麓へと到着していた。
「玲夢、本当に大丈夫なのか?」
倫は、玲夢に詰め寄る。
「大丈夫だ。私の意識は、あいつに負けたりはしない。」
「信じるからな。」
「あぁ。終わらせるぞ、倫。」
申告な空気が倫達を包み込む。
「おい!」
麗央は、翔太が自分の肩にまわした腕を払いのける。
「・・・。」
翔太は、めげず、麗央の肩に腕を回す。
「おい!お前はやはりバカなのか!
空気を読め!」
「無理だよ!親友の愛する人が命をかけてる場面で、俺は一人黙って耐えるなんてできない!精神がぶっ壊れそうだ!」
「はぁ。お前はどれだけ小心者なのだ。
耐えろ!」
「無理!絶対無理!」
「ゔ、ゔん。」
白夜は咳払いをする。
「麗央、その男を黙らせてくれ。」
麗央は、兄の難しい要求に、頭を抱えていたが、思いついたように翔太を抱きしめた。
「こ、これで大人しくできるか?」
「なんとか。」
翔太は、嘘とか冗談無しに、
麗央に抱きしめてもらえないと、耐えられそうになかった。
「ははっ。情けない男だ。」
玲夢は、翔太を見て笑った。
「残念だったな。
俺も耐えられそうにないんだ。」
倫は、玲夢を抱きしめた。
玲夢が周りを見渡すと、兵士達は、
男女問わずに抱きしめ合い、白夜も頭をかかえ、小刻みに震えるている。
「まったく。私のまわりには、情けない男しかいない様だ。」
玲夢は、恐怖に怯える心が少し救われた気がした。
「倫、いってくる。」
「うん。必ず戻ってきてくれ。」
「当たり前だ。」
玲夢は、そう言うと、目を閉じた。
・・・。
「アース、約束通りきたぞ。」
「やぁ!ちゃんとまた来たんだね。」
「約束通りきたのだ、薬を消滅させる方法を教えろ!」
「いいよ。まぁ精々なやむといい。
薬の・・・。」
倫達が玲夢が目覚めるのを待っていると、玲夢は、まぶたをゆっくりとひらいた。
「・・・。」
玲夢はとても悲しそうな表情をしている。
倫は、玲夢を抱きしめた。
「ダメだ。薬の消滅は無理だ。
諦めよう・・・。」
玲夢の目じりからは、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「お前、感情が戻って、嘘がつけるようになったけど、下手すぎ。」
倫は、玲夢を抱きしめていた腕にちからを入れ、強く抱きしめた。
「・・・何があった?」
倫は優しく聞いた。
「・・・嫌だ。」
「何があったかまず教えてくれ。
じゃないと何も前に進まないだろ?」
「だから!前に進めたくない!」
「・・・倫。」
「何だ?」
「アースの言った事が本当かを知りたい。」
「俺が何かすればいいのか?」
「あぁ。」
玲夢は、倫の後ろを指さした。
「あの湖に手をつけて、アースに干渉してみて欲しい。」
「わかった。」
倫は、湖へ歩き膝をついた。
右手を湖につけ、目を閉じる。
「・・・アース干渉。」
「あーーー!!!!」
倫の中にアースの記憶がなだれ込む。
体も脳も心も全て引き裂かれ、
バラバラになりそうな感覚に襲われる。
真っ暗な空間。
暗い暗い、闇の中。
一つの光が倫に語りかける。
「良く来たね。エンペラー。」
「お前は・・・アース・・・か?」
「そうだよ。」
「もうすぐ災いがやってくる。
・・・
すぐそこまで来てるよ。
・・・
僕の力を使うといい。
・・・
君はカギだ。
・・・
人類の未来を君が握る。
・・・
君の好きにするといい。」
一方的に話すと、アースは消えた。
倫は、我にかえった。
「ハァハァハァ。」
「倫・・・大丈夫か?」
玲夢が心配そうに問いかける。
「大丈夫。玲夢、俺がカギなのか?」
「・・・。」
玲夢は言葉がでなかった。
言葉の変わりに瞳から涙がこぼれ落ちる。
「玲夢、後で詳しく教えてくれ。
今はあいつに集中する!」
玲夢が倫の視線の先を見ると、
一人の男が立っていた。
「何だあいつは?!」
玲夢と兵士達は身構える。
「翔太、あいつ多分政府軍だ。
知ってるか?」
「知らない。多分、四天王の上に一人いるって噂があった。
恐らくそいつなのかもしれない。」
「政府軍最強って事か。」
男は両手を広げ、話し始める。
「やぁ~はじめましてだね。
裏切り者とレジスタンス諸君。」
男は口を開いた。
「何しに来た?」
「何しに?君たち全員を消しに来た。
確信に迫りつつある君たちは、危険だよ〜。さぁ!政府軍の未来のため、
消えてくれ!
・・・ストップ。」
男の一言で、時が止まる。
男はゆっくりと白夜の前まで歩いた。
「こんな奴らに四天王は全滅。
バカバカしい。」
男は、腰にさした刀を抜き、
白夜に向かって振り上げる。
「あれ〜?」
男は、刀を振り下ろそうとするが、動かない。
「今から大事な話を未来の嫁とするんだよ。
邪魔すんな・・・殺すぞ。」
「わぁ!」
倫の鋭い視線と殺気に、男はたまらず距離を取る。
「お前!何故だ!何故動いている?!」
「俺はエンペラー。
お前ごときが、俺の時間に干渉など許されない。」
「なっ、何を言っている!
ストップ!ストップ!止まれー!」
「うるさい・・・
耳障りだ・・・
跪け。」
カチカチカチカチ。
倫が男に命令すると、
男はひざまづいた。
そして、時間が動き出しす。
翔太達は何が起こったか理解が追いついていない。
「何だ?奴はどこへ?」
「倫!どこだ!?」
玲夢が、叫ぶ。
「あそこだ!」
一人の兵士が指をさす。
指差す先では、
倫の前に男がひざまづいている。
「何が起こったんだ?翔太、貴様も分からんのか?」
麗央は、翔太に問い詰める。
「噂だけど・・・あの男の能力は、時間。恐らくあいつは、時間を止め、お兄様の首を取ろうとした。
それを、倫が何かして、あの状態?」
「なるほど。何かか・・・。
あと、お前のお兄様ではないぞ。」
この状況でも、白夜は不機嫌そうに翔太を睨んでいた。
「倫!」
玲夢が叫んだ。
「時間、動いてるみたいだな。」
倫が男に話しかける。
「まっ、待て!わかった!私はもうお前達には手だししない!見逃してくれ!」
男は命乞いをする。
「手だししないだと?ずいぶんと上から話すじゃないか。
お前の能力は危険すぎる。
悪いが消えてもらう。」
倫は男を睨見つけた。
「すっすまない!申し訳ない!ゆるし・・・」
「死ね。」
倫は、男の叫びを遮る様に、男に命令した。
男は手に持った刀で自らを突き刺し、
絶命した。
「何度味わっても、人に手をかけるのは最低な気分だ。」
倫は、ゆっくりと白夜の元へ向う。
「白夜、一晩俺にくれ。明日の朝、この場所にまた集まろう。
恐らく、政府軍に攻めてくる力はもう無い。
今日は安心してみんな眠るといい。」
「倫、わかったよ。」
白夜は、倫が悲しそうなのが気になったが、少しでも玲夢との時間をあげたいと思い、直ぐに解散の令を出した。
ザー・・・ザー・・・ザー。
「・・・玲夢。」
倫と玲夢は、湖の浜辺を二人で歩いていた。
「何だ。」
「手・・・つなご。」
玲夢は黙って手を差し出す。
倫は手を握り、また歩き出す。
夕日に照らされた湖が輝き、
二人の心を少しだけ、和ませる。
二人はしばらく黙って歩いた。
これまで二人で過ごした時間を思い出しながら。
「玲夢、この辺りにテント出そうか。」
「あぁ。任せる。」
倫は、慣れた手つきでテントを組み立てた。
二人は、テントの中に座り、
湖を眺めている。
「倫、こんな隠れた場所にテントを出して、お前は私をどうにかするつもりか?」
「したいな〜・・・。
でも、俺、決めてたから。
お前の記憶がちゃんと全部戻って、
それでも俺といたいって思ってくれたその時、俺はお前をどうにかするって。」
「何故だ!今日だ!今すぐだ!
私を抱いてくれ!」
「なんだよ。発情期か?」
「茶化すな!お前は明日死ぬ・・・。」
興奮した玲夢は、口を滑らせた。
「やっぱり・・・そう言う事か。」
「はぁ。全て話す。」
「あぁ、頼む。」
「お前は、湖でアースの力を使う事ができるようになったな?」
「そうだな。」
「アースの力とエンペラーの力の融合は、薬の効力を消す準備の様な物だ。」
玲夢は、山を指差す。
「あの山にある、神社のほこらの祭壇を動かすと、開けた空間があるそうだ。
お前がその空間にある光る石に触れ、干渉すれば、全ての薬の効力を消す事ができると奴は言っていた。」
「そうか。何故それで俺は死ぬんだ?」
「ぐすんっ。」
玲夢は、耐えきれず泣き出した。
「嫌だー!」
玲夢は倫に抱きついた。
「死なないで欲しい。お願いだ。」
「玲夢、落ち着いてくれ!
教えてくれ。なんで俺が死ぬのかを。」
「わかった。
お前の能力、エンペラーの副作用は、
生死逆転。お前は薬を打たれた時、死んでいた。だから、お前は今生きている。
だか、薬の効力が無くなる時、また生死逆転が起きるとアースが言っていた。
お前は今生きている。
だから・・・。」
「そうか・・・。」
倫は玲夢を抱きしめかえした。
「・・・そうか、そうか。そうか・・・。
死にたくないな〜!」
倫も半信半疑だった自分の死が、確信へ変わり耐えきれず涙を流した。
「俺、玲夢と幸せに暮らしたい。
ただそれだけなのに・・・。
エンペラーの力なんて、なんの約にも立たないじゃねーか!」
「そうだな。
私も倫と幸せに暮らしたかった。
お前・・・覚悟を?」
「あぁ。俺がエンペラーとして、理性を保って世の中を治めたとしても、
俺が死んだ後、大きな力がなくなった世界には、必ず争いが起きる。
そして、今の人類が本気でやりあったら、確実に人類は滅ぶ。
アースが記憶を俺に流し込んだのは、
それを伝えるためだったんだと思う。
俺が幸せになっても、俺達の子供や孫にそんな世界は見せたくない。」
「そうか。
私も覚悟をきめる。
もし、お前が明日死んでしまったら、
お前の後を追いたい。
それだけは許して欲しい。」
「ダメだ。」
「何故だ!私の命だ!決めるのは私だ!」
「玲夢、俺の分まで生きて欲しい。
俺は、俺じゃない誰かとお前が幸せになっても、化けて出たりはしない。
お前は、俺と一緒に幸せになっているって思って生きろ。
生きるんだ!」
「グスン。
逆の立場なら・・・私もそう思っただろう。わかった・・・。」
二人は横になり、長い長い口づけをした。
二人の目じりには、涙が溜まっては、
流れていた。




