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門前での醜態により、ギャレットの名声は一夜にして崩れ去った。
「あのギャレットって男、恋人を倒れるまでこき使っていたらしいぞ」
「自分の手柄のために恋人の寿命を削らせていたんだって」
「騎士団の前で大暴れして捕らえられたらしいぜ。情けない奴だ」
街中に真実が広まり、今まで彼を持ち上げていた人々は一転して冷ややかな視線を向け始めた。
ギャレットが「怪我を引き受けてやる」と近づいても、人々は不気味がり、避けるようになった。
「なんでだ……なんで俺がこんな目に遭わなきゃならないんだ……!」
自暴自棄になったギャレットは、酒に溺れた。
シルヴィという後ろ盾を失ったことで、彼の心は急速に荒廃していった。
左腕の傷は自然治癒したものの、ひどい引きつれが残り、以前のように自由には動かなくなっていた。
(俺は聖人だ……! シルヴィが俺を捨てたのが間違いだったと思い知らせてやる……! もっと酷い怪我を“治癒移行”して、街中の奴らをひれ伏させてやるんだ!)
歪んだ承認欲求と怒りは、ギャレットの判断力を完全に狂わせていた。
そんな折、街に激震が走る出来事が起きた。
領地を視察中だった上級貴族、アルベルト伯爵の乗った馬車が崖から転落したのだ。
伯爵は一命を取り留めたものの、全身の骨が砕け、内臓は破裂寸前という極めて重体な状態で邸に運び込まれた。
街の医師も治癒師も手が出せず、ただ死を待つのみという惨状だった。
これを聞きつけたギャレットの瞳に、狂気の光が宿った。
(上級貴族……! 伯爵様だ! もしこの怪我を俺が引き受けて救ったらどうなる!? 伯爵様は俺に絶大な財産と地位を与えてくれるはずだ! そうすれば、騎士団の一治癒師に過ぎないシルヴィなんて見返してやれる!)
「待っていろ、伯爵様! 今、この俺が救ってやりますよ!」
ギャレットは静止する館の召使いらを押し切り、重病人の横たわるベッドへと突進した。
「おい! 何者だ貴様! 控えよ!」
「俺は“治癒師”のギャレットだ! 伯爵様の命を救えるのは俺しかいない!」
ギャレットは制止を聞かず、瀕死の伯爵の胸に触れ、“治癒移行”を最大出力で発動させた。
――ゴゴゴゴゴ……!
“治癒移行”をした瞬間、ギャレットの顔色が激変した。
「ぐ……っ!? あ……ガハッ……!?」
彼が今まで引き受けてきたのは、骨折や切り傷、命に別状のない程度の怪我だったのだ。
伯爵が負っていたのは、死の淵にある凄絶な『破壊』そのものだった。
全身の骨が折れ砕ける嫌な音がギャレットの体内から響き渡る。
内臓が破裂し、目、耳、鼻、口というあらゆる穴から大量の血が噴き出した。
「あ……がっ……あ……っ!?」
ギャレットは激痛の叫び声をあげることすらできず、白目を剥いてその場に崩れ落ちた。
伯爵の傷と痛みのすべてが、一瞬にしてギャレットの肉体へと流し込まれたのだ。
シルヴィを失った男が背負うには、あまりにも巨大すぎる死の代償だった。
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