第十三話
魔人族の最高位、十魔将の一角であるシン・ヴァンガードとの戦いから一週間が経った。
シンを倒した後、僕達は遅れてやってきた本隊と共に大将を討たれ混乱した魔人軍を退けた。
しかし、こちらの行軍が敵側に知られていたこともあり一度撤退し作戦を練り直す運びになり僕達は、グランバーグ砦に向かう際、補給の拠点として利用したカレラ王国領の商業都市メルローに身を寄せる事になった。
商業都市メルローは、カレラ王国とアーク王国の国境近くにあり両国の交易の中心地として栄えている大きな街だ。
その街のメインストリートで今僕は、顔に強張った笑みを浮かべながら二人の少女と歩いていた。
1人は、今回一緒にこの世界に召喚されたクラスメイトの結城梓。もう1人は、以前召喚された異世界で一緒に冒険した仲間ステラ・クインズだ。
両名とも非常に可憐な容姿をしており街行く男性は、必ずと言っていいほど彼女達を好奇の視線で見つめ相好をだらしなく崩した。
しかし、その二人の美少女の間に挟まれている冴えない男(僕の事)に気付くと遠慮のない嫉妬の視線をぶつけてくるのでたちが悪い。
更に問題なのは、何故か2人ともが、僕の左右の腕にそれぞれ自分の腕を絡め身体を僕に密着させるような態勢をとっている事だ。
僕は、腕に感じる女の子特有の柔らかい感触と漂ってくる甘い香りに頭がくらくらしていた。
自慢じゃないが僕は、生まれてこのかた女の子と遊びに出かけた事などない。当然、今のような両手に花といった状態なんて経験したことがなく動揺を隠しきれないでいた。
……なんでこうなったんだっけ?
僕は、今朝の二人と出掛ける事になった経緯を思い出す。
「ヒカルちょといい?今日暇なら買い物に付き合ってくれないか?」
メルローに来て一週間が経ち、すっかり落ち着いた様子を取り戻したステラから朝食を食べ終わった後に僕は、誘いを受けた。
仮設テントでごろごろしていた僕は、特に用事もないことから二つ返事彼女の誘いに応じた。
ステラは、僕の返事に花のような笑顔を浮かべ準備をしてくるからちょっと待つように僕に指示をして支度をしに行った。
僕は、不覚にも彼女の笑顔にどきどきしてまい顔が赤くなるのを感じた。
ステラすごい綺麗なったな。
記憶にあるステラよりも成長した姿に僕は、今さらながらに気付かされた。
しばらく、ステラを待っていると今度は、結城がやってきた。
普段着ているブレザーではなくこちらの世界で買ったのか花柄のワンピースを着ていてそれが彼女によく似合っていて可愛かった。
結城とは、先の戦いで喧嘩したような関係になってしまっていて、一応事情は、説明したけどそれ以来まともに会話することがなかった為、突然の訪問に僕は驚いた。
彼女は、しきりに髪を撫でながら緊張した面持ちで僕に話しかけた。
「い、今から出掛けない?や、八神君と最近ちゃんと話してなかったし。暇ならでいいんだけど……。」
「ああ、いいぞ。」
……え?
僕が返事をしようと口をひらいた時、いつの間にか支度を完了し僕達のすぐ近くに着ていたステラが、結城の言葉に答えた。
「えっ?ステラさん?」
思いもよらない所から返事が返っきて、結城が一瞬きょとんとした顔になる。
「うん。実は、これからヒカルと一緒に買い物に行く約束をしていたんだ。アズサもヒカルを誘いに来た見たいだし良かったら、一緒にどうだ?」
「そう、だったんですか……。」
結城は、ステラの言葉に目線を下げ、ワンピースのスカート部分を強く握りしめた。
しばらく考えてる様子だったが、結城は、顔を上げると不敵な笑みを浮かべて元気良く言い切った。
「……よし。私も一緒に行きます!!」
その様子を見たステラは、満足そうに頷いて言った。
「うむ。楽しみだな!」
僕は、二人と一緒に出掛けることになった。
そしてメインストリートへ歩いて道すがらつい昔の癖で僕は、結城がいるのにステラの手を握って歩こうとした。
僕はしまったと思ったが、ステラも昔の事を思い出したのか嬉しそうに差し出した僕の手を握りしめた。
それを見た結城が、何故かムッとした表情になりステラと手を繋いでいない僕の腕に自分の腕を絡ませた。
「え、ちょ」
結城の行動に僕は、戸惑いの声をあげたのだが、
「……何か問題でも?」
にっこりと笑いながら、腕をさらに強く締め付けてくる結城に身の危険を感じ何も言えなかった。
「む。」
腕を絡ませた僕らを見て、ステラも結城に対抗するかのように腕を絡ませて来た。
こうして僕は、今の状態になってしまった。
……2人ともいったい何を考えているんだろう?




