↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ポイ活、始めました〜婚約破棄された悪役令嬢ですが、私だけ「ポイント」が貯まるようなので毎日お得に暮らします〜  作者: よつ葉あき
第1章 異世界ポイ活、始めます。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/48

8.私の大切な相棒。


 誤魔化すのは、やめよう。

 そう決意したときだった——。


「ひゃっ!」

「ナディア院長!?」


 突然、脚にひんやりとしたものが触れ、私は思わず悲鳴を上げた。

 足元へ目を向けると――。


「えっ!?」


 そこには、どうやってついてきたのか、院長室のテーブルの下にいるはずのルーがいた。


「ス、スライム!」


 メイが悲鳴を上げる。

 そしてリコは、近くに立てかけてあった箒を素早くつかむと、大きく振りかぶった。


「駄目――!」


 私は叫びながら、咄嗟にルーへ覆いかぶさった。


「この子は敵じゃない! 私の……っ」


『ポイ貯め』では、“ペット”と呼ばれていたルー。


 けれど、私にとっては――。


「大切な子なの! 悪さなんてしないから、乱暴なことはしないで!」


 これまでのナディアを演じることも忘れ、必死に叫んだ。

 リコは箒を振り上げたまま固まり、メイも目を見開いている。


 二人とも、信じられないものを見るような表情で私を見つめていた。

 誰も言葉を発しない。

 かすかな風の音だけが聞こえる裏庭に――。


「ぷきゅ~?」


 場違いなほど気の抜けたルーの鳴き声が響いた。


 ◇◆◇


「……ナディア院長は、【テイマー】だったんですか?」

「メイ!」


 メイが疑問を口にすると、リコが強い口調で制した。

 メイも自分の失言に気づいたらしく、慌てて両手で口を押さえる。


 【テイマー】。

 動物や魔獣、モンスターを使役することに長けた天職だ。

 私がスライムのルーを抱えているのだから、そう思うのも無理はない。

 

 ただ、この世界では他人の天職やスキルを尋ねるのは大きなマナー違反だ。

 特に以前のナディアなら、こんなことを聞かれれば烈火のごとく怒っていただろう。


「ナディア院長、申し訳ございません!」


 リコが再び深く頭を下げる。

 それを見たメイも、慌てて桶の水から手を抜き、リコに倣うように頭を下げようとした。


「まだ、冷やしてないとダメよ!」

「え! は、はい……っ」


 私に注意され、メイは再び桶に手を浸けた。

 

 ――志摩子としての記憶を取り戻した今の私には、天職やスキルについて話すことへの抵抗はない。


「私は【テイマー】ではないわ。でも、この子……ルーは、私の大切な子なの」


 腕の中のルーをぎゅっと抱きしめながら、素直な気持ちを口にする。


「ぷっぷぷ~!」


 ルーは嬉しそうな声を上げ、私の腕の中でぷるぷると体を震わせた。


 そんな私たちを、リコとメイは目を丸くして見つめている。

 二人とも、完全に言葉を失っていた。


 すると、ルーが私の腕からぴょんっと軽やかに飛び出し、メイのそばへ近づいた。


「ぷー!」

「きゃあ!」


 ルーの体から、にゅっと長い触手が伸びる。

 その触手は、メイの赤くなった右手をそっと包み込んだ。


「あ……っ」


 ひんやりとした感触に驚いたのか、メイが小さく息を漏らす。

 けれど、すぐにその表情から緊張が抜けていった。


「ぷぷ~」


 大丈夫だよ。


 そう言っているかのように、ルーの鳴き声はどこまでも優しく聞こえた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。