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異世界ポイ活、始めました〜婚約破棄された悪役令嬢ですが、私だけ「ポイント」が貯まるようなので毎日お得に暮らします〜  作者: よつ葉あき
第3章 美食の街、クリスディア。

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52/55

52.懐かしい味。


「……本当におにぎりだ」


 目の前に置かれたおにぎりと豚汁。

 無意識に口から漏れたのは、なんのひねりもない、そのまんまの感想だった。


 クリスディアは数年前から、『美食の街』と呼ばれるようになった。

 だから、美味しいものに出会えるだろうとは期待していたが、まさかおにぎりと豚汁に出会えるなんて……! 


「ええ。普通のおにぎりと豚汁よ」


 にこにことジルティアーナ様がこちらを見ていたので、恥ずかしくなってしまう。

 ジルティアーナ様が続けた。


「おにぎりの具は何がいい? 色々あるわよ!」


 ばばーんっ!


 そんな効果音が聞こえそうな勢いで、一枚の紙を見せてくれた。

 そこには、たくさんのおにぎりの名前が並んでいた。


 塩むすび、梅、昆布、おかか、ツナマヨ……といった定番。

 かと思えば、卵黄の醤油漬けや牛しぐれ煮などもあり、どれも美味しそうだった。


 ……どうしよう、全部食べたい。


 ◇


 悩んだ末、私はおにぎりを二つ選んだ。

 ひとつは梅。

 ふたつめは、卵黄の醤油漬けにした。


 二つのおにぎりの横には、豚汁。

 白い湯気がたち、懐かしい味噌の香りが鼻腔を刺激する。


「では、いただきましょうか」

「はいっ!」


 ジルティアーナ様がかけた声に、フレイヤが元気よく返事をした。


 そして——。


「いただきますっ!」


 そんな声を聞きながら、私はおにぎりを手に取った。

 まずは梅のおにぎりから。

 ひと口目から梅を味わえるように、おにぎりの頂点には梅肉が乗っている。


 見ているだけで、自然と口の中に唾液が湧いた。

 そして、そっと口に運ぶ。

 まず感じたのは、酸っぱい梅の味。

 少し遅れて、ふっくらと炊かれたお米の味が口いっぱいに広がった。


 ……ああ、これ。

 私が知ってる、ごはんだ。

 おにぎりだ。

 

 続いて卵黄の醤油漬け。

 ねっとりとした卵黄と醤油の味が、ごはんと絡み合う。

 まるで、卵かけご飯を食べているようだ。

 

 そして豚汁をひと口飲めば、味噌の香りと豚肉の旨味が口いっぱいに広がった。

 温かい豚汁を飲み、体がじんわり温まっていく。

 

 でも。

 それ以上に、胸の奥がじんわりと温かくなった。

 

 ◇


「……おいしかったぁ」


 豚汁を飲み干した瞬間、自然とそんな言葉がこぼれた。

 すると、くすりと笑う声が聞こえた。

 目線をやると、やはりジルティアーナ様だった。


「フレイヤ様とヴィオレッタ様に新作を味わってもらおうと思って、おにぎりを用意したのだけど……大正解だったわね」

「私が一番はしゃいじゃってすみません……」


 なんだか恥ずかしくなった。

 するとジルティアーナ様が慌てて続ける。


「ううん、それは当然のことよ。わたしなんて、初めておにぎりを食べたとき、感動して泣いちゃったんだからっ!」


 ……え、泣いたの?


 すると、リズ様が深く頷いた。


「本当ですよ。それも、ただ泣くだけでなく椅子から崩れ落ちるものですから、最初は毒でも食べたのかと焦りましたよ」

 

 ……え、崩れ落ちたの?


 そんなリズ様の小言に、当の本人は「えへへ」と照れくさそうに笑っていた。

 

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