51.余計なこと言っちゃった?
おむつの使い方を既に知っているリコ以外の皆が、目を丸くする。
「今、すごい伸びなかった?」
「紙ですよね!?」
……まあ、布でできた“むつき”しか知らないと、色々びっくりよね。
でも、驚くのはまだまだよ。
ジルティアーナ様も同じことを思ったのか、得意げに笑う。
「すごいでしょう?」
ネロさんがおむつを手に取り、伸縮性を確認する。
「これなら、替えるときにエマが暴れてもやりやすそうですね」
「でも、さらにすごいのよ?」
ジルティアーナ様は、くまさんからおむつを脱がせる。
リズ様に声をかけると、コップに水を持ってきてもらった。
そして、その水をおむつの中へ一気に流し込んだ。
だが、もちろんたぷんとはするものの漏れてはいない。
「ええっ!」
「水はどこへ!?」
「ふふふ……これが日本の紙おむつの力よっ!」
ジルティアーナ様は胸を張った。
ネロさんがそっとおむつを確認する。
「あんなに水を入れたのに……!」
吸水面がもうさらっとしていることに、驚いているようだ。
うんうん、吸収ポリマーは優秀よね。
「でしょ? だからエマちゃんも、おむつの方が快適に過ごせると思うの」
「そうですね! ってこれ、どうしたんですか? 見たことない商品ですけど……」
【ポイ活】のことを知っている人たちが、ちらりと私を見るのが分かった。
……たぶん、私のスキルをどう説明すればいいか困ってるのかな?
そう感じたので、自分から明かすことにした。
そっと手を上げる。
「私のスキルで出しました」
「……ナディア様のスキルで、ですか?」
「はい」
そんな私に、ジルティアーナ様が心配そうに聞く。
「ナディアさん、いいの?」
「ここにいらっしゃるのは、みんなジルティアーナ様が信頼してる方々なんですよね」
「ええ」
出会ったばかりなのに。
なぜか、ジルティアーナ様のことは信用できる。
そんなふうに思えた。
だから、私は答えた。
「でしたら問題ありません」
ジルティアーナ様は一瞬、驚いたように目を見開いた。
「ありがとう、ナディアさん」
そう言って、笑ってくれた。
◇
それからさらに、紙コップやストローもテーブルの上に並べた。
それを手に取るヴィオレッタ様。
「ティアナ様とナディア様がいた、“日本”という世界は、この世界より随分技術が発展しているんですね」
厳密に言えば、日本は世界ではないんだけど。
そんなことを説明しても仕方ないので、黙っていた。
「魔力などがない分、科学や技術は発展してたわよね」
「そうですね」
ジルティアーナ様の言葉に頷く。
それに不思議そうに、フレイヤが首を傾げた。
「でもミキサーのような、ジルティアーナ様が開発した魔術具って日本にあったものを再現しているんですよね?」
「ええ」
「魔力がないのに、どうやって動かすんですか?」
「ああ、それは……」
私たちは、「電気」というエネルギーで機械など、さまざまな物を動かしていたことを説明した。
すると、フレイヤが納得したように手を叩いた。
「ああ! だからナディアはミキサーを見て、あんなこと言ったのね」
「何が?」
「『どうやって動かしてるの?』って、“電気がないのに”ってことだったのね」
「ああ、そうそう! 本来はコードが付いてて、それをコンセントってところに差して使うのよ」
そんな話をしていたときだった。
「……コンセントね」
「えっ」
ジルティアーナ様がぽつりと呟いた。
その目は、きらりと輝いている。
……あ。
なんか私、余計なこと言っちゃった?




