50.また秘密、知っちゃったね!
「ティアナ様」
「なに、リズ?」
「今の状況をネロさんにお話しないと、どう対応すればいいかお困りのようですよ」
リズ様の言葉に、ジルティアーナ様がハッとする。
「あ。ごめんね、ネロくん!」
そして私たちを紹介してくれた。
「こちらはウィルソールからいらしたナディア様と、リコさんよ」
私たちも自己紹介をする。
「ウィルソールで孤児院長をしております。ナディアと申します」
「同じ孤児院で働いております、リコと申します」
すると彼も、慣れた様子で一礼してくれた。
「私はリュミエール商会のネロと申します」
やはり商会の方だったらしい。
リュミエール商会——クリスディアで一番大きな商会だ。
最近では領外にも、少しずつクリスディアの商品が出回るようになり、ウィルソールでも大人気だ。
それにしてもまだ若そうだ。
リコと同じくらいの歳に見える。
だが、多くの貴族に囲まれても物怖じしないのはすごいなぁ。
さすが、リュミエール商会で働いているだけある。
そう感心してしまった。
ネロさんが、探るようにジルティアーナ様に視線を向ける。
「それで……今はティアナ様でよろしいのでしょうか?」
「うん。大丈夫よ! でもお二人とも私がジルティアーナであることも知ってるから、気楽に話して」
「いやぁ、気楽にと言われましても……」
ちらりとヴィオレッタ様とフレイヤを見るネロさん。
それに気づいたジルティアーナ様が笑った。
「ここにいる皆さんには、わたしが日本人だったこともお話したの」
「……にほんじん?」
ネロさんが首を傾げた。
「…………あれ?」
それに、ジルティアーナ様までなぜか首を傾げる。
すると、リズ様が一歩前に出て言った。
「ティアナ様。ネロさんには、貴女が前世の記憶を持っているということは、まだお話ししていなかったと思いますよ」
「あれ、そうだったっけ?」
そのジルティアーナ様の発言に、ネロさんが頭を抱えた。
◇
ジルティアーナ様は、自分がかつて日本人だったことをネロさんに説明した——。
それを聞いたネロさんは、疲れた様子で呟く。
「いつも……よくもまあポンポンと新しい商品や料理のアイデアが出てくるなぁとは思ってたけど……」
ちらりとジルティアーナ様に視線を向ける。
「まさか異世界の知識があったなんて……」
そう言って両手で顔を覆った。
ジルティアーナ様は、お茶を飲み干すとカップをソーサーに置いた。
「これでまた、わたしの秘密を知っちゃったね! ネロくん」
「“知っちゃったね!”じゃないんすよ。俺は平民! 普通の一般人の俺に重大な秘密をポロポロ漏らさないでよ」
なんか、だんだん分かってきた。
ジルティアーナ様はかなりうっかりさんのようだ。
◇
「これが……むつきですか」
ネロさんが不思議そうにおむつを眺める。
「むつきみたいに使うんだけどね、紙おむつの方が良いこと多いのよ」
「そうなんですか?」
「最近エマちゃんがよく動くようになって、『むつきを変えるのが大変!』ってエレーネさん言ってたでしょ?」
「はい」
エレーネさんという方が、先ほど話に出た赤ちゃんのお母さんらしい。
エマちゃんがその生まれた赤ちゃん。
そして、ネロさんはエマちゃんのお兄さんだという。
ジルティアーナ様がマジックバッグから、大きめのクマのぬいぐるみを取り出した。
「おむつだとね、こうやって履かせるだけだから、動くようになった赤ちゃんに使いやすいのよ」
そう言ってぱぱっとぬいぐるみにおむつを履かせた。




