47.たわしは武器ではありません。
「それにしても、スキルが【ポイ活】なんて、面白いわね!」
ジルティアーナ様が明るく言った。
「でも大変だったんですよ? ナディア自身も含め、この国の人は当然、【ポイ活】なんて知るわけがなくて……」
私はかつて——。
日本の記憶を思い出す前、わけのわからぬスキルにナディアが苦しんでいたことを思い出した。
「あー……。ジルティアーナが【ロストスキル】を授けられたときと似たようなことになったのか」
ジルティアーナ様が何かを思い出すように、呟いた。
「ところで、その【ポイ活】って、なんだったの?」
ミランダ様が首を傾げ、聞いてきた。
ジルティアーナ様は顎に手をやり、考える。
「わたしも日本でポイ活をしてました。買い物やサービスを利用するときなどに、ポイントを貯めることですね」
「それは……ポイントを貯めるとどうなるの?」
「貯めたポイントを、買い物の支払いに使ったりできます!」
ジルティアーナ様は得意げに答えた。
その説明は間違っていない。
でも、ミランダ様は首を傾げた。
ポイントなんて知らないミランダ様には理解が難しそうだ。
ミランダ様が私に視線をやる。
「ナディア様もポイントを買い物に使っているのですか?」
「いえ。私のスキルの場合は、買い物に使うんじゃなくて、ポイントを色んなアイテムと交換できるんです!」
「アイテムがもらえるってこと?」
「ぷぷぅ!」——『そうだよー』
ミランダ様の疑問にルーが答えた。
ミランダ様は目を丸くし、ルーを凝視する。
「それ……なんでスライムのおもちゃなんて持ってるのかしら? って思ってたけど、まさか本物!?」
「ぷぅ!」——『るーはおもちゃじゃないよー』
私の腕から飛び出したルーが、ばいんばいん跳ねる。
みんながぽかんとルーを見つめる中、ジルティアーナ様が一歩ルーに近づき話しかけた。
「ルーちゃんごめんね。悪い意味で言ったんじゃないのよ?」
「ぷー?」
「ルーちゃんがかわいいから、おもちゃかもってミランダお姉様は思っちゃったのよ」
その言葉に、ルーの水色ボディがほんのりピンクになった。
……え? なに、照れてるの?
「ぷぷぷぅ~」——『ええー、るーそんなにかわいいー?』
「うん。とっても可愛いわよ」
「ぷぷぅ!」——『えへへー』
ぽよんと体を弾ませ、ジルティアーナ様の胸に飛び込むルー。
「ルーちゃんっ!」
それにはリコがいち早く反応し、ルーを止めようとしたが——。
「あら、ルーちゃん! ひんやりしてて、ぷるんとしてて気持ちいいわね」
「ぷぷぅ~」——『もっとさわってもいいよー』
表情が分かりにくいルーだが、なんとなく、どやってる気がした。
◇◆◇
「こ、これはっ!」
ジルティアーナ様は“あれ”を掴むと、目を見開いた。
私がもう一つだした“あれ”を、レーヴェさんも手に取り、じっくり観察したあと茶色の部分に軽く触れた。
「この茶色の棘のようなものは、握ると痛いですが……武器ですか?」
「武器ではないわ、レーヴェ」
「で、なんなのそれは?」
そんなジルティアーナ様を見ていたミランダ様が、どこか冷めた様子で尋ねた。
「ふふ……これはですね」
溜める。
すぐには答えない。
……それほどのものだろうか?
「たわしです!!」
じゃじゃーん! と漫画だったら効果音が出そうな勢いで、ジルティアーナ様はたわしを掲げた。
「…………」
みんなの反応は、微妙だった。




