44.秘密の共有。
「ミランダお姉様、どうかされたのですか?」
「どうかされたじゃないのよ! あなた、ナディア様と何の話をしているの?」
詰め寄るミランダ様。
私はそれをハラハラしながら見ていたが、ティアナ様は嬉しそうに笑う。
「お姉様! ナディア様は、実は……」
と、言いかけて口を手で押さえた。
怪訝そうに、ティアナ様を見るミランダ様。
「なに? ナディア様が実は、どうしたの?」
「ごめんなさい」
「は?」
「わたしが勝手に話していいことじゃありません」
「ちょっと、ティアナ!?」
ジルティアーナ様がぐいぐいとミランダ様の体を押し、扉の外まで追いやった。
「お姉様ごめんなさい。確認しなきゃいけないので、数分お待ちください」
「ちょ……っ! ティアナ!?」
バタンッ。
扉を閉めた。
ジルティアーナ様は大きく息を吐く。
私の方を向くと、ぺこりと頭を下げた。
「すみません……。危うく、ナディア様が日本人だったことを話してしまうところでした」
上級貴族、それも領主様に頭を下げられて、どう反応すればいいか分からない。
私が答えられずにいると、リズ様が口を開いた。
「本当ですよ。ナディア様の秘密を勝手にお話ししてしまうのかとハラハラいたしました」
「嬉しくて、つい……」
ため息を吐き、小言を言うリズ様は、侍女というよりも手のかかる妹を叱るお姉さんのように見えた。
「あの……もしかしてリズ様だけでなくミランダ様も、ジルティアーナ様が転生者だと知っているのですか?」
「ええ。ミランダお姉様だけでなく、ステラやレーヴェを含めた側近たち、それからほかにも何人かには伝えてあるわ」
領主様が異世界からの転生者だなんて、かなりの秘匿情報だと思っていた。
それが意外と多くの人に共有されていることに驚いた。
「もしかして……」
ジルティアーナ様が少し、聞きにくそうに尋ねてきた。
「あなたが日本の記憶を持っているということは、誰にも話していない?」
心配そうにするジルティアーナ様に、慌てて否定する。
「いえ、リコにだけは全てを話してます。【ポイ活】のことも、ルーのことも。私が異世界の日本という国で生きて死んだことも」
私の返答に、一瞬驚いた表情をしたジルティアーナ様。
でも、次の瞬間にはふわりと笑った。
「そう……あなたに相談できる人がいて、良かった」
その言葉に、ジルティアーナ様も苦労されたであろうことが感じられた。
そして、ジルティアーナ様が言った。
「出来れば、ナディアさんが日本の知識を持っていることを、ミランダお姉様に伝えてもいいかしら?」
私の——ナディアの記憶には、ミランダ様と親しかった覚えがない。
「これは、もちろん命令ではないわ。ナディアさんが嫌なら、お姉様にも秘密にする」
でも、そんなふうに言ってくれるジルティアーナ様が信頼するお姉様になら、私の秘密を話しても大丈夫。
そう思えた。
「承知いたしました」
でも、純粋に思った疑問を問いかけた。
「でもどうして、ミランダ様に私の記憶のことを伝えたいのですか?」




