4.100ポイントで、目を買いました。
「……470ポイント」
一気に増えた数字を呆然と眺める。
「ぷぅ!」
ルーがステータス画面の前で跳ねた。
まるで「ここを見て」と言っているようだ。
促されるまま画面へ視線を向けると、そこには新たな文字が表示されていた。
『ポイントは、ペットに使うこともできるよ!』
「えっ、相棒ってペットだったの!?」
「ぷっぷぅ!」
ルーは、ばいんばいんと大きく跳ねる。
全身で「使って!」と訴えかけられているような気がした。
「何に使えるのか、まだよく分からないけれど……まあ、見てみるだけならいいわよね」
表示の下に現れた『YES/NO』のうち、『YES』を選ぶ。
画面が切り替わった。
たわしなどの下に、ルーに使えるらしい新たな項目が追加されていた。
『ルーのごはん/10P』
『ルーのおやつ/10P』
そのあたりは、分かる。
ルーには、ごはんやおやつが必要なのだろう。
けれど、それ以上に私の目を引いたのは――。
「『ルーの目』!?」
思わず、画面を二度見する。
目って何!?
怖いんだけど!
目がなくても、ルーは周囲の様子を感じ取れているらしい。
先ほども、ステータス画面の表示を教えるように跳ねていた。
けれど、わざわざ『目』が交換用のアイテムとして並んでいるということは――。
「もしかして、ちゃんと見えてないの?」
急に心配になり、私はルーを見つめた。
けれど、目も口もないルーは、ただぷるりと体を揺らすだけ。
何を考えているのか、まったく分からない。
「うーん……」
もう一度、画面へ視線を戻す。
『ルーの目/100P』
100ポイント。決して安くはないが、今なら余裕で使える。
「ぷぅ?」
私を見上げるように、ルーが小さく鳴いた。
「うっ……!」
ルーと出会ってから、まだ数分。
一時間どころか、十分も経っていないかもしれない。
それなのに、私はもう、この小さなスライムにすっかり愛着を抱いてしまっていた。
「そんなふうに鳴かれたら、放っておけないじゃない……」
「ぷぅ?」
「もう、悩んでも仕方ないわ!」
私は勢いよく『ルーの目』を選択した。
すると、画面の中央に確認表示が現れる。
『100Pを使って「ルーの目」と交換しますか?』
『YES/NO』
「もちろん、YES!」
迷いを振り切るように、『YES』を押す。
その瞬間――。
画面上部の保有ポイントが変化した。
【470P】
から――。
【370P】
「ああっ、ごっそり減った……!」
分かってはいた。
でも、一度に100Pも使ったのは初めてだ。
実際に減った数字を見ると、衝撃を受ける。
けれど、そんな私の気持ちをよそに――。
「ぷぅ!?」
ルーの体が、ピカッと眩しく輝いた。
「わっ!」
思わず腕で目元を覆う。
数秒後。
光が弱まったのを感じて、そっと目を開けると――。
「…………!」
そこには、先ほどまでとは少し違うルーがいた。
つるんとして何もなかった顔らしき部分に、小さな瞳が二つついている。
黒くて、まん丸で。
きらきらとこちらを見つめる、つぶらな瞳。
「目がついた……!」
「ぷっぷぷ~!」
ルーは嬉しそうに、ばいんばいんと何度も跳ねた。
「見える? ちゃんと見えてるの?」
「ぷぅ!」
返事をするように鳴いたかと思うと、ルーはその勢いのまま私の胸へ飛び込んできた。
「わっ!」
慌てて両腕で受け止める。
ひんやりと柔らかな体が、胸元に甘えるように寄ってくる。
「もう、危ないじゃない」
「ぷぷ~」
そう言いながらも、口元が緩んでしまう。
さっきまで表情なんてまったく分からなかったのに。
今は、新しくついた瞳が嬉しそうに私を見つめている。
「ふふっ。そんなに嬉しいの?」
「ぷぅ!」
何を言っているのかは、まだ分からない。
けれど、その小さな瞳で私をじっと見上げる姿を見ていると――。
『ありがとう! よく見えるよ!』
そう言ってくれているような気がした。
「……ルーの目、交換して正解だったみたいね」
「ぷっぷぅ!」
私の腕の中で、ルーが嬉しそうに大きく弾んだ。




