3.ポイ活の相棒、できました。
孤児院長室に戻り、ひと息ついていると——。
テッテレーレー、テッテレー♪
いつもの効果音……のようだけど、少し豪華にしたような音が鳴った。
『交換したアイテムを合計5人以上に使ってもらったね!』
『そんなナディアさんに……』
『はじめてミッション!』
「えっ!?」
思わず声を上げる。
さらに文字は続いた。
『ポイ活の相棒を選ぼう!』
「あ、相棒?」
そんな機能、志摩子が使っていた『ポイ貯め』にはなかった。
やはり、まったく同じアプリというわけではないらしい。
「相棒ってなんなの?」
私はさっそく『相棒を選ぶ』というボタンに触れた。
ピロン!
軽快な音とともに画面が切り替わる。
そこには三体のキャラクターが並んでいた。
赤、青、緑。
そこには、三体のスライムが並んでいた。
「全部、スライムじゃない!」
思わず声を上げる。
犬とか猫とか、せっかくのファンタジーなんだからドラゴンとか……もう少しいろいろいるのかと思ったのに!
「相棒ねぇ……」
まあ、見た目はそれぞれ違う。
赤いスライムは、ころんと丸くて元気そう。
緑のスライムは、でろーんと地面に溶けるような姿をしている。
そして青いスライムは、ぷるんとしたしずく型。
「スライムといえば、やっぱり青かしら」
志摩子だった頃に見た漫画やゲームの影響か、スライムといえば青という印象が強い。
「じゃあ、この子」
私は青いスライムに触れた。
ピロン!
『青いスライムでいい?』
『はい』
『いいえ』
「はいっと」
ぽちっと押した。
すると――。
「え?」
目の前のテーブルへ、光の粒が集まり始めた。
「……この流れ、まさか」
たわしの時と同じだ。
慌てて身を引く。
光の粒はテーブルの上でひとつの塊となり、ピカッと強く輝いた。
眩しさに目を細めた、その次の瞬間。
「…………え?」
テーブルの上に。
青いスライムがいた。
先ほど画面で選んだ、しずく型のスライムだ。
「…………」
私は画面を見る。
そして、テーブルを見る。
もう一度、画面。
スライム。
「いやいやいや……」
キャラクターを選んだつもりだった。
アプリの画面上で、相棒として表示されるようなものだと思っていた。
なのに。
目の前に、本物がいる。
青いスライムは、ぷるるん、と体を揺らした。
「……本物?」
「ぷぅ!」
「鳴いた!?」
思わず身を乗り出す。
目も口も見当たらない。
表情だって分からない。
それなのに、スライムは「そうだよ!」とでも言いたげに、ぐいんぐいんと体を伸ばしている。
「スライムって、鳴くのね……」
「ぷぅ」
「しかも返事するの!?」
なんだか、かわいい。
私は恐る恐る手を伸ばした。
するとスライムの方から、私の指先にすりっと体を寄せてくる。
「わわっ!」
ぷるぷると柔らかく、少し冷たい。
「ひんやりして、気持ちいいわね」
「ぷぷ~」
まるで褒められて喜んでいるように、青い体が左右に揺れる。
ずいぶん昔のことなのであまり覚えていないけれど、息子が小さい頃に作っていたおもちゃのスライムも、こんな感触だった気がする。
「ふふっ。なんだか、かわいいわねぇ」
指先でぷにぷにと触っていると――。
ピロン!
「今度は何!?」
再び『ポイ貯め』の画面が切り替わった。
『ご主人さま! 相棒に名前をつけてね!』
「名前?」
まさかの指示に、私は目の前のスライムを見つめる。
けれど、当のスライムは相変わらず、ぷるるんと楽しそうに体を揺らしているだけだ。
画面を確認するが、『名前をつけてね!』という表示にはバツ印がない。
「もしかして、名前をつけるまで先へ進めないの?」
「ぷぅ?」
「あなたの名前よ。何がいいかしらねぇ」
スライムに聞いたところで、答えてくれるはずもない。
「うーん……」
青いスライムを見つめていると、ふと、日本で飼っていた猫の姿が脳裏に浮かんだ。
名前は、ルル。
子どもたちと一緒に可愛がっていた、大切な家族だ。
とても甘えん坊で、私がソファに座れば、いつも隣へやって来て体をすり寄せてきた。
目の前のスライムが指先に体を寄せてくる様子は、どこかルルに似ている。
「同じ名前というのも何だし……」
私は少し考えてから、スライムへ笑いかけた。
「じゃあ、ルー。ルーっていうのはどうかしら?」
「ぷぷ~っ!」
「わっ!」
スライム――改めルーは、嬉しそうにぽよんと大きく跳ねた。
「ふふっ。気に入ってくれた?」
「ぷぅ!」
「じゃあ、あなたは今日からルーね」
そう告げた瞬間――。
テッテレー♪
「また鳴った!」
『おめでとう、ナディアさん!』
『はじめてミッション「ポイ活の相棒を選ぼう!」達成!』
『300P獲得しました!』
「300ポイント!」
画面上部の数字が切り替わる。
【170P】
から――。
【470P】に。
その横で、ルーが「ぷぅ!」と得意げに跳ねた。




