2.たわしの次はウェットティッシュ!?
しばらくして、子どもたちがいなくなったあと、私は庭に戻ってきた。
そこには、洗い終えた靴がずらりと並んでいた。
そして、その端に吊るされた——たわし。
私は思わず微笑みながら、たわしに「お疲れ様」と話しかけた。
その時——
てってれー♪
『おめでとう、ナディアさん!』
『子どもたちに“たわし”を渡して靴を綺麗にできたね!』
『ボーナス 100ポイント!』
「えっ!?」
ステータス画面を確認すると、たわしのせいで0Pになってしまった保有ポイントが、100Pに変わっていた。
さらに……
テッテレーレー、テッテレー♪
「今度は何!?」
さらに軽快な音が鳴った。
『獲得ポイント100ポイント達成!』
『新しい商品が交換できるようになったよ!』
(ということは“たわし”以外にも交換できるものが……っ!?)
私は『ポイント交換』をタップした。
『現在のナディアさんが交換できるのは、こちらの商品!』
『この中から選んでね!』
期待を胸に、『OK』を押した。
『たわし/10P』
『ポケットティッシュ/10P』
『ウェットティッシュ/10P』
うん、地味。
たわし、ポケットティッシュ、ウェットティッシュって商店街のくじ引きでもらうハズレ景品みたいじゃない!!
だが、はっとした。
たわしも「いらなーい」なんて思ってしまったが、あんなに子どもたちは喜んでくれた。
ポケットティッシュに、ウェットティッシュ。
この世界にも紙はある。
でも安価ではないので、使い捨てにするようなものではない。
……これは、意外と使えるかもしれない!
◇◆◇
食堂を覗くと、孤児たちが食事をしていた。
騒がしい中、大きい子たちは幼い子の食事を手伝ってあげていた。
「あ!」
がちゃんっ!
小さな女の子が、煮込み料理をこぼしてしまった。
しかもスプーンを使うのが面倒になったのか、そのまま手掴みで食べていたらしく、手も口も頬もベタベタだ。
「もー、何やってんだよっ」
ロイが少し乱暴に小さい子の口を拭く。
「やー!」
「ロイ、そんなゴシゴシ擦ったら痛いわよ」
嫌がる女の子を見て、いつもみんなの面倒をよく見てくれているリコが注意をした。
「ロイ」
「い、院長!」
私が声をかけると、みんながギョッとした顔でこちらを見た。
今までナディアが食堂にくることなんてなかったからね。
でも、これはウェットティッシュの出番!
「これを使いなさい」
ポイッと投げる。
「これは……?」
ロイは受け取った手のひらサイズの小さな包みを、しげしげと眺めて首をかしげた。
……しまった。開け方も分からないのか。
私はロイからウェットティッシュを回収すると、ペリっと開封口のテープを剥がした。
そこから一枚、ウェットティッシュを取り出す。
「これで拭いてあげなさい」
ロイはそっと手を伸ばし、ウェットティッシュに触れる。
「な、なにこれ! 濡れてる!?」
「ウェットティッシュよ!」
「ウ、ウェットティッシュ!?」
戸惑いながら、ロイはウェットティッシュを広げてみる。
「これって布?」
「布に似てるけど、ちょっと違うの。使ったら捨てられるのよ」
「捨てるの!?」
そして、私に促され、そっと女の子の顔を拭いた。
「んー!」
「わっ、簡単に取れる!」
さっきは嫌がっていた女の子も、ウェットティッシュなら平気そうだ。
(よかった。ウェットティッシュも使えたみたいね)
ふと横を見ると、ほかの小さな子たちも顔がベトベトだ。
「はい。よかったらどうぞ」
「え! あ、ありがとうございます」
戸惑いつつも、ウェットティッシュを1枚取ったリコ。
丁寧に四つ折りにして、横にいた小さな女の子の顔を拭いた。
「すごい! この紙がやわらかいから、子どもも痛がらないですね」
嬉しそうに笑ったが、直後その顔が曇った。
「これ、どうすれば良いのでしょうか? 洗えばまた使えますか?」
「洗いはしないわよ。それ、使い捨てだから」
「え!」
その時——
てってれー♪
例の音が鳴り響いた。
だが周りの様子を見るに、この音は私にしか聞こえていないようだった。
そして、アナウンスが続く。
『おめでとう、ナディアさん!』
『子どもたちに“ウェットティッシュ”を渡して顔や手を綺麗にできたね!』
『ボーナス 100ポイント!』
思わず口角が上がりそうになったが、我慢する。
そんな中、リコが使い終えたウェットティッシュを改めて見つめた。
「こんな凄いものを、捨ててしまうのは……」
「気にしなくていいわよ。まだあるから」
気を良くした私は、追加で交換しておいた二つのウェットティッシュも取り出した。
最初の一つと合わせて、計三つをリコに渡す。
(やった! また100ポイントゲットできたわ~)
やっぱり交換したアイテムを、誰かの役に立てればポイントが貰えるのね!?
そう確信し、私は孤児院長室へと戻った。




