38.ルーの言葉が分かってる!?
リコも私の横に腰を下ろす。
すると金髪の女性がお茶を用意してくれた。
高そうなティーセットに内心どきどきする。
粗相のないようにしなきゃ……!
そう思った矢先、「あ、だめっ!」と珍しくリコが焦った声を出した。
「ぷぷぅ」——『おいしいにおいー』
リコが持っていた鞄から顔を出したのは、ルー。
ちらりと金髪の女性の手元を見ると、そこにはお茶菓子のクッキーがあった。
時間が止まる。
ルーは孤児院に置いてきたつもりだったが、一緒に来たかったようで、いつの間にかリコの鞄に忍び込んでいた。
途中でそのことに気がついたが、引き返すこともできず……。
「絶対大人しくすること!」と約束し、鞄に忍ばせていたのだ。
けれど、クッキーのにおいに釣られてしまったようだ。
ど、どうしよう……!
「まあ……! その子がルーちゃん?」
……え?
聞いてきたのは、ジルティアーナ様だった。
なんで、ジルティアーナ様がルーの名前を?
呆然としていると、フレイヤが答えた。
「そうです。クッキーの匂いが気になってるみたいですね」
「あら、クッキーが好きなの? この子にもあげていいかしら」
ジルティアーナ様が私に問いかける。
「は、はい」
私の返答に、笑顔で頷くと「リズ」と金髪の女性に声をかけた。
金髪の女性は、リズ様というらしい。
リズ様は小さい皿に何枚かのクッキーを取り分けると、ルーの前に置いた。
「ぷぷ~」——『いただきまーす』
ルーが触手を伸ばし、ぽいっとクッキーを体に取り込んだ。
しゅわわ~。
ルーの半透明なスライムボディの中で、クッキーが溶けていくのをみんなで見守った。
「ぷっぷ~」——『おいしー』
ルーが体をばいんばいん跳ねさせる。
とてもおいしかったようだ。
「ぷぷぷ~!」——『このながいの、もっとたべたーい』
静かな部屋の中にルーの鳴き声だけが響く。
“長いの”——どうやら薄いラングドシャ生地をくるりと巻いたシガレットクッキーが気に入ったようだ。
すると——。
「リズ、シガレットを追加で出してあげて」
「はい」
ジルティアーナ様の指示を受け、リズ様がシガレットクッキーだけを選び、ルーの前に置いた。
「ぷぷ~」——『やったー、ありがとー』
嬉しそうに体を震わせた。
追加分も体にどんどん取り込むルー。
それを見て、ジルティアーナ様は目を細めた。
「ちゃんとお礼を言えて偉いわね」
……んん?
ルーは、普通なら「ぷぷー」と鳴いてるようにしか聞こえないはずだ。
でも……。
“長いの”だけを追加で出し、お礼を言ったことを分かっていたジルティアーナ様。
ルーの言葉を理解しているとしか思えなかった。




