32.ジュースが売れました!
「おまたせいたしましたー!」
レモネードができあがった。
フレイヤが目を見開いた。
「なに、このコップ……?」
「紙コップよ。使い捨てなの」
私の答えにぎょっとするフレイヤ。
「使い捨て? それに紙コップって……これ、紙でできてるの!?」
言いながら、紙コップに手を伸ばす。
指先が触れた瞬間、びくりと体を揺らし、紙コップから手を離した。
「なにこれ! すごく冷たいっ!」
「直前まで冷蔵庫に入れていたし、氷も入ってるからね」
私は説明をしながらストローを手に取り、コップに挿した。
「なに、この棒?」
「ストローよ。細い管になってるから、これを吸えば簡単にジュースが飲めるのよ」
私の説明に首を傾げながらも、フレイヤはそっと口へストローを運んだ。
そして——。
「美味しい……っ!」
と感動したあと、まじまじとストローを見る。
「美味しいのはもちろん、このストローっていうのも、すごく便利ね!」
フレイヤの感想に、子どもたちも顔を見合わせ、喜んだ。
「レモネード、美味しいでしょ?」
「うん、はじめて飲んだけど、すっごく美味しい!」
そんな会話を、笑顔でしていると——。
「それ、そんなに美味しいのかい?」
フレイヤの後ろを通りすがりのおばさんが話しかけてきた。
急な問いかけに、思わず私とフレイヤは顔を見合わせたが、フレイヤがおばさんに大きな声で答えた。
「はい! すっっごく美味しいです!!」
「へぇ……」
そんな会話をしていると——。
「面白いコップに入ってるな」
今度は向かいの店のおじさんが話しかけてきた。
「これ……! 紙のコップなんです。このストローを使って飲むんです」
「紙!? このストローってのも、はじめて見たな」
おじさんは顎に手を当て、少し考えたあと……。
「よし! 気になるから、俺にも1杯くれ」
「ありがとうございます!」
2杯目が売れた!
……そして。
「ジュースはどれにしますか?」
「俺はペシェルで頼む」
注文が入り、冷蔵冷凍庫の前で待機していたマークが冷凍ペシェルを取り出した。
それを見て、おじさんは目を見開く。
「なんだそれ? いつものペシェルとなんか違わないか?」
「切ったペシェルを凍らせていたんです」
「凍らせる!?」
驚くおじさんの前で、冷凍ペシェルをミキサーに投入し、スタートボタンを押した。
ガーーッ!
機械音が鳴る。
おじさんは興味深そうに、その様子を眺めていたが、あっという間にペシェルは液体化した。
とろっとしたペシェルジュースを紙コップに注ぐ。
「おまたせいたしましたー!」
「お、おう」
おじさんは戸惑いながら、ペシェルジュースを受け取った。
そして——。
「うわっ! すげぇ冷てぇ!」
「ペシェルをそのまんま凍らせて、ジュースにしてるからなっ!」
ロイが得意げに言った。
「はぁ……こんな冷たい飲み物、はじめて飲んだぞ」
おじさんは感心したように、呟く。
けど、次の瞬間笑顔で言った。
「冷たくて、甘くて、めちゃくちゃ美味いな! こんな美味しいもの初めて飲んだよ」
「ありがとうございます!」
そんなおじさんの様子を見ていた、先ほどのおばさんも——。
ごくりと喉を鳴らした。
「私も1杯貰おうかな」
「……っ! ありがとうございます!」
3杯目が売れた。




