30.はちみつ、高すぎない?
「院長。それで、レモネードをイチ押し商品にするって……どうするんですか?」
二人っきり(+一匹)の孤児院長室。
そう聞くリコの顔は、笑ってはいるが作ったような笑顔だった。
かつて……私が「異世界の記憶がある」と告白する前にはよく見ていた顔だ。
「……どうするって?」
「はちみつはとても高価なんですよ?」
ふむ。
マジックバッグの中には、ジルティアーナ様がくれたはちみつがまだまだある。
だがいずれは、それがなくなる日がくるだろう。
「はちみつって、そんなに高いの?」
「普通に買えば1瓶3万ペルはすると思います」
「さ、3万ペル!?」
思わず声を上げてしまった。
平民が普段食べるパン1つが100ペルくらい。
私の感覚では、1ペル=1円くらいだ。
つまり、小さな瓶ひとつで、3万円はするって……?
高すぎでしょ!?
そこで、はっとする。
ジルティアーナ様が下さった、はちみつ……。
私はマジックバッグを漁る。
はちみつを机の上に並べてみると、10瓶あった。
つまり、はちみつだけでも——30万円!
「どどどどーしよう。そんな高価なもの、10瓶も入ってたんだけど」
焦る私に対し、リコは冷静に言う。
「もちろん感謝はしないといけませんが、そんなに気にしなくても大丈夫だと思いますよ」
「え?」
「ぷっ?」
私が首を傾げる。
すると、ルーも一緒に体を傾けた。
「貴族が孤児院に寄付することはよくあることですし、今回はただの寄付ではなく領主様がクリスディアの取り組みを他の街でも試したいという実験的な意味合いもあります」
「なるほどね」
でも、自分たちで食べるためだけならともかく、ジューススタンドで使うとなると、早々になくなるだろう。
もしはちみつがなくなっても、砂糖の割合を増やすことも可能だが、それではまろやかな甘さにならない。
できれば在庫が尽きる前に、はちみつをもっと手軽に入手する方法を見つけたかった。
そこで、ひとつの可能性を思いついた。
「ねえ、はちみつってどうやって作るの?」
「そりゃあ、ハナナバチの巣から採取するんですよ」
……ハナナバチ?
ナディアの知識を探ると、みつばち……よりもとんでもなく凶暴そうな魔獣の姿が脳裏に浮かんだ。
見た目的には蜂っぽいが、そのサイズが全然違った。
手のひらくらいの大きさ。
サイズ感でいうと、すずめくらいはありそうだ。
そして、その体に合わせて、おしりに付いてる針も、針っていうかドリル? ってくらい太かった。
いや、もう普通に刺されるだけで生命が危ないよね? と思うが、スズメバチと同じくその針には猛毒があるらしく、かするだけでも危ないという。
怖すぎる。日本のオオスズメバチがかわいく思えてくるわ!
蜂の巣を見つけるのが大変なら、養蜂をすればいいじゃない! と思ったのだが……。
あんな巨大毒蜂を飼うなんて、絶対無理ー!




