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異世界ポイ活、始めました〜婚約破棄された悪役令嬢ですが、私だけ「ポイント」が貯まるようなので毎日お得に暮らします〜  作者: よつ葉あき
第2章 怖い院長、やめてみます。

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19.これから、もっと仲良く。


「はぁ……美味かったなぁ」


 思い出すように、ロイが言った。

 よほど美味しかったようだ。


「ああ、すごく美味かった!」

「ぷっぷぷ~」——『またたべたーい』


 マークとルーも同意し、ルーはまたぼいんぼいんと全身で『おいしー!』を表していた。


 けれど、メイがぽつりと呟いた。


「……私たちだけが、こんな良いもの食べて良かったのかな」


 みんなの視線が、メイに集中する。

 それに気がついたメイは、笑顔を作った。


「ごめん! 変なこと言って……」


 空気を悪くしてしまったと思ったのだろう。

 でも、メイが言ったことはおかしいことじゃない。


「ううん。今度はみんなで食べられるよう、たくさん用意するわね」

「……はい!」


 私の言葉に、今度は本当に嬉しそうな笑顔で頷いてくれた。

 笑い合う私たちを、男の子二人がぽかんと見つめた。


「院長って……よく笑うんだな」

「ああ、それに今日は……全然怖くない……」


 その言葉に驚いていると、ルーがぽよぽよ跳ねながら


「ぷー!」——『なでぃあは、やさしいよー!』


 と言ってくれた。

 

 ……彼らには伝わらないけど。

 ありがとう、ルー。


 そして、メイも


「だから言ったでしょ! 『院長はやさしいよ』って」


 そう言ってくれた。

 ……どうしよう、ちょっと泣きそうになった。


 志摩子としての記憶を取り戻す前の私は、本当に酷かった。

 

『ポイ活』という謎のスキルを授かってから、それまで仲良くしていた家族や友人たちは、少しずつナディアから離れていった。


 そして何より――。

 成人後には結婚し、幸せになれると信じていた婚約者から、婚約破棄を突きつけられた。

 その末に、私はこの孤児院へ来たのだ。 


 そんな境遇が悲しくて、そして何よりも能力のない自分が情けなくて。

 貴族として生きていれば、関わることがなかったであろう子どもたちに、毎日イライラし、当たり散らしていたのだ。


「ごめんなさい」


 皆が目を丸くし、私を見た。

 私は手を握りしめ、続けた。


「突然この孤児院を任されて、どうすればいいか分からなかったの。自分の中で消化しきれない不満や喪失感を、あなたたちにぶつけていたの」


 今の私から見れば、ナディアが受けた扱いは、あまりにも理不尽で同情してしまう。

 だけど、だからといって何の罪もない子どもたちに、そのイラつきをぶつけていいわけじゃなかったのだ。


「いつも私はあなたたちに怒っていたけど、あれは完全に八つ当たりだったわ」


 ……謝れば済む問題ではない。でも、この言葉を言わずにはいられなかった。


「ナディア院長」


 メイの声に促され、顔をあげる。

 メイは、まっすぐこちらを見て言った。


「正直に言います。院長が怖くて、苦手でした」


 正直すぎる意見に、言葉を失う。

 私が何も言えずにいると、横からロイとマークが小声でメイに話しかけた。


「……おい! さすがにマズイって……っ」

「メイ、謝れ!」


 ……コソコソ言っているが、まる聞こえである。


 でも、メイは間違っていない。

 謝らなくてはならないのは、私の方だ。


「うん……怖がらせて、本当にごめんなさい」


 私は頭を下げた。


 しばしの沈黙。

 頭を下げ続ける私に、メイがそっと続けた。 


「でも、最近の院長は……好きです」

「え?」


 予想外の言葉に、思わず顔を上げた。

 メイは続ける。

 

「この前は私の手を冷やして、心配してくれました。ルーちゃんを大切にしていて、私たちにも笑ってくれるようになりました」


 メイはやさしく微笑む。


「これからはもっと、院長ともルーちゃんとも、仲良くなりたいです!」

 

「うん。私も……」


 一瞬、言葉に詰まる。

 でも。


 私を真っ直ぐに見つめるメイ。

 私が“変わった”とはいえ、ずっと怖かった相手に『苦手だった』と言うのは、勇気が必要だったはずだ。


「今さら、虫のいい話かもしれないけど……」


 私も——それに応えなきゃいけない。


「あなたたちと……みんなと、もっと仲良くなりたい」


 素直な思いを伝えた。


「うんっ!」


 メイが嬉しそうに笑う。

 続いて、マークも。

 

「……俺も……最近の院長なら、怖くないよ」


 と言ってくれた。

 そして、ロイは……。


「ああ、クッキー美味かったしな!」


 そう言って、にかっと笑った。


「それは、院長と仲良くしたいっていうより……」

「クッキーをまた食べたいってことじゃあ……?」


「ぷっぷぷ~!」——『るーも、くっきーまたたべるー』


 ルーが楽しそうに飛び跳ねていた。

 そんなルーを見て、私たちは思わず笑い合った。


  

 

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