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異世界ポイ活、始めました〜婚約破棄された悪役令嬢ですが、私だけ「ポイント」が貯まるようなので毎日お得に暮らします〜  作者: よつ葉あき
第2章 怖い院長、やめてみます。

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15.怖い院長、やめます。


 いつもどおり、『ルーのごはん』をあげる。 

 

『おいしー! いつもありがとー、なでぃあ』


 今までは、聞けなかった思いが返ってきた。

 

 ぷるるんっと震えながらお礼を言ってくれるルー。

 かわいいなぁ! と微笑ましく見ていると、扉がノックされた。

 

 入室の許可をすると、いつもの二人。

 リコとメイだ。

 

「おはようございます、ナディア院長。朝食をお持ちいたしました」

「ありがとう」

 

 食事を机に置いたメイは、机の横でルーがごはんを食べていることに気づくと、笑顔で話しかけた。

 

「ルーちゃんもごはんなんだね!」

「ぷぷぅ~」

『うん、ごはんおいしいよー。めいー』

 

 あれ?

 そこで初めて気がついた。

 

『ルーのことば』って、もしかして……。

 

 私にしか聞こえない?

 

 ルーのいつもの「ぷぷ~」という声は耳から聞こえてくるのに、『ルーのことば』は耳ではなく、直接頭の中に響いているらしい。

 

 やはりメイには、『ルーのことば』は聞こえていないようで、「今日もかわいいねぇ」なんて言いながらルーを撫でている。

 

 メイは最初、私に怯えていたものの、あの火傷の一件以来、私にも笑顔を見せてくれるようになり、ルーともすっかり仲良くなっていた。

 リコとメイの前でなら、素の自分でいられるから楽だ。

 

 ……でも、ほかの子どもたちの前では、私は今も“以前のナディア”を演じている。

 

 ◇◆◇

 

 朝食を終え、しばらく経ったとき。

 ふいにルーが話しかけてきた。

 

『なでぃあー』

 

 ルーが、ぴょこんっと私の膝の上に乗ってきた。

 

『りこと、めいとはたのしそうにおはなしするのにぃ』

「ん?」

『ほかのこには、なんでおこってるみたいにしてるの?』

 

 どう説明したものか……。

 ルーの純粋な質問に、言葉が詰まる。

 記憶を取り戻す前の私は、孤児院のみんなにとって“怖い院長”だった。

 

 それなのに、ある日突然にこにこ笑って優しくなったら、不自然だろうと思ったのだ。

 だから、少しずつ。

 少しずつ変わっていけばいい。

 

 そう考えて、今まで以前のナディアを演じてきた。

 黙り込む私を見て、ルーがこてんと体を傾ける。

 

『ルー、ダメなこときいちゃった?』

 

 ルーはスライムだから表情こそ分かりにくいけれど、いつもより体がとろんとしぼんでいる。

 しょんぼりしているのが、なんとなく伝わってきた。

 でも、ルーは何も間違ってない。

 

「ううん」

 

 私は首を横に振る。

 

「駄目なことじゃないよ」

 

 そっとルーを抱きしめる。

 ルーは嬉しそうにぷるんっと体を揺らすと、私の胸に体を預けた。

 

「そうね。ルーの言うとおりだわ」

 

 このままじゃ、良くない。

 私は立ち上がると、ルーを抱きしめたまま孤児院長室の扉を開けた。

 

「ナディア院長?」

 

 廊下にはリコとメイがいた。

 

「昼食をお持ちしたのですが……これからお出かけですか?」

 

 メイは昼食が乗っているカートを押していた。

 

「メイ」

「はい」

「……あなたたちはこのあと、食堂で昼食を?」

「……え、はい」

 

 メイは戸惑いながら頷く。

 だが、リコは動じることなく一歩前に出ると、私に尋ねた。

 

「今日は、食堂でお召し上がりになりますか?」

「ええ」

 

 リコがさらりと聞いてくれたおかげで、素直に答えることができた。

 

「……院長が、食堂に?」

 

 メイが戸惑う一方で、リコは変わらぬ様子で続けた。

 

「メイ、本日は院長も一緒にお食事をされるそうよ。食事は食堂にお持ちしましょう」

 

 メイはリコから私へ視線を移す。

 私はそのまま頷いた。

 すると、メイは目を丸くして――。

 

「院長が私たちと食べるなんて、初めてですね!」

 

 嬉しそうに笑ってくれた。

 

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