11.新商品はおむつ!?
「ユニークスキルというのは、世界で一人しか持っていない特殊なスキルのことです」
「世界に、一人だけ……?」
リコにそう言われ、すとんと腑に落ちた。
「なるほど、そうかもしれないわね」
私は深く頷いた。
「ポイ活っていうのはね、前世の世界では普通にみんながやっていたことなの」
私はステータス画面の【ポイ活】をタップし、『ポイ貯め』の画面を開いた。
「ちょっと言葉では説明しにくいんだけど……ポイ活っていうのは、買い物をしたときなどにポイントを貯めて、お得に活用する方法なの」
「……ポイント? 買い物をしてお得?」
リコは小さく呟きながら、首を捻った。
うーん、やっぱり伝わらないか。
ポイントを使ったこともない子に、理解してもらうのはかなり難易度が高そうだ。
私は『ポイ貯め』の画面を操作し、『ポイント交換』をタップした。
『現在のナディアさんが交換できるのは、こちらの商品!』
『この中から選んでね!』
交換できる商品が、ずらりと出てきた。
『たわし/10P』
『ポケットティッシュ/10P』
『ウェットティッシュ/10P』
そして、その下に――。
『新商品が入荷したよ☆』
『おむつ/100P』
『おしりふき/100P』
「おむつに、おしりふき!?」
まさかの新商品に、思わず声を上げてしまった。
それに、びくりと体を揺らすリコ。
「あ……ごめん。思わぬものを見つけて、つい」
謝りながら、私は『ポイ貯め』の画面を指さした。
横からリコも遠慮がちに画面を覗き込む。
「思わぬものというのは……この『新商品』というものですか?」
私が頷くと、リコは首を捻った。
「『おむつ』に『おしりふき』……聞いたことがありませんね」
「おむつというのは……“むつき”のことよ」
「え! むつきですか?」
驚くリコの横で、私は『おむつ』をタップした。
すると――。
『「テープタイプ」と「パンツタイプ」があるよ! 選択してね!』
「種類があるんかいっ!」
思わずつっこみを入れてしまった。
テープタイプは、寝かせた赤ちゃんのお腹まわりを左右のテープで留めるもの。
パンツタイプは、その名の通り、下着のように履かせるものだ。
この孤児院にいる赤ちゃんは、みんな生後半年を過ぎている。
寝返りをしたり、元気に足を動かしたりする子も多い。
「それなら、パンツタイプの方が使いやすそうね」
私は『パンツタイプ』を選択した。
ピロン!
『パンツタイプのおむつ/100P』
『交換する?』
『YES/NO』
「もちろん、YES!」
迷わず『YES』を押す。
すると、いつものように光の粒が集まり始め――。
テーブルの上に、白い袋が現れた。
「これが……おむつですか?」
リコが興味深そうに袋を見つめる。
「そうよ。前世の世界では、赤ちゃんがいる家庭では普通に使われていたものなの」
私は袋を開け、中から一枚取り出した。
「それを……赤ちゃんに履かせるのですか?」
リコは不思議そうに、おむつをじっと見つめている。
「そうよ。それに、これなら一度使ったら捨てられるの」
「捨てるんですか!? それは……勿体なすぎませんか?」
やっぱり、そこに驚くのね。
この世界の“むつき”は、布を何度も洗って使うのが当たり前だ。
だから、使い捨てという発想そのものが贅沢に感じるのだろう。
「洗わなくていいから楽なのよ。赤ちゃんのお世話って、それだけでも大変でしょう?」
「……はい」
リコはゆっくり頷いた。
その表情を見て、私は改めて思う。
たわしも、ウェットティッシュも。
前世では当たり前だったものが、この世界では驚くほど役に立つ。
そして――。
この『おむつ』も、きっと。
「……これ、孤児院でかなり使えるかもしれないわね」
思わず、口元が緩んだ。




