10.リコへの告白。
「前世の記憶……ですか」
リコは顎に手を当て、考え込むような仕草を見せた。
『前世の記憶がある』なんて突飛な話なのに、リコはすぐには否定しなかった。
それだけで、私はほっと胸を撫で下ろす。
前世の記憶を証明するなんて、きっと簡単じゃない。
少しずつ、分かっていってもらえれば――……。
「分かりました」
「…………え?」
思わず間の抜けた声が出た。
え?
今この子……前世の記憶があるって話を、『分かりました』って受け入れたわよね?
あまりにも早い展開に呆気にとられている私に、リコは続ける。
「最近のナディア院長は、まるで別人のようでしたから」
「べ、別人……」
信じてもらえたのは嬉しい。
嬉しいんだけど……それはそれで、どうなの?
私は、これまでのナディアの行動を思い返す。
これまでのナディアは、 『ここの女王は私よ!』 とでも言わんばかりに、傍若無人で自己中心的に振る舞っていた。
リコたちだけでなく、小さな子どもたちにまで同じような態度を取っていたのだ。
……うん。最悪だったわね、ナディア!
情けなくて、泣けてくる。
「ただ、まさか……」
そこで、リコの表情がふっと和らぐ。
「『前世の記憶がある』なんて言われるとは思いませんでしたけど」
そんな様子に、胸の奥が少しだけ軽くなる。
この子になら――。
もう、隠さなくてもいいのかもしれない。
私は、リコにすべてを話すことを決意した。
◇
「ステータスオープン」
言葉と同時に、目の前にステータス画面が現れる。
けれど、いつもとは画面の色が違っていた。
――普段は青い半透明。
だが今、目の前に浮かんでいるのは赤い半透明の画面だった。
ステータス画面は本来、自分にしか見ることができない。
しかし、「ステータスオープン」と開示モードで呼び出せば、他人にも見せることができるのだ。
「あの……本当によろしいのでしょうか?」
近くに立っていたリコが、戸惑ったように尋ねる。
無理もない。
ステータス画面は、いわば個人情報の塊だ。
孤児院長という立場上、必要に応じて皆のステータスを見ることはあっても、自分のものを誰かに見せることなど、まずない。
だからこそ、リコも遠慮しているのだろう。
「うん、大丈夫。こっちに来て」
私はそう言って、自分が座っているソファの隣を軽く叩いた。
「……失礼いたします」
リコはためらいながらも、私の隣に腰を下ろした。
「私の天職はね、【主婦】なの。それで、スキルが【ポイ活】」
「……ポイ活?」
しばらくの沈黙のあと、リコが気まずそうに口を開いた。
「申し訳ございません。【ポイ活】とは、どのようなスキルなのでしょうか?」
「謝る必要なんてないわ。このスキルは、成人の儀を執り行った司祭も知らなかったくらいだから」
軽く笑って答えると、リコは目を見開いたあと、真剣な顔で頷いた。
「なるほど。ユニークスキルかもしれませんね」
「ユニークスキル?」
今度は私が疑問を呈した。




