【Side:浅野紗夜】一日目の仮宿
「おやおや?今のは聞き間違いじゃないよな?三号、お前、俺たちの標的を見逃すつもりか?」
目の前の変人と似た服装をしたもう一人の男が、突然彼の背後に姿を現した。
男はすでに拳銃を抜いて三号に向けており、その目にはかすかな嗜虐の色が浮かんでいた。
「四十六号、俺たちの【コピー】が標的の人生を引き継ぐ。彼女の記憶サンプルは、もう本艦へ送った」
「俺の質問にまだ答えてないよな。お前は標的を見逃すつもりなのか?」
「……」
……あの四十六号は、本気だ。
三号が答えを間違えれば、きっとためらうことなく引き金を引く。
「標的本人があの人生を続けるつもりがないなら、好きなように生きさせても問題ないだろ?」
「問題ならある……それも大ありだ。こいつが今日のことを何もかも言いふらさないという保証が、どこにある?」
「俺が見張る。絶対に口外させない」
「どうやら、我らが三号は任務を放棄したらしいな」
「……!」
残念ながら、三号と呼ばれた変人は、正しい答えを返さなかった。
パンッ――!
四十六号が引き金を引くと同時に、三号は身を横に逸らして銃弾をかわし、すぐさま四十六号へ突進すると、その手から拳銃を蹴り飛ばした。
……
あと、ほんの少しずれていたら。
私は、死んでいた。
外れた銃弾は、私の背後にある壁へ小さな穴を開けていた。
壁に残った弾痕を見つめていると、背筋を冷たいものが走った。
はぁ……はぁ……
今になってようやく、死がどれほど間近に迫っていたのかを思い知った。
死を想像するのと、実際に死を目の前にするのとでは、まるで違った。
「さすがは三号。素晴らしい反射神経だねぇ~♪」
「こっちへ来い。俺の後ろにいろ」
三号は乱暴に私の腕をつかみ、自分の背後へ引き寄せて庇った。
ほんの数分前まで、三号は私の額に銃口を突きつけていた。
それなのに今、私を守ろうとしているのは彼だけだった。
「……?おやおや?任務を放棄しただけじゃなく、標的を守るつもりか?おいおいおい?人殺しさん、立場が逆じゃないか?」
ついさっき私を見逃したせいで、彼まで仲間から裏切り者と見なされた。
あの四十六号は、彼と私をまとめて殺そうとしている。
何もできない私は、ただ彼の背後で守られていることしかできなかった
ほどなくして、二人はナイフによる白兵戦を始めた。
彼は何度も刃が身をかすめる中、目にも留まらぬ速さで、私が見たこともない格闘術を繰り出し、四十六号と互角に渡り合っていた。
私とそう変わらない年頃に見えるのに、その動きには恐ろしいほど無駄がなかった。
眼球、喉、心臓……
彼が繰り出す一撃一撃は、ほとんどすべて相手の急所を狙っていた。
「お前、誰かを庇いながら戦うのは苦手だろ?ほら、隙だらけじゃないか」
四十六号は、三号がナイフを受け止めた隙に、もう片方の手で二本目のナイフを抜き、私の眉間めがけて投げつけた。
三号は人間離れした反応速度で、空いていたほうの腕を私の前へ差し出した。
ザクッ。
飛んできたナイフは、その腕に突き刺さった。
「ちっ!卑怯者め!」
彼が腕に突き刺さったナイフを引き抜くと、傷口からたちまち大量の血が溢れ出した。
「戦いとは本来、殺すか殺されるかだ。どこが卑怯なんだ?」
「あなた……その腕……」
「平気だ。左手が使えなくなっただけで、大した問題じゃない!ふんっ……!」
平気なわけがないでしょ!?
相手のほうが明らかに戦闘経験も豊富なのに、左腕まで使えなくなったら、もっと危険になるじゃない!?
「お前は先に逃げろ!こいつを片づけたら、すぐ追いつく!」
彼は四十六号のナイフを力任せに押し返し、相手を数歩後退させると、私に向かって叫んだ。
その間も、三号は四十六号から一度も視線を外さず、隙を突いてまた予想外の行動に出ないか警戒していた。
……ここにいても、私は足手まといにしかならない。
それくらい、自分でもよく分かっていた。
逃げろというなら、そうする。
あなたが私のためにしたことに感謝するつもりはない。でも……
少なくとも、これ以上ほかの人の足を引っ張るつもりもない。
自分の失敗のせいで、ほかの誰かまで私と同じ結末に巻き込むことだけは許せなかった。
「わ……分かった……」
短くそう答えると、私はすぐに背を向けて逃げ出した。
でも、いったいどこへ逃げればいいの?
これまでの私の生活は、家と学校、塾、それに習い事の教室だけで完結していた。
それ以外に、私が行ける場所なんて本当にどこにもなかった。
それに、急に腹が立ってきた。
このまま彼の命令どおりに逃げたら、今までと何も変わらないんじゃない?
そう考えているうちに、私の足は止まっていた。
「……」
このまま逃げるくらいなら、戻って彼を助ける方法を考えたほうがいい。
万が一、死んでも別に構わない。
どうせ、もともと私は……
生き続ける目的なんて、もうなかったはずだから。
その時、道端にある水道メーターの脇に、錆びついた鉄パイプが一本置かれているのを見つけた。
……
「はは……非力な私でも扱えそうな武器が、ちょうど一本あるじゃない」
たとえ私がただの普通の女の子でも、武器さえあれば、少しくらいは何かできるはず。
◇
「ごほっ、ごほっ!まだ反撃する力が残っていたのか……?いっそ、ここで殺してしまおうか」
まずい……
三号は四十六号に馬乗りにされ、相手は拾い上げたナイフを今にも彼に突き刺そうとしている!
間に合ええええっ!
「はああああ!!!」
ガァン――!
「このクソ女――」
激しい金属音が響くと同時に、四十六号は振り返って私を睨みつけると、そのまま意識を失い、地面へ崩れ落ちた。
……人に向かって武器を振り下ろしたのは、これが初めてだった。
後頭部を殴りつけた時の感触が、今も手のひらに残っている。
わ……私、本当に武器で人を殴ったんだ……
「はぁ……はぁ……どうして戻ってきたんだ!?ここは危険だぞ!」
「いいい……いくらなんでも、あなたを置いていけるわけないでしょ!このままじゃ、あなたが死んじゃうでしょ?手、出して。起こすから」
地面に座り込んでいる三号へ、私は手を差し伸べた。
「ごほっ、ごほっ。情けないな。まさか逆に標的から命を救われるとは……」
彼は一瞬戸惑ったあと、苦笑しながら私の手をつかみ、私に引き起こされるまま立ち上がった。
でも、男の人の手を握ったのは、これが初めてだった。
男の人の手って、本当に大きいんだ……
「……素直にありがとうって言うのが、そんなに難しい?それとも、わざと私と喧嘩したいの?」
「おいおい、俺はお前を何度も助けただろ?素直に礼を言うべきなのは、お前のほうじゃないか?」
反論できない。
彼が本気で私を殺すつもりだったなら、私はとっくに死んでいた。
それに、彼がさっき私を庇ってくれたから、私はこうして生きている。
まあ……
そこまで生きたいわけでもないけど。
そうだ、彼の傷……!
左腕の傷口からは、まだ血が流れ続けている。
私が足を引っ張らなければ、彼は怪我をせずに済んだかもしれない。
「うっ……」
そう考えると、悔しくてたまらなくなった。
結局、私はまた足を引っ張った……
気づけば、涙が頬を伝っていた。
「ごめん……」
「えっ?」
三号は突然、私の頭に手を置き、そっと撫でた。
私はその場で固まり、思わず顔を上げて彼を見た。
私が見上げていることに気づくと、彼は気まずそうに顔を背け、私と目を合わせようとしなかった。
「ああ……もう、俺たちはお互いを助けたんだ。これでおあいこってことにしないか?な?頼むから、泣かないでくれ。これ以上泣かれると、俺まで慌ててしまう……」
「うん……」
さっきまで冷酷なふりをしていたくせに、自分まで慌てるなんて言うんだ……
いったい何なの。
この暗殺者、本当に変な人。
「その腕、痛む?近くに病院がある。そこへ連れていって、治療してもらおう」
「待て。お前、俺が何者なのか、さっき何が起きたのか忘れたのか?医者にどうして怪我をしたのか聞かれたら、なんて答えるつもりだ?」
そ……そうだった。
彼はさっき、自分は異星人だと名乗っていた。それに、身につけている装備を見る限り、嘘をついているようにも見えない。
正体の問題を抜きにしても、腕にあるのは、ナイフによる刺し傷だ。
病院で治療を受ければ、医者から事情を根掘り葉掘り聞かれるに決まってる。
その時になって誤魔化そうとしても、きっと無理。
「でも……!傷口から血を流したままにはできないでしょ!」
「簡単に包帯を巻くだけでいい。俺は平気だ。本当に」
「私が包帯を巻く!」
……
少なくとも、このくらいなら私にもできる。
私は、そこまで役立たずじゃない。
「意外と手先が器用なんだな」
「……応急手当の知識を少し身につけている。お父さんとお母さんが、いざという時に役立つからって、習わせた」
結局、習わされたことが本当に役に立った。
ある意味、お父さんとお母さんの言っていたことは間違っていなかったみたい。
「マジか?本当に何でもできるんだな、お前」
「ほら、少し静かにして。傷の手当ての邪魔になる」
……というより、面と向かってそんなふうに褒められると、なんだか恥ずかしい。
さっきだって……
私に拳銃を向けていた時、三号はなぜか私のことを散々褒めていた。
彼は少し呆れたように私を見ると、そのあとはおとなしく黙ってくれた。
傷の手当てを終えると、私は彼の無傷なほうの腕を支え、立ち上がらせた。
「もういい。待ってないで行け。こいつはさっきまで通信をつないだままだった。今のやり取りは全部、本艦にいる【アドミニストレーター】に聞かれていたはずだ。早く安全な場所を探して隠れろ。じきに、ほかの【プロキシ】も追ってくるはずだ」
「……あなたはどうするの?さっき、あの変態も言ってた。暗殺対象を見逃すのは駄目なんでしょ?」
「平気だ。実は、逃げるのは結構得意なんだ」
嘘でしょ?
もしかして、さっき本当に思いつきで私を見逃しただけで、任務を放棄したあとのことは何一つ考えていなかったの?
「何が平気なの?怪我をしてるのに、どうやって逃げるつもり?その間は、私があなたの面倒を見る」
「どうして俺が面倒を見られる側になってるんだ!?」
助けてもらった分を返すつもりなだけ。
それだけ。
それに、今の私たちは似たような状況に置かれている。協力したほうがいいはず。
「はぁ……分かった。でも、面倒を見るといっても、まさか俺がお前と一緒に家までついていくわけにはいかないだろ?両親に怪しまれるに決まってる」
「家に帰るって、何のこと?」
「ん?」
今さら家に帰るなんて、こいつはいったい何を考えているの?
まさか、【コピー】が私に成り代わることを忘れていた?
自分の失言に気づくと、彼の表情も曇った。
「何、その顔?私はもともと帰るつもりなんてない。これからは……そうね。適当なネットカフェを探して、ひとまず今夜はそこで過ごそう」
「ネットカフェ?」
「少しお金を払えば、一時的に休める場所。食べ物も飲み物もあって、個室には扉も付いてる。それに、どうしてそこにいるのか、いちいち聞かれることもない」
私たちのような家なき哀れ者にとって、一時的な寝床にこれほどふさわしい場所はなかった。
「俺はこの星のお金なんて持ってないぞ?」
「誰があなたに払えって言ったの?お金のことは、私が何とかする」
以前、自分名義の口座を作って、キャッシュカードを持たせてほしいと、お母さんに頼んだことがある。
今日まで、お小遣いのほとんどをその口座に貯めてきた。
普段、二人からもらっていたお小遣いは、それなりに多かった。
でも、私の毎日は勉強ばかりで、自分の貯金を使う機会なんてまるでなかった。
今では、その口座にかなりの金額が貯まっている。
もともとは、将来、家を出て自立するために貯めていたお金だった。
でも、気が変わった。
少なくとも、本当に死ぬその時までは、自分が苦労して貯めたお金を思いきり使ってみたい。
どうせ残しておいても意味がない。
それなら、今を楽しむために使ったほうがいい。
「ほら、行くよ」
「待て。せめて、こいつの装備を回収してから行くぞ。こっちへ来い」
私が近づくと、三号は四十六号から回収したハイテク装備を、山ほど私の腕に押しつけてきた。
わぁ……
異星人の装備を手に入れちゃった……?
しかも、世界中を混乱に陥れかねない代物まで、何の迷いもなく次々と私に預けてきた。
こ……これ、本当に大丈夫なの?
「よし、行くぞ。これから物を収納する時は、この『四十六号』と書かれた次元袋を使え」
「こんなにたくさんの異星技術で作られた道具を手に入れるなんて……」
死ぬ前に異星人のハイテク装備を使えるなんて、嬉しいし、驚きもしたけど……
実際に手にしてみると、どうにも落ち着かなかった。
ほら。
興奮しすぎたせいで、両手がずっと震えてる。
「先に言っておくが……浅野紗夜、絶対になくすなよ?一つでも紛失したら、この世界の技術体系がめちゃくちゃになるからな」
「わ……分かった。それと、紗夜って呼んで。女の子をフルネームで呼び捨てにするなんて、失礼でしょ」
「はいはい、紗夜さん」
……
腹が立つ。
こいつ、適当にあしらうために、わざとよそよそしい呼び方を選んだんじゃない?
「紗夜でいい」
「はぁ……分かったよ」
そのあと、私は鞄から普段着ている上着を取り出し、三号に羽織らせた。
そうしないと、腕の傷を誰かに見られた時に困る。
それに、彼の服装は本当に変だった。
幸い、彼が穿いていた黒いズボンは、こちらで市販されているものとデザインがほとんど変わらなかった。
だから、私の上着さえ羽織っていれば、見た目はそれなりに普通だった。
――――――
以前、華音から街の店や施設について聞いた時の記憶を頼りに、私は三号を連れて、とあるネットカフェへやって来た。
【リラックススペース】。
「ここは、国内でもかなり有名なネットカフェチェーン。中には読みきれないほどの漫画や小説が置いてあって、部屋にはテレビもあるし、客が休めるように一人用のベッドまで付いてる。えっと……これは華音……私の友達が、前に教えてくれたこと」
華音が説明してくれた時のことを思い出しながら、私は暗記した文章を読み上げるように、その内容をそっくりそのまま口にした。
私と三号は今、【リラックススペース】の入口に立っていた。
「ここがネットカフェか?内装はずいぶん高級そうだな」
「ネットカフェなんて、どこもこんな感じ……たぶん?」
「あそこに並んでる箱みたいなのが、いわゆる個室か?」
三号は、ガラス越しに見える店内の小さな個室を指差した。
「たぶんね……」
「……なんで疑問形なんだ?」
「仕方ないでしょ?さっき、私がこれまでどんな生活をしてきたか話したじゃない。こんなところに来る機会なんてあるわけないでしょ?ほら、先に入るよ」
「ああ……」
三号は何か言いたげな顔をしたまま、私のあとについてきた。
まるで私に呆れているみたいだった。
「すみません、シングルベッド付きの個室を二部屋お願いします」
異星人の三号には、こういう店での手続きなんて分からないだろう。私は受付へ向かい、華音から以前聞いたとおりに店員へ伝えた。
「あの……申し訳ございません、お客様。現在、シングルベッド付きの個室は一部屋しか空いておりません。もう一部屋を、ベッドのない通常個室へ変更なさいますか?」
は?
運が悪すぎない?
今はちょうど学校の卒業シーズンだから、みんなネットカフェに泊まりに来てるの?
「紗夜、お前はベッド付きの個室を使え。俺は休めさえすればいいから、普通の個室で構わない」
三号は私を脇へ引き寄せると、店員さんに聞こえないよう、小声で相談を始めた。
「怪我してるでしょ?怪我人を普通の個室で寝かせるわけにはいかないじゃない」
「でも、ベッド付きの個室は一部屋しかない。お前はどうやって休むんだ?まさか、床に寝転がっても眠れるタイプなのか?」
「それは……そうね……」
反論しづらい。
どれほど退屈な人生を送ってきたとはいえ、私は毎晩、ふかふかのベッドで眠ってきた。
三号は、自分は正式な軍事訓練を受けており、どんな環境でも問題なく休めると言った。
私にベッド付きの個室を譲るのは、私が女だからではなく、単にそのほうが合理的だからだと、何度も強調していた。
「ほらな?俺は床に寝転がっても眠れる。だから、普通の個室は俺が使う」
……
その時、料金表の隅に、ダブルベッド付きの最上級個室がまだ空いていることに気づいた。
「それでは、ダブルベッド付きの個室を一部屋お願いします」
少し値は張ったけれど、ダブルベッド付きの個室には、専用のシャワールームまで備えられていた。
これなら三号も体を洗えるし、そのついでに腕の傷も手当てできる。
そう考えただけだった。
けれど、三号は呆気に取られ、店員さんは何かを察したような表情を浮かべていた。
えっと……
どういうこと?
「お二人はカップルだったんですね?それなら話が早いです。すぐにダブルベッド付きの個室をご用意いたします。今ならカップル割引もありますよ」
すると、店員さんは少し言いづらそうに口ごもった。
「でも……あの……個室には防音処理が施されていますが、あまり、その……不適切な行為はなさらないようお願いいたしますね……」
カップルじゃないと、ダブルベッド付きの個室には泊まれないの?
それに、どうしてわざわざ「不適切な行為はするな」なんて言われたの?
まさか……
三号が怪我していることに気づいた!?
「いやいやいや……ちょっと待ってくれ。俺たちはカップルじゃない。普通の個室と、シングルベッド付きの個室を一部屋ずつ頼む」
「も……申し訳ございません。たった今、最後の通常個室にもオンライン予約が入ってしまいまして……」
三号は画面を操作しようとする店員さんを遮り、慌てて先ほどの組み合わせに戻してほしいと頼んだ。
けれど、店員さんはもう一度、彼の期待を打ち砕いた。
……ちょっと、店員さん?
どうして、こっそり私に親指を立ててるの?
はぁ……
まあ、いい。
「ダブルベッド付きの個室でいいです。それと、私たちはカップルです」
休むための部屋を選ぶだけなのに、こんなにぐずぐずする必要なんてないでしょ?
「ふふ……彼氏さんは恥ずかしがり屋なんですね。ご利用時間はいかがなさいますか?」
「明日の朝九時まででお願いします」
「やっぱりお泊まりのご予定だったんですね……!かしこまりました。すぐにご用意いたします!」
ようやく最上級の個室に泊まれることになった。
ちなみに、割引後のカップル料金は、シングル用の個室を二部屋借りるのと大して変わらなかった。
今日はひとまず、ここで一晩過ごそう。
「おい。いくらなんでも、これはまずくないか?」
「あなたが私の身体を狙ってたから、一緒の部屋に泊まるのは危険だって言いたいの?」
「わぁ……!」
店員さんはそれを聞くと、驚いたような視線を三号へ向けた。そのせいで、彼はひどく居心地が悪そうにしていた。
「……なんだか、お前が気にしてることは、俺が言いたかったことと少しずれてないか?」
ん?
私を暗殺しようとした相手と同じ部屋に泊まることに、不安はないのかと聞いたんじゃないの?
「どういう意味……?今さら、私がそんな些細なことを気にするとでも思ってるの?」
「はぁ……もう、お前の好きにしろ。同じ部屋にいたほうが、何かと都合もいいしな……」
店員さんの熱い視線を浴びながら、私は差し出された鍵を受け取り、三号を連れて個室へ向かった。
こうして私は、ついさっきまで自分を殺そうとしていた異星人と、同じベッドで一夜を過ごすことになった。




