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リプレイサブル・ライフ  作者: YeetedSushi
01-暗殺がもたらした出会い
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第3話 反逆同盟

「おやおや?今のは聞き間違いじゃないよな?三号、お前、俺たちの標的を見逃すつもりか?」


「四十六号、俺たちの【コピー】が標的の人生を引き継ぐ。彼女の記憶サンプルは、もう本艦へ送った」


「俺の質問にまだ答えてないよな。お前は標的を見逃すつもりなのか?」


「……」


四十六号――髪をオールバックにしたベックは、光学迷彩装置を解除すると、サプレッサーを装着した拳銃を抜き、俺に向けた。


ベックは、戦闘科時代の同級生だった。


あいつは幾度となくオルレイアに想いを伝え、そのたびに拒絶されてきた。その挙げ句、彼女の幼馴染である俺に矛先を向けるようになった。


だが、オルレイアがあいつを嫌う本当の理由は、初めから俺ではなかった。


……


まあ、俺にも多少は原因があったのかもしれない。


とにかく、最大の理由は、こいつが虐待と殺人を正当な名目のもとで楽しむためだけに戦闘科を選び、その後【プロキシ】になった人間のクズだからだ。


俺たち【プロキシ】と【アドミニストレーター】の間では、ほとんど誰もがあいつの「武勇伝(殺人歴)」を耳にしたことがある。


最悪だ。


よりによって、さっきの俺の言葉をこんな人間のクズに聞かれるなんて……


「標的本人があの人生を続けるつもりがないなら、好きなように生きさせても問題ないだろ?」


「問題ならある……それも大ありだ。こいつが今日のことを何もかも言いふらさないという保証が、どこにある?」


四十六号は蔑むような笑い声を漏らした。


やがて獲物を見定めるような目つきに変わり、俺の背後で身動きもできずにいる浅野紗夜を睨みつけると、舌なめずりした。


こいつ、もう彼女をどう「料理」するか考えているのか……


悪趣味なやつだ。


「俺が見張る。絶対に口外させない」


「どうやら、我らが三号は任務を放棄したらしいな」


「……!」


パンッ――!


やつが引き金を引くと同時に、俺は身を横に逸らして銃弾をかわし、そのまま体勢を低くして一気にやつの懐へ飛び込むと、回し蹴りでその手から拳銃を弾き飛ばした。


浅野紗夜も運がよかった。


外れた弾丸は彼女の耳元から数センチも離れていないところを通り過ぎ、壁に小さな穴を開けた。


「さすがは三号。素晴らしい反射神経だねぇ~♪」


「こっちへ来い。俺の後ろにいろ」


「……?おやおや?任務を放棄しただけじゃなく、標的を守るつもりか?おいおいおい?人殺しさん、立場が逆じゃないか?」


俺が浅野紗夜を背後に庇うのを見ると、四十六号はさらに楽しそうに笑った。


そして、腰に差したナイフを抜き、手の中で弄び始めた。


俺と白兵戦をやるつもりか?


……


俺とあいつの体格はそう変わらない。大きな差はないはずだ。


いいだろう。


なら、望みどおり相手をしてやる。


「せいぜい必死に足掻いてくれよ?」


「……!」


キィン――!


二本のナイフが激しくぶつかり合った。


互いに力を込めて押し合う中、刃が擦れ合い、火花を散らした。


「お前、誰かを庇いながら戦うのは苦手だろ?ほら、隙だらけじゃないか」


やつはもう一本のナイフを抜き、浅野紗夜の眉間めがけて投げつけた。


俺はナイフを振るう暇もなく、左腕を彼女の前へ差し出して防ぐしかなかった。


ザクッ。


「ちっ!卑怯者め!」


「戦いとは本来、殺すか殺されるかだ。どこが卑怯なんだ?」


反応がほんの一瞬でも遅れていたら、彼女は今頃死んでいたかもしれない。


俺は左腕に突き刺さっていたナイフを引き抜くなり、四十六号へ投げ返した。


「あなた……その腕……」


「平気だ。左手が使えなくなっただけで、大した問題じゃない!ふんっ……!」


俺は四十六号のナイフを力任せに押しのけると、その勢いと体重を利用して、やつを地面に押し倒した。


「お前は先に逃げろ!こいつを片づけたら、すぐ追いつく!」


戦いながら浅野紗夜まで庇うのは、俺には難しすぎた。


仕方なく、彼女を先に逃がしてから、四十六号を片づけることにした。


「わ……分かった……」


浅野紗夜が言われたとおりに走り去ったのを確認すると、俺は四十六号の顔めがけて、重い拳を何度も振り下ろした。


だが、やつはすぐに頭を両腕で守り、俺の拳をすべて防いだ。


「形勢逆転だよぉ?」


「なっ……!?」


やつの両脚が突然、蛇のように俺の腰に絡みついた。


そのままやつが勢いよく身体をひねると、俺はバランスを崩して倒れ込んだ。


次の瞬間、今度はやつが俺の上に馬乗りになった。


「これでもう逃げられない。どうする?早く何か考えないと、俺に殺されちゃうぞぉ?」


一発、二発。


左腕が使えない以上、右腕だけですべての攻撃を防ぎきることはできない……


「お前を倒したあと、あの女はじっくり楽しませてもらう(いたぶらせてもらう)。ふふふ、楽しみだなぁ」


「お前をあいつに追いつかせはしない」


やつが決して実現しない妄想に酔いしれている隙に、俺は攻撃の切れ目を狙い、地面の砂をつかんでその顔へ浴びせると、下半身に力を込めた。


「ごほっ、ごほっ!まだ反撃する力が残っていたのか……?いっそ、ここで殺してしまおうか」


ベックは普段から、自分の身なりや容姿にはかなり気を遣っている。


顔中に砂を浴びせられた途端、やつは怒りで我を忘れた。


だが、俺とやつの体格はほとんど変わらないはずなのに、どうして振り落とせない!?


やつが傍らに落ちていたナイフを拾い上げ、俺に突き刺そうとした、その時……


「はああああ!!!」


ガァン――!


「このクソ女――」


浅野紗夜が錆びついた鉄パイプを手にして戻ってきて、四十六号の後頭部を正確に殴りつけた。


ドサッ。


四十六号は声を上げる間もなく、その場に崩れ落ちた。


「はぁ……はぁ……どうして戻ってきたんだ!?ここは危険だぞ!」


「いいい……いくらなんでも、あなたを置いていけるわけないでしょ!このままじゃ、あなたが死んじゃうでしょ?手、出して。起こすから」


「ごほっ、ごほっ。情けないな。まさか逆に標的から命を救われるとは……」


彼女は力を込めて俺を引き起こすと、傍らの壁にもたれさせ、息を整える時間をくれた。


「……素直にありがとうって言うのが、そんなに難しい?それとも、わざと私と喧嘩したいの?」


「おいおい、俺はお前を何度も助けただろ?素直に礼を言うべきなのは、お前のほうじゃないか?」


「うっ……」


彼女は何か言い返そうとしたが、俺の左腕に刻まれた痛々しい傷を目にすると、その言葉を飲み込んだ。


「ごめん……」


「えっ?」


次の瞬間、彼女は突然泣き出した。


まずい、言いすぎた。


こんな意味のないことで、彼女と言い争うんじゃなかった……


「ああ……もう、俺たちはお互いを助けたんだ。これでおあいこってことにしないか?な?頼むから、泣かないでくれ。これ以上泣かれると、俺まで慌ててしまう……」


「うん……」


俺が手を伸ばして彼女の頭に置き、そっと撫でると、彼女は一瞬、目を大きく見開いた。


だが、抵抗することはなく、ただ静かに俯いていた。


ふぅ……


女の子が泣いた時は、頭を撫でて慰めればいいと、オルレイアが言っていた。


この点に関しては、どうやらあいつの言っていたことも間違っていなかったらしい。


「その腕、痛む?近くに病院がある。そこへ連れていって、治療してもらおう」


「待て。お前、俺が何者なのか、さっき何が起きたのか忘れたのか?医者にどうして怪我をしたのか聞かれたら、なんて答えるつもりだ?」


「でも……!傷口から血が出たままにはできないでしょ!」


「簡単に包帯を巻くだけでいい。俺は平気だ。本当に」


はぁ……


初任務に出る前、オルレイアが無理やり持たせてきた簡易救急セットが、まさかこんな時に役立つとは……


「私が包帯を巻く!」


浅野紗夜は、俺が次元袋から救急セットを取り出すと、すぐにそれを奪い取った。


俺の隣に膝をつき、慣れた手つきで傷の手当てを始めた。


まず、どの瓶が消毒液なのかを俺に確認すると、今度はガーゼを取り出して、俺の腕を包んでいった。


「意外と手先が器用なんだな」


「……応急手当の知識を少し身につけている。お父さんとお母さんが、いざという時に役立つからって、習わせた」


「マジか?本当に何でもできるんだな、お前」


「ほら、少し静かにして。傷の手当ての邪魔になる」


彼女は俺の額を指で弾くと、再び俯いて手当てを続けた。


いや、それにしても、結構力が入っていたぞ。


「これでいい」


包帯の端を結んで固定すると、彼女はようやく安堵の息をついた。


「ふぅ……しばらく、この腕は使えそうにないな。でも、ひとまず血は止まったし……その……ありがとう」


「うん」


彼女は静かに傍らへ退くと、手当てを終えたばかりの俺の腕を心配そうに見つめていた。


……?


いや。


お前、行かないのか?


「もういい。待ってないで行け。こいつはさっきまで通信をつないだままだった。今のやり取りは全部、本艦にいる【アドミニストレーター】に聞かれていたはずだ。早く安全な場所を探して隠れろ。じきに、ほかの【プロキシ】も追ってくるはずだ」


「……あなたはどうするの?さっき、あの変態も言ってた。暗殺対象を見逃すのは駄目なんでしょ?」


「平気だ。実は、逃げるのは結構得意なんだ」


「何が平気なの?怪我をしてるのに、どうやって逃げるつもり?その間は、私があなたの面倒を見る」


「どうして俺が面倒を見られる側になってるんだ!?」


俺が断ろうとしても、彼女は一歩も引かず、じっと俺を睨み続けた。


仕方ない。


どうせこれから、俺たちは二人とも追われる身になる。今となっては、一蓮托生も同然だ。


彼女とは一緒に行動したほうがいいだろう。


今日見逃した標的が、翌日になって結局殺されるなんて御免だ。


「はぁ……分かった。でも、面倒を見るといっても、まさか俺がお前と一緒に家までついていくわけにはいかないだろ?両親に怪しまれるに決まってる」


「家に帰るって、何のこと?」


「ん?」


そうだ!


今になって思い出した。【コピー】が彼女に成り代わり、その身分を利用して生きていくんだった。


彼女はもう、自分の家には帰れない……


「何、その顔?私はもともと帰るつもりなんてない。これからは……そうね。適当なネットカフェを探して、ひとまず今夜はそこで過ごそう」


「ネットカフェ?」


「少しお金を払えば、一時的に休める場所。食べ物も飲み物もあって、個室には扉も付いてる。それに、どうしてそこにいるのか、いちいち聞かれることもない」


確かに……


そういう場所のほうが、むしろ身を隠すには向いている。


だが、問題は……


「俺はこの星のお金なんて持ってないぞ?」


「誰があなたに払えって言ったの?お金のことは、私が何とかする」


彼女は財布から一枚のカードを取り出し、無表情のまま俺の目の前でひらひらと振ってみせた。


……


なんだか、妙な感じがする。


もしかして、傍から見れば、俺は年下の美少女に養ってもらっているヒモ男にしか見えないんじゃないか?


「ほら、行くよ」


「待て。せめて、こいつの装備を回収してから行くぞ。こっちへ来い」


俺は彼女を呼び止めて手招きすると、二人で気を失っている四十六号のそばへ向かい、やつが身につけている使えそうな装備を片っ端から回収し始めた。


「これ、持ってろ」


「これは何?」


「光学迷彩装置だ。予備のバッテリーも二つある。バッテリーを使い切って交換すれば、取り外したバッテリーは周囲の熱を自動で集め、電力に変換する。だいたい一日で満充電になる」


「こ……これ、永久機関じゃないの……?」


永久機関?


俺たちにとっては、どこにでもあるものなんだが。


そんなに恐る恐る両手で持たなくても……


俺は信じられないといった顔をしている浅野紗夜を気にせず、使えそうな装備を彼女の手に押しつけると、そのままほかの役立ちそうな物を回収していった。


拳銃……


うん、やっぱり持っていこう。


幸い、【プロキシ】の出撃用装備には、軍用の次元袋も用意されていた。


これらをすべて中へ入れておけば、持ち歩く時も邪魔にならない。


「よし、行くぞ。これから物を収納する時は、この『四十六号』と書かれた次元袋を使え」


「こんなにたくさんの異星技術で作られた道具を手に入れるなんて……」


「先に言っておくが……浅野紗夜、絶対になくすなよ?一つでも紛失したら、この世界の技術体系がめちゃくちゃになるからな」


「わ……分かった。それと、紗夜って呼んで。女の子をフルネームで呼び捨てにするなんて、失礼でしょ」


「はいはい、紗夜さん」


「紗夜でいい」


「はぁ……分かったよ」


立ち去る前に、ついでに四十六号の帰還プログラムも起動しておこう。


どうせ俺は、今日で殺しの仕事から足を洗うつもりだ。


それに、こうしたほうが、本艦にいるほかの連中にとっても都合がいい……


運がよかったな、四十六号。


さっきまで俺を殺そうとしていたとはいえ、こっちもやつの装備を大半奪ったことだし、これでおあいこだろう。


俺と浅野……


いや、紗夜と同じように。

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